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短編&中編集

蟻のように這いずり回りながら、それでも頑張るショタ魔王の物語

作者: 初音の歌
掲載日:2026/08/15


 その日は暗く黒い、曇天の朝だった。

 不吉な気配を、空に広げて。


 人里離れた山岳地帯。多くの命が消えた古戦場。

 その場に足を踏み入れるだけで、太古の記録が垣間見える。


 かつて、ここは魔王の本拠地であった。

 世界を、混沌と恐怖の渦に陥れた凶悪な闇の主。

 その魔法は大地を震わせ、振るう武器は天空を切り裂く。

 全ての魔物が魔王に従い、多くの民がその暴威に恐怖した。

 人間も、エルフも、ドワーフも、獣人も……全ての生命が魔王を恐れ、身を潜めて生きていた。嵐が通り過ぎるのを待つように、地震が収まるのを祈る様に。


 そんな時、聖剣を携えた勇者が立ち上がった。


 力を蓄え、仲間を集め、知恵と勇気と友情を力にして魔王と戦った。

 激しく苦しい戦いだった。涙を拭い歯を食いしばり、立ち塞がる魔物を打ち倒して……最終的に魔王を封印する事に成功したのだ。

 世界は平和になり、人々は安堵の涙を流し――そして五百年の時が流れた。


 今日はその日だった。封印がほどけ、魔王が復活を遂げる瞬間。



「くっくっくっくっく……」



 澄んだ声が聴こえる。まるで透き通った水晶。

 濁りも淀みも一切無い、純度の高い――闇の声。


「長い時だった……この日が来るのを待ち続けていた……!」


 日の差さぬ空の下、銀色の魔が再び立ち上がる。

 漆黒の外套を身に纏い、真紅の瞳は世界を射貫く。

 顔は端正かつ鋭利。白い肌は美しく染み一つ無い。

 だがその美しさは、清涼ゆえにではなく――これ以上染まりようのない邪悪ゆえに。

 彼の者こそ、五百年前に世界を恐怖に陥れた伝説の魔王の御姿。


「勇者……聖女……神々……! 全てが忌まわしい聖なる者ども……!」


 憤怒。憎悪。殺意。屈辱。

 あらゆる負の感情が、魔王の身体に満ちていく。

 許せない。許せるものではない。自身を地の底に封じた者達。

 最早長い年月が経ち、かつての怨敵は生きてはいないだろう。

 しかし怨念は消えず――魔王に力を漲らせる。



「だが『僕』はこうして蘇った! 今こそ五百年前の屈辱を晴らしてくれる……ッ!!」



 そう。この――どっからどうみても貧弱な少年ボディに、漲る負けん気が宿っていた。

 全然強そうに見えない、貧相な身体で精一杯背伸びするショタ魔王。

 そんなちびっこが、意気揚々と拳を振り上げていた。



「……あれ? もしかして『僕』滅茶苦茶弱くなってない?」 



 魔王はようやく気付く。

 自分、とんでもなく弱体化していると。

 なんだこの身体は。この貧弱虚弱なショタボディは。かつての威厳溢れる強靭な肉体は、何処へ消えた。


 だが魔王はすぐに思い至る。

 思えば五百年。ずっと地の底に閉じ込められて、御飯も食べれず、息も出来ず、勇者にボコされた悪夢だけを見て、うんうん唸りながら過ごした五百年。

 魔力なんて残っている筈がない。ちっとも残っていない。火で表現すると、吸い終わった煙草の燃えカスみたいな火力しかない。ようするに「小火(ぼや)には注意しなさいね」と怒られるくらいの力しかない。

