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文才無くても小説を書くスレ参加作品

遠ざかって近づいて

 文才なくても小説を書くスレで、お題を貰って書きました。 お題:波の音

 まだ帰宅まで一時間も時間がかかるのを勿体無く思っていた矢先のことだった。

 疲れを誤魔化しつつ海辺の国道沿いで車を走らせていると耳に入る音があった。

 微かなトランペットの音だ。

 どこかで聞いたような曲に、思わずウィンドウを少し下げていた。

 すぐに夕日の熱に燻った様な蒸し暑さと、潮騒交じりの曲が車内に飛び込んできた。

 少し聞くだけで、アップテンポな曲を好んでいた俺の思い出の曲とは違うと分かった。

 違う曲なのになぜと違和感を覚えつつも、そのとても穏やかで長く緩やかな曲に、自分でも珍しく聴き入ってしまっていた。

 学生が制服姿で吹いていた。夕日の溶ける、海に向かって吹いていた。

 視界に入った次の瞬間にはそれを追い抜いていて、トランペットの音は更に低く長く緩やかなものとなって小さく小さくなり始めた。

「悠然にも度が過ぎるだろ」

 呟きは、奇しくもかつての自分の口癖と同じもので、自分で言っておきながら自分で笑ってしまう。

 なるほど。

 あの少年が何をしたいのか分かった気がした。

 俺は、海に向かって吹くたびにそれを口癖にしていた。

 どこまでも静かに飲み込みそうな海に向かって、それをも飲み込んで空気を作ってやろうと意気込んでいた、無鉄砲だが嫌いじゃない自分の頃の思い出だ。

 あの少年のトランペットはむしろ逆で、どこまでも静かに深く海に同調して溶けていく。それは波の音そのものの曲だ。

「なるほど」

 懐かしいわけだ。

 挑み続けたときに飽きるほど聞いた、自然の曲そのものだったのだ。

 俺は笑いを堪え切れず、冷房を切ってウィンドウを全部開けた。

 久方ぶりに聞く波の音に耳を傾けながら、帰宅まで残り一時間しかない事を勿体無く思った。





 自分の胸の内にある限り、青春とはいい思い出のことと規定していいだろう。

 ただしそれが外にでた場合には、青春は黒歴史と呼ばれる。


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438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/27(火) 08:06:46.51 ID:ZfDiPeTu0

お題くで~

439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/08/27(火) 10:31:55.49 ID:OkiJqKBGo

>>438

波の音

442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/27(火) 12:05:34.30 ID:ZfDiPeTu0

>>439

ありがとさん


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