第6話 美しい港町
先ほどの砂浜のすぐ近くにある港町…コスモスと言う名前のその町の中心をあかねは歩いていた。
「わーきれいですね~」
港町と言うだけあって、市場ではたくさんの種類のものが売られていた。
「おっそこの姉ちゃん! この魚かって行くかい? 安くしておくよ!」
「別に~私、お魚はあまり好きではないので~」
そんなことを言いながらあかねは、コスモスの町を歩いていた。
そもそもは、情報収集も目的なのだが、いつの間にか観光気分で、町を見ていた。
いつしかあかねは、スズラン港の端の方に来ていた。
そこからは、往来するたくさんの船を望むことができ、多くの貨物と人間が行き来しているのがよく見えた。
「やっぱり港はいいですね~」
「おうよ! ここからの眺めが一番おすすめだ!」
あかねが往来する船を眺めていると、横にいた男性が彼女に声をかけた。
「えっと…どちら様ですか~?」
「俺は、そこでちょっとした店を構えているんだ! せっかくだから寄って行くかい?」
「そうですね~少し休ませてもらいましょうか~」
男性についていくと、港から少し離れたところにある雑貨屋に到着した。
そこからは、海がよく見え港を出港したのであろう船も見えた。
「どうだい? しばらく海でも眺めながらゆっくりしていくといい…ほしいものがあったら言ってくれ…大体の物はそろってるかな…。」
そう言い残して男性は、奥へと入って行った。
「海は広いですね~すべてを包み込んでくれます…。」
「そうか? 水が苦手な我としては、危険以外の何物にも見えないが…。」
あかねは、店主の了承を得て炎竜を召喚し、2人(?)で海を眺めていました。
あの後、店主にお礼を言ってあかねは、コスモスの町中へと戻ってきた。
相当長い間、海を眺めていたのか、町に戻るころには日が傾き、家々は赤い光に照らされていた。
「ちょっと遅くなっちゃいましたね~今から宿を探すのは、骨が折れそうです~」
《だったら、事前に探せばよかろう!》
「あらら~召喚してなくても会話が可能だったりするの?」
《そう言えば、言っていなかったな…テレパシーのようなものだと認識すればよい!》
さすがは、魔法があるような世界だとあかねは思っていた。
テレパシーで召喚獣が話しかけてくるなど、まさにファンタジーの世界である。
いまごろそんなことをしみじみと感じている彼女は、やはり、変人なのだろうか?
「まぁそれは、置いといてなぜ、このタイミングまで使わなかったんですか?」
《テレパシーはかなりの魔力を消費するからな…あまり多様できん…それに、主はテレパシーが使えぬゆえ、女の子が一人でしゃべりながら歩いているようにしか見えないという弱点もある…。》
「独り言については、気にしませんよ~まぁこのへんでやめておきましょうか~」
なぜ、魔力を大量消費するのにこんなどうでもいい理由でテレパシーを使ったのか? と言う疑問を残しつつもあかねは、コスモスの町に消えて行った。
「もうすっかり秋ですね…。」
あかねは、空を見上げながらそうつぶやきました。
あかねは、宿で一泊すると早々に西へ向けて出発することにしました。
《主よ…せっかくここまで来たのに、王国領へ戻るのか?》
「えぇ…牡丹がそっちにいる気がして…。」
《根拠は?》
「私の勘です。」
そう言って、あかねは西へ向けて歩き始めた。
大した根拠もないのに…などと思いつつも炎竜は、それ以上何かを言うと言う事はなく、おとなしくしていた。
コスモスの町の上空に浮かんだうろこ雲に見送られながら、あかねは西へ旅立った…
このころ、牡丹は旧国境を越えようとしており、あかねと牡丹の再会まであと少しと言った時であった…
ひだまりの国 外伝 あかねと炎竜 完
読んでいただきありがとうございました。
この話を持って「ひだまりの国 外伝 あかねと炎竜」は完結です。
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この話の本編にあたる「ひだまりの国」の方もよろしくお願いします。