 前途多難――どころの騒ぎではなく。

 ゴミカスみたいなショタが復活しただけだった。


「ま、まあいいや、蘇ったことに変わりはないし……でもあの、魔王軍っていないの?」


 気を取り直して――魔王復活の呼び声に応えて、集まった者達を見る。

 一応いる。ショタとはいえ魔王だ。その復活の波動に導かれて魔物は集まっていた。


 ――三名だけ。


 他はいない。誰もいない。

 そして天気は悪い――別に、魔王の魔力に応じて曇天になった訳ではない。

 単純に、今日の天気が悪くて不吉な感じがするだけ。

 洗濯物が干せない曇り空で、近隣の村人が困ってる。


 集まった三名の魔物の内一名……美しい女性型の魔物が肩をすくめていた。

 金色の髪に、金色の尻尾。そして美麗な顔立ちと、ぴょこんと生えた狐耳。

 魔王の記憶にある――伝説の妖狐の姿だった。


「いる訳ないでしょう『まおー様』。もう世界は随分平和になっちゃったんですよ? 皆退職してますよ」

「そ、そんな!? 邪団長は!? 悪魔騎士は!? 魔神大元帥は!?」

「全員いませんって。王もいなけりゃ、給料も出ない。そんな職場にいつまでも留まってる訳ないでしょうが」


 妖狐は呆れたように半眼で応える。

 世知辛い。どうやら勇者に敗れた魔王軍は、その後散り散りになって解体したらしい。


 さもありなん。妖狐の言う通り、金もなければ指導者もいない軍なんて無用の長物だ。世界を征服しようにも、金がなくては何も出来ない。魔物だって腹は減るし屁はこくし、給料がなけりゃやっていけないのだ。


「ええい、なんて薄情な奴らだ! 僕が復活するまで軍維持しようとする、気骨ある者はいなかったのか!?」

「そんな殊勝な奴らは真っ先に倒されちゃったじゃないですか。忘れましたか、最強の四天王のこと。大佐に博士に大使に将軍……でしたっけ? まおー様が呑気に玉座で勇者を待ってる間に、全員やられてますよ」

「ええ……あの時、全員やられてたの?」


 あんまりな事実に絶望する魔王。

 武闘派で頼れる部下四名は、既にこの世に存在しないらしい。

 そして残る幹部はさっさと撤退して逃げたと。こんなバカな話があっていいのか。


 魔王は崩れ落ちそうになる身体を、ぐっと持ちこたえて――改めて妖狐を見る。

 こうして馳せ参じてくれた数少ない部下。

 だが、その姿は……何と言うか。


「そ、そういえばお前は一体どうしたんだ! なんだその格好!」

「え? これですか?」


 きょとんとした顔をした後――くるりと回ってアピールする妖狐。

 黒のロングブーツ。ボーダー柄ノースリーブニット。ボタン付きミニスカートを履き、伸びる曲線美はストッキングでさらに艶めかしく。

 更に上から羽織る、淡い色合いのカーディガンが妖狐本来の魅力を引き立てていた。


「ふふーん。良いでしょこれー。王都で最新のファッションなんですよー。似合ってます?」

「まあ、綺麗だとは思うけど――って違う! そうじゃない! 何でそんな人間かぶれしてるんだお前は!!」


 確かに似合っている。間違いなく美女の装い。

 しかし、あまりに理解不能。魔王の記憶が確かなら、目の前の妖狐は五百年前、凄腕の剣士として魔王軍で名を馳せていた。


「かつて伝説の妖幻剣士と謳われたお前は、どこに行ったんだ妖狐! 昔は前線でバッタバッタと人間達を斬り伏せていたじゃないか!」

「そんな昔のこと言われましても。魔王軍負けちゃったんだから仕方ないじゃないですか。私だけじゃありませんよ。皆、姿を隠して人間社会に溶け込んでますって」


 そう言って、自身の爪を見る妖狐。

 あらやだ伸びてる、とか呟きながら。

 もう、かつての残虐な妖幻剣士の面影はない。そこにいるのは最新の流行に目敏いギャル。


「そ、そんな……栄えある魔王軍は、もうどこにもないのか……」

「まあまあ。そんな落ち込まないで『まおー様』。今の世の中も意外と楽しいですよ」

「……さっきから思ってたんだが、僕の呼び方、なんか発音違くないか? 馬鹿にされてる気がするんだけど……」

「やだなぁ。気のせいですよ気のせい」


 ケラケラ笑いながら手を振る妖狐。

 魔王は疑いの視線を向けるが――今は置いておく。見た目完全にギャルに変貌を遂げているが、それでも集まってくれた部下だ。彼女に関しては、現状を受け入れるより他に手が無かった。

