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第1話 竜の谷

 旧王国領の一番端…危険だからとの理由で付近に住んでいる住民はおろか、冒険者さえ近寄らないメテオリーテス…別名竜の谷と言う名前の谷である。


「わーなんだか間違えて落ちちゃいそうです~」


 足場が少し崩れて、石が崖の下へ吸い込まれるように落ちて行った。

 そんな状況に何度も陥りながらも、この道を鼻歌交じりにのんびり歩いている少女は、北上(きたがみ)あかねである。

 なぜ、彼女がこのようなところを歩いているのかと言う理由は、つい30分ほど前にさかのぼる。






 竜の谷の入口…

 物々しい崖の前に「入るな」と書かれた立札が立っているのだが、特にこれと言って侵入者を阻む柵のようなものは見当たらない。

 その立札の前にあかねは立っていた。


「地元の方から聞きましたが、ここが竜の谷ですか~なんだかいかにもって感じですね~」


 3日ほど前、公園で友人たちと会っていたはずの彼女は見知らぬ森で目覚めた。

 何をしようかと歩き回っていたところ、この付近の住民に会って竜の谷の話を聞き、興味本位でやってきたのだ。


「それじゃあ冒険と行きますよ~せ~の!」

「お~」


 別に他の人がいるというわけではないのだが、なぜかみんなで何かやりそうな雰囲気を出しながら谷に足を踏み入れた。






 あかねが谷を歩き始めてから約1時間後…

 彼女は谷の一番奥の方までやってきていた。


「あれ~あの人はドラゴンさんがいるなんて言っていましたが、見つかりませんね~」


 あかねは、周りを見ますがドラゴンがいる様子は、ありません。


「帰りましょうか~」


 あかねが帰ろうとすると…


「汝…我の上に乗ってただで帰れると思っているのか?」


 突然、あかねの足元から声が聞こえてきた。

 そんな状況にもかかわらずあかねは、表情一つ変えることなくその場から立ち去ろうとする。


「汝…先ほど警告したはずだ…我の上に載ってただで帰れると思っているのか?」


 後ろからそんな声が聞こえるが、あかねは、おかまいなしで歩き始めた。


「汝…頼むから待って! いえ…待てと言っておるだろう!」

「あらら? 人にものを頼むときは言い方があるんじゃないの?」


 一旦足を止めたあかねであるが、そう言ってふたたび歩き始めた。


「えっ…その…汝…いや…そこのお方…その…できれば…いや待ってくださいお願いいたします!」


 先ほどまで威圧的な雰囲気を醸し出していた竜が、あかねの方を向いて頭を垂れた。

 すると、あかねは立ち止まり、竜の方を向き直った。


「それでよろしいんですよ~まったく…礼儀の一つでもできないんじゃお友達ができませんよ~」

「汝のようなものに言われとうない…して、汝…どのような用で来たのだ?」


 どうやらこの竜は、あかねに踏んづけられるまで寝ていたようで、その大きな体をゆっくりと起こした。

 どうやら竜は、あかねに踏まれたことは、もう気にしていないらしく、あかねの方を見ながらそう言った。


「そうですね~特にこれと言ってないですかね~でも、ご友人にぐらいはなってもいいですよ~」

「友人か…面白いことを言う…。」


 竜はそう言って不敵な笑みを見せますが、あかねは相変わらず表情を変えることなく竜を見ています。

 これまで、この谷に来た人は皆、竜を討伐するとか、竜の力を手に入れるとかそんな理由で来た人間ばかりだったためか、竜から見れば、この少女はとても興味深かった。


「気に入った…名前を名乗れ!」


 竜は、気分良く行ったのだが…


「先ほど言った通り、人にものを頼むときには言い方ってものがあるでしょ~?」


 あかねは、そんなことお構いなしにそんなことを言い始めた。


「う…うむわかった…我は炎竜…炎をつかさどる竜だ…かくして汝は何者で…ではなくて…どなた様でしょうか?」

「私ですか~私は、北上あかねと言います~どうぞよろしくお願いしますね~」

「あかねか…気が向いたらまた来るがよい!」


 そう言った瞬間、あかねににらまれた竜は、言い方を変えようとあたふたし始めた。


「まぁいいですよ~無理にやれとは言いませんから~それでは、私はこのへんで失礼しまーす!」


 あかねは、炎竜に背を向けて立ち去って行った。

 読んでいただきありがとうございます。


 本編にあたる「ひだまりの国」の方もよろしくお願いします。

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