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Night-mare  作者: せつ
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第四章 始まりの場所

ここで一度おさらいをしておこう。

悠真が関わっている世界は三つ存在する。

一つは命、魂が共に存在する生の世界。

一つは人以外の死んでしまった存在が集う、正の世界、つまり天界。

一つは人以外の死んでしまった存在が集う、負の世界、つまり魔界。

そこにはそれぞれ門が存在し、彼の行き来する道を作っている。

地球には天界に繋がる門、魔界に繋がる門が。

天界には地球に繋がる門、魔界に繋がる門が。

魔界には地球に繋がる門、天界に繋がる門が。

それぞれに二つずつ門があり、それぞれの世界を繋げている。

門の特徴としては、地球と繋がっているものはどちらか一方が固定した場所に存在しないことだ。

地球にある門が固定されていない門であるのなら、それと一対にある天界の門はある特定の場所に固定されて存在する。

逆に地球にある門が固定されたものであるなら、それと一対にある魔界の門はそのつど場所を移動し、存在が掴めない。


今回の事件は、そんな世界を繋ぐ大事な門に異常が来たしていることだ。

世界を繋ぐ道と入り口が不安定となれば、本当なら来ることのない存在が他方の世界に自由に行き来してしまう。そうなればその世界の住人は大混乱になるだけでなく、世界の安定すら危うくなる。

そうなる前に、門の繋がりを断ち切ってしまおうと、前回に悠真が提案したのだ。




「そうですねぇ、確かにそれが一番ですけど」


「伯凰さんが何を思ってこんな異常を起こしたのか俺は知らないけど、このままこの状態にしておくことはできないよ。天界も、魔界も、地球もこのままにしておけば危ないんだ」


「だけど、どうやって探す?わかっているとは思うけどこの世界の門は特定の場所に落ち着いて存在しないんだ。こんな魔力が充満した状態で探すのは至難の業だぞ」


 これには悠真も黙ってしまい、視線を落とす。解決方法を提案しても、それを行う術がなければ何にもならない。こうしている間にも世界にはどんどん歪みが発生している。焦りと緊張が彼らの思考を鈍らせていた。


「そういえば俺、ここの門見たことないんだよな」


「そうだね、この間は門で来たけど、自分の意思で帰ってしまったしね」


「うーん」


 一度も見たことがないものを探すのは難しい。門から発生している僅かな魔力を感じ取ることも、それは門の魔力の波長を知らなければこの世界では無理なことだ。ただでさえ、今は妖怪達の魔力が充満しているというのに。

 悩みすぎて頭痛を起こし始めている悠真にレイズは近づいた。


「あの、できるかはわかりませんが、やってみましょうか?」


「え?」


 にっこりとレイズは微笑んで悠真の手を握る。何をするのか理解できないまま彼女は目を閉じた。次第に高まる天力、それを目を大きくして見つめる。

 暫くして、ゆっくりとその大きな瞳を悠真に向けた。すると城の窓からある一点を見つめる。同時に四人もその視線を追った。そこには見覚えがあった。森の向こうにある大きな崖。


「あそこって、俺と紫ちゃんが出会った所?」


「あそこの洞窟の中に今は門が存在しています。微かですけど、同じ波動を感じました。悠真さんと」


「なるほど、悠真君の魔力の波動は門と同じ。だから、この世界に呼ばれたのだから、それと同じ波動を探せば見つかるってわけだね」


 はい、と嬉しそうにほほ笑むレイズに悠真は言葉を失う。魔力、天力というものがとても力の強いすごいものだということは知っていた。今回彼も何度か使い、その効力も知っている、つもりだった。しかし、レイズのようなそんな使い方があるということははっきり言って心外だ。


「あそこに、門が…」


「どうするんだ?行くのか?」


「………ついてきてくれますか?伯凰さん、お鵺さん、紫ちゃん」


「ふぅ、まぁ最初からそのつもりだったからね。行かせてもらうよ」


「伯凰様が行くのなら私も同行させてもらいますわ。あの中にもそろそろ興味が湧いていたころでしたし☆」


「……当たり前だ」


 すんなりとした様子に思わず笑んで、悠真はもう一度洞窟の方へ視線を向ける。あそこからもかなりの濃度の魔力が立ち込めている。中は一体どうなっているのか、予想もつかない。


