第1章プロローグ 1話【物語の始まり?】
その世界はフィクションだ。
あらゆる全てがフィクションである。
何もかもがフィクションだから、
何もかもが本物だ。
だから、この世界には夢が溢れている。
この世界はつまらない。
それが16年生きた俺の結論だ。
俺は新藤リョウガ、高校を1年過ごし、暇な春休みを謳歌している高校生2年生未満の、普通じゃない人間だ。
つまり、厨二病だ。
俺は自覚してるから大丈夫。邪気眼発動している奴等とは、俺は違うのだ。
どうも俺は人とズレている。
そもそも、親からおかしい。
うちの親は色々と仕事してるらしいが、息子の俺にも教えてくれねぇ。妹も知らないと言ってたし。
その割には、やけに教育熱心だ。
学校の勉強と関係無いことばっかだがな。
武術やらせようとするし、帝王学だとか言って、変なこと教えてくるし。
ホント、うちの親はなにしたいんだか。
でも教えてくれることは的確で、大抵のことが出来るようになった。そしたらなんだか世界が簡単に見えてきた。
それがつまらないってわけ。
そして、俺は厨二化した。
アニメやラノベ、マンガの登場人物は、世界は凄いからね。
憧れる。その虚構の世界は、とても輝いていたからな。
そんで、今日は、いや今日も暇なので、親友(笑)と一緒にゲーセンに行こうとしてた。
そう、してた
そして今、俺は深い森のなかに居る。
飛びすぎだって?俺だってわからん。
ゲーセンに行く近道で、裏通りを通ってたら、
いきなり目の前が光で埋め尽くされた。
目の前でフラッシュグレネードが爆発したかと思ったね。
食らったことないけど。
そんで気絶したんだと思う。
気づいたら森の中。
やっぱこれ、あれだよね。あれだな。あれしかないよね。
「異世界に飛ばされたぁぁぁぁーーーー!!!」
何故、冒頭に関わらず、自分のことを誰かに独白してたかというと、異世界に飛ばされたらそうすべきだと思ったからだ。
うん、混乱してるね俺。
なにここ、マジで。
確かに、憧れてたよ?
でもいきなりこれは無いわー。
つーか一緒に居たバカはどうしたんだろ?
まぁ良いや。とりあえず俺のことが最優先だ。
そんなこんな考えてたら、
「!?」
何かの物音。生物かな。
森の奥、俺から見て、後ろか。
異世界でのファーストコンタクトか。
なんだろうか、やっぱり女の子かな。美少女かな、美少女だと良いなぁ。美少女でお願い致します。
「おお?こんなところに人間が居るぞ。丁度良い。腹減ってたところだ」
「良いねぇ、俺脚な、焼くと旨そうだ。」
表れたのは、二足歩行するオオカミ男さん。
何故か人型ですね。サーベル持ってますし。
なんか日本語使いやがったよ、この獣ふぜいが。
つ、ま、り、
(魔物ぉぉぉぉ!!??)
どうする、異世界に来たばかりのレベル1以下だぞ。
何もわかんねぇ。
つーか、殺される?いや、喰われんのか。大差ねーな。
どうする、どうする!
(しゃーねぇ、とにかく)
「先手取って殴る!」
先に喋ったオオカミ男Aに狙いを定めて、
ドォォン!
ドスン!!!
「グガァァァア!!!」
(なっ、なんだ今の)
走り出す瞬間、脚に凄い力が入った。
軽くクレーター出来てるし。
右パンチも、なんかスゲー強かった。
なんだこれ、でもとりあえず。
「これなら、戦える!」
「へっ?ええ?ちょっ、おい!てめえなにしやがっ、グガァァァア!!!」
無視してグーパンチ。
やっぱりスゲー威力だ。
武術やってるとはいえ、この威力は説明できねぇ。
まさか、これって。
(異世界に来たことによるパワーアップか!!!)
そんなこと考えられるくらい、俺はバカだった。
つーか、オオカミ男さんたち。
どうなったんだ?
「って、ええ!?消えたー!?」
それはもう【スゥー】っと消えた。
まるでゲームで倒したときみたく。
どうなってんだこりゃあ。
さっぱりわかんね。
とにかく、誰か、まともな人間とコンタクトを、
「キャアァァァァ!!!!!」
「!!!」
遠くで女の子の悲鳴が上がる。
そうだよ、こう来なくっちゃ。
やっぱり事件に巻き込まれないと、物語じゃない。
さて、どこにいるかな。
(待ってろよぉぉぉ!美少女達ぃぃぃ!!!)
バカ丸出しな心の叫び。
良いじゃないか。夢見るくらいさ。
こうして、俺の、異世界での物語が始まった。
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〔これでまた一人、この世界に駒が増えた〕
何処かで、誰かが呟く。
いや、その表現は正しくないだろう。
〔さて、彼はどんな真実を見付けられるかな〕
それは、空気を介して伝わっていない。
そもそも、声帯を振るわせたのだろうか。
ただ、それは音として、辺りに広がっていく。
〔この、虚構だらけの世界で〕
誰かは笑う。口元に微笑を携えて。
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『ニュースです。またしても失踪者が出ました。今回の失踪者は二名。シントウリョウガ君16歳と、イクサジン君16歳です。二人はゲームセンターに行くと言って家を出ていき、連絡が途絶えました。これで、青少年の失踪者数は、10名となりました。当局は情報をお待ちしております。………次のニュースです』