14話【さあエルフだ精霊だ、長耳だ!!!】
春の2月目、10の日。
現在、午後1時30分。
「<風精は咎人に怒りを叩き付ける>」
「ガッ、ガァァァァァァァ!!!!!」
俺、リョーガは吹っ飛んでいた。
何故こうなったのか、ログを辿ってみよう。
午前8時55分。
「皆揃ったみたいだな。一人多いけど」
「ふん」
エルフを仲間に引き入れるため、交渉に向かおうとする俺達。
俺が予定したメンバーは、
俺、刃、ロッティ(ティー)、ゴゥアフトメンバー3人。
計5人なのだが、
「何故シンシアがいるんだ?」
「私も連れていけ。ああ、セリア様の許可は取ってある」
「だからってなぁ」
「それに、私を連れていけばフェイクライナの後ろ楯がしっかりしていると見せれるし、何よりこの国の人物が必要だろう」
「はぁー、シンシアには砦防衛に居て欲しかったんだが。……まぁ良いか。確かにシンシアが居てくれる方がスカウト成功率が高くなるはずだ」
「よーし、リョーガ、準備は全員完了。行けるぜー」
「そうか、んじゃ出発しよう。シンシア、俺の指示に従ってくれよ?」
「正当性を感じられたらな」
いきなりパーティーが増え、6人パーティーになった。
――――――
「それではお気をつけて、近衛長も頑張ってください」
「私がやるわけではないがな。まぁ頑張ってくるよ」
門兵の見送りを背に、俺達は歩き出す。
風魔法で、移動速度は上がってるけどね。
隊列は、先導ゴゥアフトメンバー3人、直後に俺、シンシア。後ろに刃とティーがつく。
野良モンスターを蹴散らせながらスイスイ進む。
この辺のモンスターは、1発で倒せるから楽だ。
午後0時20分
「そろそろ休憩と昼食にしよう」
「3時間位歩いたけど、後どのくらいー?」
「このペースなら、後30分もあればつくと思います」
答えたのはゴゥアフトメンバーの一人、フェリシアだったか。
元々フェイクライナ人らしく、この辺の地理は詳しいそうだ。
そもそも、此処等一体のゴゥアフトメンバーのうち、半分はフェイクライナ人らしいがな。
丁度良さげな木陰で、軽く昼食を取る。
「フェリシア、それでエルフについての情報とかは無いか?何でも構わない」
「ええと、確かエルフの一族の中で特異的らしく、自分から里を飛び出して、一人で住んでいるとか」
「ほう、ありがちだな。特異的ってのはまた良い感じだ。どんな風に特異かはわかる?」
「能力、魔法に関するものかと。スミマセン情報不足で」
「ああ、いいいい、頭なんか下げるな。結構良い情報だったしな」
このフェリシアという女の子、真面目系みたいだな。
俺とどっこいくらいかな?地味目だけど。
この娘も風魔法が使えるらしく、移動速度を上げてくれている。
といっても、あまり強くは無いそうだが。
「後、人間嫌いとも。前に私達がコンタクトを取ろうとしたときに相当拒絶されたとか」
「そいつも、ありがちだねぇ」
「リョーガ、策か何かはー?」
「幾つかあるが、直に合ってみねぇとな」
女の子のエルフとは聞いたが、どんな娘かねー。
楽しみだ。リアルエルフっ娘。
休憩を終え、再び歩き出す。
――――――
「ここか、エルフの住んでいる家は」
「植物が固まって家になってんのかなー。三階建てくらいあんぞこれ。すげーでかいな」
「とりあえず、訪ねてみよう」
扉?に近付いていく。
そして、ノック。
コンコンコン。
「えーと、フェイクライナの砦から来た者ですが。話がしたいのですが。今ご在宅でしょうか?」
「敬語キモいなー」
五月蝿い黙れ。此方も慣れなくてきついんだ。
返事がないので再度ノック。
コンコンコン。
「えっと、居ないのでしょうか?………しゃーない。出直すか」
「いや、待て。扉?が開くぞー」
「えっ?ホントだ!」
開いていくドア、中から出てきたのは、
(超絶美少女!!!ピンっと長い耳が幻想的で良いですね!薄い金色のショートヘアがとってもキュートです!!!結論、最っ高だねこりゃ)
「突然来訪してすまなかった。俺は
「<風精は咎人に怒りを叩き付ける>」
ガッ、ガァァァァァァァ!!!!!」
今ココ
――――――
「グッ、ハッ、いきなり、何しやがる!」
「人間はキライ。話したくもない」
「そうか、だが俺はビジター、人間どうかはわかんねぇぜ?」
「関係ない。人間っぽいし」
「ちょっ、話位聞いてくれてもi」
「興味ない。話をしたいなら……」
「したいなら?」
「ワタシまで辿りついたら話しても良い。無理だろうけど」
「何!?」
サッサッ、っと家の中に戻っていく。
「大丈夫かー、リョーガ」
「あっ、ああ。一体これは、どういうことだ?」
「いやいや、リョーガの方が詳しいだろって」
「そうだな、少し考えてみる」
まさかいきなり攻撃されるとは。
こんなに人間嫌いとはね。
そして、【辿りついたら】
つまり、