 あんまりぎゃあぎゃあ言って去られたら、ただでさえ少ない部下が消えてしまう。

 なのでやむなく、魔王は次の魔物に視線を。


「……それで、お前はオーク族の……」

「はい。田吾作(たごさく)と申します」


 そこにいたのは、猪豚顔のオーク種だった。

 オーク。醜悪で獰猛で理性の無いとされる魔物。

 主に棍棒や斧を主武装として、接近戦を得意とする好戦的な種族。

 かつての魔王軍でも、オーク達は前線で戦う戦士部隊だった。


 だが――目の前にいるオークは、何故か眼鏡掛けてる。

 本を抱えている。パッツパツだけどスーツも着てる。

 何と言うか、凄く理知的に見えた。そして振る舞いが紳士的。見た目は猪豚なのに、立ち姿が綺麗。背筋がシャンと伸びて、目付きが精悍。

 顔は猪豚だけど。


「……なんか、僕の知ってるオークと全然違うんだけど……オークは五百年で進化したのか?」

「いえ。私は突然変異の類でして。オーク族は五百年前から特に変化はしておりません。好戦的で凶暴で短慮ですぐに暴れる種族のままです」


 どうやら田吾作なるオークだけが特殊で、他のオークは五百年前から変わってないらしい。

 安心していいのかどうか。今の魔王には、その判断はつけられない。

 だってこんな流暢に言葉喋るオークなんて、初めて見るんだもの。


「私は気づいたのです。戦いは愚かだと。暴力とは、もっとも知性と品性の欠けた愚かな行為なのだと。最初に取るべき行動は『対話』であるべきなのだと」

「はぁ」


 呆然と、相槌だけ打つ魔王。

 田吾作の言ってる事は立派だけど……その見た目で言われても説得力がない。

 そもそも一番「対話」から遠い種族がオークの筈なのに。

 田吾作は魔王に向き合い、真っ直ぐに言葉を放ってきた。


「私が此処に来た理由もそれです。まおー様には、まず現状を解ってもらう必要があると判断したからです」


 そして指を突きつけ宣言する。

 本来ならば魔王を指差すなど無礼千万。

 しかし――背丈の関係上、どう見ても弱者は魔王の方だ。

 猪豚に見下ろされる銀髪ショタでしかない。

 たじろぐ魔王に対し、田吾作は非情なる現実を突きつけた。


「まず、最初にまおー様に言います。かつてのような『世界征服』は諦めて頂きたい」

「な、なんだとぉ!? 僕の行いに文句があるっていうのか!」


 これには魔王も憤慨。激おこである。

 世界征服は魔王の悲願。五百年前から変わる事のない祈りそのものだ。

 誰に言われようと撤回するつもりはない――の、だが。


「そもそもの話――今のまおー様では無理です。解っているでしょう、その貧弱なボディのことは」

「う」


 そう。今の魔王はあまりに弱い。

 膂力も、魔力も、背丈も無い。寸足らずの肉体。見た目だけ整った銀髪美少年ボディだ。

 街に出れば、年下好きのおねーさん等に可愛がられるだけの力しか持っていない。

 田吾作の指摘は続く。


「今の魔王様は言ってみれば、かつての勇者の旅立ちと同じです。レベル1の雑魚です。スライム相手に苦戦する雑魚です。スライム数匹に囲まれれば、それだけで泣いて逃げるような雑魚です」

「ざ、雑魚っていうなよぉ」

「その態度もです。長い封印によって、力も魔力も背丈も精神年齢も――全て下がりまくっています。今のまおー様に世界征服は不可能です。近所の空き地ですら支配できないかもしれません」


 間違いない。何しろ一人称が「僕」になってるくらいだ。

 人によっては鼻血を出す程の美少年なのかもしれないが……あいにくと、魔王が求める力はそれではない。圧倒的な破壊と超越的な魔法で、他者を粉砕する暴君の姿だ。ショタ好きのお姉さまに好かれても困るのである。

 だが、今の魔王ではガキ大将が関の山。

 むしろ、村の悪ガキに喧嘩で負けてしまいかねない。


「それでも、貴方は魔王です。端くれの隅っこの出涸らしとは言え、魔王なのです。下手に動かれると我々の活動にも支障がでてしまう……だからこうして来たのです」

「し、支障? な、なんだ? オーク族主体で国でも攻めていたりするのか?」


 田吾作の言葉に――ちょっぴり嬉しくなる魔王。

 田吾作の態度は不敬そのものだが、オーク族が今の世の中でも暴れているのなら、それは闇の主として嬉しいことだ。やはり恐怖と暴力こそ、世界の真理。知性ぶっていても魔物の本質を忘れていないのだな、と歓喜の顔を浮かべる。

