第3話 最終試験
あかねが魔法の修行を始めてからどれほどの日にちが経ったであろうか?
あかねは、炎竜を始めとする召喚獣を召喚することができる召喚魔術を使えるようになっていた。
「これらば、問題ないだろう…さて、我と契約を…。」
「わかっていますよ~教えられた手順通りでよろしいんですよね~」
「うむ…その前に最終試験だ…我を倒して見せよ!」
炎竜が勢いよく立ち上がった。
「なるほど~戦闘系から補助系までいろいろ教えてくれたのはそう言う意味でしたか~いいですよ~」
あかねは、そう言ってから一呼吸おいてこう言い放った。
「あなたと私…どっちが勝っても有意義なものになるわね…。」
「そうだな…では、行くぞ!」
「『水魔術 水城形成』」
炎竜が炎を吐いたのだが、あかねは水城を形成して身を守った。
「やるではないか…さすがわが弟子!」
「あらら~強気なこと言っちゃて~そのうちに主って呼ばせてみますよ~」
「面白い! ほれ、次の攻撃は譲ってやろうぞ!」
そう言って炎竜は攻撃の手を緩めた。
「それでは、遠慮なーく行っちゃいますよ~『草魔術 木の葉切り』
「ふん…このようなものわが炎の前では…。」
「わかってますよ~見たところ炎の息吹を始めとして、あなたの技は正面方向に向かう傾向が非常に強いようですから、後ろに回れば問題ナッシングと言う事ですよね~」
炎竜が木の葉切りを撃墜している間にあかねは炎竜の後ろに回り込んでいた。
この時、炎竜は自分の大きな失敗に気づいてしまったのだ…長らく一緒にいたにも関わらずあかねが単純な人物ではないと言う事を忘れていた…のんびりとした口調で一見何も考えていないように見えるが、ふたを開けてみれば、ものすごい度胸を持った優秀な戦略家にして優秀な武術家と言ったところであろうか…自らで作戦を立ててそれを一人で実行する…独りよがりとも入れるその行動が、あかねのスタイルであり、最大の持ち味でもあった。
「『水魔術 水冷球』」
「なっ!」
炎竜はよける間もなく冷水の塊の餌食となった。
「これだけやれれば修行も完ぺきと言う事であろう…よし! 契約を結ぼうぞ! 我が主よ!」
「えぇそうさせてもらいましょうか~」
いつの間にか正面に戻っていたあかねは炎竜に向き直り、召喚魔術の術式を描き始めた。
あれほど複雑な術式をよく暗記できたなと感心しながら炎竜はその様子を見守っていた。
「できました~それじゃあ炎竜さんさっさとやっちゃいましょうか~」
「そうだな…これから頼むぞ我が主…。」
「こちらこそよろしくお願いしま~す。そんじゃさっそくこの谷から飛び立ちましょうか~」
「わかった…。」
そう言うと、炎竜は背中に乗れと言わんばかりにその巨大な背中をあかねの方へ向けました。
「それじゃあ失礼しま~す」
「それで、まずはどっちに行く?」
「そうですね~北の海を目指してみましょうか~できれば、あの山脈も越えたいですね~」
あかねがそう言うと、炎竜は、うなづいてから旧国境となっている山へ向けて飛び立った。
飛び上がった炎竜はぐんぐんと上に向かって飛んで行き、気づけば先ほどまでいた竜の谷ははるか下の方に見えていた。
「うわ~すごい眺めです~」
「当然であろう! ところでどこの町に行くのだ?」
炎竜は、胸を張って自慢をしています。
あかねは、遠くの方を指差してこういいました。
「それじゃあ…先ほど言った通り、東の方の海岸沿いの町を希望しましょうか~」
「向こうだな…しっかりと捕まっておれ!」
炎竜は、そのまま東へ向かって山脈を越えて行き、旧国境をわずか5分で超え、炎竜は遥か東の空へと消えて行った。
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