「行こう、今はもうそれしか方法はないから」


 彼の言葉に全員ゆっくりと頷いた。




「う、ぎゃぁぁあああああぁぁ!!」


「うるさい、黙れ!」


 薄暗い洞窟の中、紫が灯す青色の炎だけを頼りに四人は歩を進めている。しかし、案の定そこには死にかかった妖怪の大群が存在し、悠真を狙って近付いてくる。

 ぬめぬめっとした者やにゅるにゅるっとした者、ねばねばっとした者もいれば、とろとろっとした者もいる。


「って、全て気持ち悪い系じゃん!」


 まぁ、それはこの小説だから仕方がない。悠真の叫び声は洞窟内に響き、逆に妖怪に自分の居場所を教えている。ねばねばっとした者はその声を合図に飛び掛かる。しかし、ぬめぬめっとした者が前にいて、失敗。


「だぁ、ややこしい!」


「悠真さん、ここは全て食べてしまいましょう☆」


「出来ません!」


「じゃぁ、やっぱり消滅するべきだね!」


 にっこりと笑った伯凰は何処からか白い羽を三枚抜き取り、息を吹きかけた。それは瞬く間に白い炎と化し、彼は妖怪に向かって投げつけた。刹那、ぬめぬめっとした者、にゅるにゅるっとした者、ねばねばっとした者、とろとろっとした者は白い炎に包まれ、灰となる。


「最初からやれ!」


「面倒で」


「ですよねぇ」


「いえ、どうせやるんですからやってくださいぃぃぃい!」


 既に半べそ状態の悠真は二人が本気になることを祈るばかりだ。そろそろ息も切れそうになる頃、悠真の足に何かが纏わりついた。必然的にバランスを崩して、尻餅をついた彼はすぐにその正体を見る。それは、てかてかした者だった。


「またかよっ!」


 必死に足を動かすが、なかなか放してくれない。それどころか次第に身体をよじ登っていく。てかてかした者は炎の光を反射してまっすぐ見れない。結果、よじ登る感覚だけが悠真を襲い、非常に気持ち悪い。


「ぎゃー!紫ちゃん助けてぇ」


「何遊んでんだ!この忙しい時にっ!」


 てかてかした者は紫に思い切り蹴られて、床に転がる。鵺の足元に来たそれは、天使のように微笑む彼女に…、何をされたのかは伏せておこう。

 既に精神的に余力がない悠真はその場に座り込んで肩を落とした。次第に濃くなる魔力に知らぬ間に気力が削がれているのだ。


「まだ、道は遠い?」


「こう魔力が充満していると、わからないな」


「そう考えるとレイズは流石と思うべきだね。この中で悠真君と同じ波動を見つけ出すんだから」


「そうですねぇ、天族は魔力には敏感と聞きますが、これはやっぱりレイズにしか出来ない技ですね」


 一つ一つの魔力の波動は妖怪同士でも感じ取るのは至難の技。それをかなり離れた場所から、わずかにしか発していない門の波動を探し出すのは、まさに神業とも呼べること。

 それを弱っている身体で難なくこなした彼女はそれだけ特別な存在なのだ。


「レイズの為にも、早く行かないと」


 がくがくな足に力を込めて、悠真は立ち上がる。まだ先は見えない。真っ暗なその道を見据えて、走り出した。その後を紫、伯凰、鵺が続く。




 どのくらいの時間がたったことか。肩を上下させる悠真は肩にかかった変な皮を剥ぎ取る。顔は泥だらけ、服は煤だらけ、足はぼろぼろの状態でじっと友の三人を睨んだ。


「あのさ、助けてくれるのは嬉しいんだけど、俺を巻き込むのはやめてくれないかな?」


 先程から彼等は悠真を襲った者を倒す度に襲われている彼までも炎等に巻き込んでいた。その度に悠真はダメージを蓄積していく。


「いやぁ、つい悠真君の反応が面白くて」


「かぁわいいんですもの。罪ですわぁ」


「変なこと思わないで下さい。俺、辿り着く前に死んじゃいますよ」


 大きく息をつくと悠真は突然進んでいた方向に振り返った。その異常な反応に三人は訝り、同じように道の先を見つめた。しかし、妖怪がいるわけでもなく、何かがあるわけでもない。

 悠真はそれでもそこから視線をはずさず、身体も同じ方向に向ける。


「着いた」


「え?」


 悠真の言葉を理解する前に彼は勝手に歩き出す。まだ道は続いて、先は見えない。しかし、まるでそこに部屋の扉があるかのように彼は手を伸ばした。

 ふっと、手が消える。暗闇に飲み込まれるように悠真はその中に入った。何の恐怖感もなく、違和感も覚えず、そこにある何かを知っているかのように。

 道なのかもわからない、暗闇の中、悠真は恐れず進む。わずかに感じる力を頼りに足を進めて、そして───。




眩い光を発する門が、視界に飛び込んだ。





大変お待たせしました(汗)やっと第四章です!

まさかこんなに長い間更新できないとは…未熟者ですみません。

今回は、一応ギャグ入りましたかね?一応頑張ったつもりですが。

次は遅れないよう努力します!

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