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Night-mare  作者: せつ
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序章

 短い黒髪を掻き上げて、彼は学校の道のりをジャージ姿で歩いていく。お昼過ぎで陽はかなり高く上がっていても、気温はそれほど高くはならない。それは季節が冬だからだ。黒い瞳を空に投げかけて、悠真は目を細める。

 あれから一ヶ月。彼の頭の中には三人の人ではないが、人に限りなく近い姿をする者達が浮かび上がる。たった一日しか一緒にいなかったが、悠真の中では今までで一番存在感が強い者達だった。時に夢ではないかと思うこともある。しかし、彼がいなかった一年間はそれなしでは説明できず、彼も夢で終わらせたくはなかった。


「でも、いつあっちに行けるかわからないからなぁ」


 もう一度会いたいと心から思う。だが、あちらの世界に行く度に一年無意味に過ぎてしまうのは正直困る。何とかならないものかと思案するが、そもそも何故一年たっていたのかもわからないのに、そんな対処方など出てくるわけがない。

 道の端に設置されている街灯に視線を向けて悠真は目を細める。あの時見た街灯はあれから一度も見かけることはなく、自分の中に本当にあるのかわからない魔力というものも何も感じない。けれど、首にある契約の印があの時のことを証明してくれている。


「早く会いたいなぁ」




 体育館シューズに履き変えて悠真は中に入る。既に正式バスケ部は練習を始めていた。悠真の姿を認めると、全員が規則正しく挨拶をしてきた。彼も挨拶を返しながらその中から見知った顔を捜し出す。


「原松!調子はどうだ?」


「先輩!なかなかいいっすよ!」


 今では同級生となった原松芳季はそれでも敬語を直そうとはしない。同級生なので敬語は直してもらいたいのが彼の本音だが、結局誰もが悠真の存在を知ってしまっているため、直してもらうのは諦めた。

 軽くストレッチを済ませて悠真も練習に参加する。近々ある試合のためにバスケ部一同が頭を下たので練習のコーチをすることになったのだ。


「腰高い!ディフェンス突っ立てるな!ボール取られたらすぐに守りに行け!」


 コーチになったら下も上も関係なく強い口調で指導し始める。悠真は一旦全員の動きを止めて自らボールを手にする。ダム、ダムとリズム良くボールをついて、止めてみるように促した。


「行くぞ!」


 腰を低くして走り出す。一人、二人とボールを奪おうと手を延ばす者がいたが、反対側の手にボールを移して、クルリと身を翻して避ける。すぐさま目の前に三人目が現われたがそれも軽く流した。他の者とは違い、両手を広げて道を塞いできた芳季を前にした時、悠真は一瞬止まって見せる。左手にあるボールを右にドリブルした。左脚に力を入れた所を目敏(めざと)く芳季は見て、ボールと同じ方向に身体を動かす。


「なっ!」


 右に行くと思った悠真の動きはそのまま左に動き、見事に綺麗な動きで芳季を抜かした。残る一人はゴール下に構えていたが、にっと軽く笑ってゴール下まで行かず、曲線が描かれた手前でボールを放つ。


スパッ


「スリーポイント…………」


 茫然とボールがネットに通るのを眺めた。理想のフォームと言っても過言ではない形で彼はボールを放った。綺麗に入ったのが気持ちよかったのか悠真は思わずガッツポーズする。


「ガムシャラに突っ込んでくるだけじゃ無理なのはわかっただろ?一番動き良かったのは原松かな?相手の動きをよく見て、ボールを追って、相手の動きを読むことが重要だ。手を使え、足を使え、全身使え!いいな!」


「「「「「はい」」」」」


 悠真にみっちり指導されたバスケ部員は最後はもう立ち上がれないほど消衰しきっていた。片付けは進んで悠真がやり、ボールを体育館倉庫に運ぶ。ディフェンスはかなり使えるようになったから次はオフェンスだな、とぶつぶつ次の練習について考える。ふと、バドミントンのラケットの後ろ側に見慣れない古いボールがあることに気付いて、悠真は身を屈める。


「何だ?」


 ボールに穴みたいなものが見えて悠真はそれに手を延ばした。瞬間、ズンと何かに引っ張られる感覚に襲われて視界が真っ暗になる。




 そのまま彼の意識は途切れてしまった。





久しぶりに更新です。素人の私の話をどうか、広い心で見て下さい。

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