「この家は、罠屋敷ってわけか」
「潜り抜けてゴールについたらクリアってことか。結構シンプルだなー」
「なぁ、二人で話を進めないでくれ。説明が欲しい」
「アタシも。ジン、リョーガさん、どういうことなんだ?サッパリだよ。いきなり攻撃してきたり」
「あー、かくかくしかじか、まぁ無理だよねぇ。つっても俺も分かってるわけじゃ無いが、説明するか」
「こいつは俺の厨二データベースによる推測補完なんだが、多分、試してるんじゃないかな」
「試す?」
シンシアが聞いてくる。
つーか刃、てめー我関せずってか。
俺の方が適任だからって役割丸投げしやがって。
「ああ、人間が嫌いって話だが、多分違えな。ありゃー嫌いじゃなくて、信じてない眼だ。人間だとか関係無くな。だったら手はある」
「え、あるのか?どういうことだリョーガ。信じてないなら無理ではないのか?」
「性急過ぎだシンシア。あのエルフっ娘、信じてないが、信じたいんだろーよ」
「?えと、意味が」
「あの眼は、まだ誰かをもう一度信じたい眼だよ。俺が無傷なのが証拠だ」
「………無傷!?そういえばあれだけ吹っ飛んだのに、なんで怪我も何もしてないんだ?」
「風のクッションがあったし、ただ吹っ飛ばされただけだ。体力は大分持ってかれたが、支障は全くねぇ。要はあのエルフっ娘はツンデレなのさ」
「うーん?また分からなくなった。それで、あのエルフを仲間に引き入れる策はあるのか?」
「ああ、大丈夫だ。だからもう一度情報を入れよう」
「エルフってのは、魔法・源子操作は精霊使役が基本だったな?」
「はい、先程のは風の精霊でしょう」
フェリシアが答えてくれる。
そう、精霊、万物に宿るものらしい。
精霊を使役する種族だから精霊族。
なんか違う変な気がすんな。
まぁ、超高密度の精霊体がエルフだからそれで良いそうだが。
人間の魔法との違いは、
シンシアの風魔法は、【風を集めて武器に付与する】
つまり、風そのものに干渉する。
エルフ達なら、【風の精霊を使役し、精霊を武器に宿らせる】
という違いが生まれる。
これは一概にどちらが良いとは言えないらしい。
一長一短があるということだ。
しかも、ありがちなことに、エルフは源子への干渉力が他の種族より飛び抜けて良いらしい。
身体能力は低め、でも魔法は超強いという解釈で良いだろう。
一般的なエルフ一人の魔法は、
一般的な人間(戦闘訓練あり)の十人に匹敵するとか。
全く、理不尽だなぁおい。
「そしてあのエルフ、名前はなんだっけか?」
「未確認ですね。名前までは調べられませんでしたが、【ヴェル】という愛称があるらしいです」
「名前は仲間に引き入れてからかな。そのヴェルの魔法⚫能力」「精霊使役魔法以外は……、スミマセン。ただ、知力や感覚は相当なものらしく、罠等は無効果するとか」
「なら、真正面から行くか。よし、こんくらいで良いかな」
「さてと、エルフっ娘は、辿り着けたらと言っていた。なのでこの家、いやダンジョンに突入する」
「ん?何故ダンジョンと称するのだ、アホか」
「判ってないなシンシア、罠もあれば使役された下等精霊がいる。
これはもうダンジョンと呼んで差し支えないだろう」
「では、皆で行きましょうかリョーガさん」
「いや、行くのは俺とジンだけだ」
「「なんで!?」」
「うるせぇ。多分なんだが、あのエルフっ娘、ビジターである俺とジンに対しての眼が違ったんだ。だから二人でいく。それに、二人の方が身軽で良い」
「私達は足手まといと言いたいのか…!」
「アタシはそんな弱く無いです!」
「ちげーっての。あのな?ここに待機するメンバーが必要なんだよ。他の3人はサポート系、つまり、お前ら二人が居なきゃ待機もままならん。一応、この家は襲わないみたいだが、万が一もあるからな。用心に越したことはねぇ」
「「…………」」
「無茶苦茶不満そうだな。まぁ良い。さてと、ジン行くぞ」
「りょーかいー」
「んじゃ、待っててくれな」
「えっ、ちょっ、早くないか!?」
「ジッ、ジン!?」
有無を言わさず、さっさとダンジョン(仮)に入る。
「おいリョーガ」
「なんだよ」
「嘘ついた?」
「嘘は、ついてねーよ。嘘つくの嫌だし」
「そっかー。つまり、真実も告げてねぇのかー」
「あっ、判っちゃう?」
「親友なめんなよー?」
そう、俺はきちんと話して居ない。
理由は簡単だ。
「説明めんどくせーし。俺、説明下手だし」
「見も蓋もねー」
ハッハッハと笑い会う俺達。
「さて、さっさと攻略するか。後ろは任せたぜ?親友!」
「おう、攻略は任せたぜ?親友!!!」
うってかわって、真剣な口調で話す。
厨二的な真剣さだがな。
さぁ、異世界初のダンジョンを攻略を始めよう。
最奥には美少女エルフが待ってるぜ!
だが次回へ続く!
――――――
「キミは信じて良いの?確かめさせて、キミの心を」