第4話 あかねの過去
炎竜は、雲の上を飛んでいた…
街やら森なら何もかもがはるか下の方に見えるほどの高度を炎竜は飛んでいたのだ。
たとえるならば、飛行機に上に乗っている状態で身を乗り出して下の方を見ているいるようなものである。(危険なので絶対にやめてください)
「I can fly!」
「いや…飛んでいるのはわしなのだが…。」
「まぁまぁ気にしないで下さ~い。そんな気分に浸っているだけなのでぇ~」
炎竜は、特に答える気にもならなかったようでひたすら東へ向けて飛んでいた。
「それにしても、我が主よ…。」
「主いいですよ~我が主なんて長ったらしいじゃないですか~」
「(長いか?)わかった…。」
炎竜は、半分程度しか納得できなかったが、それを追及するのは無駄だとわかっていたので、今度からそう呼ぼうと決めた。
「そう言えば、気になっておったのだが、主は向こうの世界でどのようなことをしていたのだ?」
「あらら~そんなこと聞いちゃいます?」
「なにか癇に障るか?」
炎竜は、怪訝そうな顔している。
そんな様子を察したのか、あかねは竜の背中に体を預けるような体勢になってこう言った。
「別にそんなことはありませんよ~でも、私の過去なんて聞いたところで、つまりませんよ~体面ばかり気にして、実の妹たちにすら、まともに接することのできないダメな姉の話なんて~」
「そなたがか?」
「そうですよ~あ~それと、これから話すことは、過去を反省して生きて行こうという私の独り言なので気にしないでくださ~い」
そう言って、あかねは静かに語り始めた。
あれは、いつ頃だったでしょうか…
幼かった頃の私は、父に次期党首としての振る舞いについて厳しく教えられていました…
「次期党首として大事なものは、礼儀作法だ…これをいついかなる時も大事にせよ! それと、口調は丁寧なものにしろ!」
後に妹たちも似たようなことをさんざん言われるわけですが、私は長女だった上に三女のあけびはまだ、生まれていなくて、次女の牡丹も生まれたばかりだったこの当時は、私だけがそう言われているといった状態でした…
「はい…わかりましたお父様…。」
父は、年に数回しか帰ってこなかったのですが、いつ帰ってきても、言う事はいつも同じでした…
当時の私は、父の言っていることは正しいと思っていましたし、今も間違っているとは思っていません…
ですが、もう少し友達と遊びたかったというのが真意だったのだと思います…
「I like apple!」
「おっ! 英語を覚えたのか! よくやったぞ!」
牡丹やあけびはそうではなかったのですが、私にとっては、父がすべてでした…父に褒められたい…褒められることをすれば父はいつも帰ってきてくれる…
私がほめられたところで、父の仕事が減るわけじゃないので、今までの暮らしに変化は訪れませんが、そう信じて疑わない自分がいました。
「お姉ちゃん! じゃなかった…お姉様…今から散歩などご一緒にいかがでしょうか?」
「ダメです! 今からピアノのレッスンですから…それと、牡丹はもう少し口のきき方に気を配るべきです! こういう時も礼儀と言うものを…。」
「いいもん! 一人で行く!」
「牡丹! そんな走り方は…。」
妹である牡丹に対しても、この調子でいつの間にか私たちの距離は離れて行きました。
「これが、私が幼いころの話と言ったところでしょうか~」
「主よ…それは、すべて本当なのか?」
「そうですね~80%ぐらい本当ですよ~まぁこういうしゃべり方を意識しているのも、いろいろ意味があったりなかったりするのですけど、まぁそれは後日と言うことで~」
そう言いながら、あかねは体を前に倒して炎竜に抱きつくような体勢になった。
「…今度は失敗しないようにしますから、ちゃんと妹を探し出しましょうか~」
炎竜は、いろいろと気になる節があったがこれ以上深く聞くのもぶしつけだと考えて、そのまま黙っておくことにした。
向こうの方に青い海が見えてきた…
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