 だが田吾作は――なんか若干、顔を赤らめながら言う。


「いえ――実は、可憐な女僧侶と文通をしていましてね」

「ファッ!?」

「下手に貴方様に動かれると、彼女とのひとときが終わってしまう可能性がある。それだけは避けたいのですよ。私のハニーの耳に、魔王軍再来の話など聞かせたくもない」

「お、お前ー! 魔王と人間の僧侶、どっちが大事だと思ってるんだー!?」


 怒号を発し、田吾作に詰め寄る魔王。

 ちっちゃい子供が、猪豚に食って掛かる。

 田吾作は、魔王を見下ろして――



「――はっ」



 鼻で嗤った。

 猪豚に、鼻で嗤われた。

 屈辱すぎる。だが手をブンブン振り回しても、リーチの差で当たらない。

 頭に手を置かれるだけで、魔王様のグルグルパンチが空を切る。

 しばしの後、諦めて距離を取る魔王。田吾作は素知らぬ顔だ。


「く、くそぅ……五百年封じられてる間に、すっかり魔王軍の質が下がってしまった……」

「質も何も。そもそも集まったの三名だけじゃないですか」

「うっさい! この人かぶれ妖狐! お前なんか嫌いだ!」

「あ、私、人間社会じゃ『ヨーコさん』って名前で通ってるんでそっちでお願いしますね」


 妖狐は人の良いお姉さんみたいな顔で、そんな事をのたまってくる。

 もはやアイツは駄目だ。人間社会にすっかり毒されてしまった。

 世の無情を噛み締めながら、魔王は最後の一名に視線を向ける。


「で、最後のお前は――おおう、凄いな! まさかユニコーンのメスか!」


 そこにいたのは、純白の一角獣であった。

 しかも感じ取れる気配が、ただのユニコーンではない。

 魔王の言う通り、それは――彼女は、稀少な一角獣の中で更に稀少な個体。

 百年に一度しか生まれないとされる、ユニコーンのメスであった。


「ユニコーンのメスは僕のいた時代でも希少種だ。そんな君が僕の呼び声に応えてくれたなんて……ははは! 聖獣ですら呼び寄せるとか、やっぱり僕の力もまだまだ捨てたものじゃ――」

「ねえねぇ!? それで!? いつ人間どもをぶっ殺しにいくのかなぁ!?」

「……ん?」


 なんか、物騒な声が聴こえて、魔王は首を傾げる。

 おかしい。ユニコーンのメスは、清純と清涼をその身に宿した超越種。

 俗な善悪に染まらない、真に聖なる獣の筈。

 あんな、血に飢えた狂戦士みたいな発言する訳がないのだが。


「あたしねあたしね! ずっと森の奥で静かに暮らしてたんだ! 花や蝶と戯れて、心静かに穏やかに!」

「う、うん。それで?」

「そしたらね! 人間達が森に踏み入って、あたしを捕えようとするんだよ!? 酷いよね!?」

「あー……」


 魔王は思い出す。

 確かに、希少種であるユニコーンを密漁しようとする人間達は、五百年前もいた。

 それが今の時代も続いているのだろう。

 しかも、そんなユニコーンのメスとなれば、稀少性は更に上がる。

 彼女も大変な目にあったのだろう……それは、解るのだが。


「最初はね、逃げたり隠れたりしてやり過ごしてたんだけど……ある時思ったんだッ! もうこんな人間達なんていらないよねってッ!! だってあんなに愚かなんだもの! 殺しちゃってもいいじゃない!? むしろ処すべき命だよあれはッ!!」


 なんか発言が、物騒を通り越して危険域。

 声色は鈴が鳴るように可愛らしいのに……出てくる言葉が殺意全開。

 清純とか清涼とか、そんな気配は一切ない。

 あるのは鏖(みなごろし)の気配のみ。


「殺していく内に気付いたんだよ! あたしのこの角は癒す為じゃなくて、人間どもの血で赤く染める為にあるんだってッ!!」


 思想が強い。かなりの危険思想。

 というか、既に何人か殺ってる模様。確かによく見れば、純白の筈の角に何やら赤錆のような汚れが。汚れぬ筈の聖なる角が汚れてる。一体どれだけの血を啜ったのか。


「さあ、はやく行こうよ、まおー様ッ! 人間どもを血祭にあげて、真の平和を取り戻そうよッ! 愚かな生命体は全部串刺しにしてさぁ!!」


 誰がこうなるまで放っておいたのだ。

 ユニコーンの眼は、完全にガンギマってる。もう手遅れ。この殺人兵器を止める事は誰にもできない。だって止めようとしたら、きっと串刺しにされる。今も現在進行形で、ブンブン角振ってるんだから。

 その様子を「あちゃー」と呟きながら妖狐が見つめていた。


「……あー、やっぱユニっちの思想は変わってなかったかー」

「えっと……この子、その、何?」

「見たまんまユニコーンのメスだよ? 昔、人間達に追われてたところを助けたことあるんだけど……うーん、昔より大分決まっちゃってるなぁ」


 キマリすぎである。

 どうしろと言うのだ、あんな危険ブツ。


「でもほら、まおー様に今一番忠実な部下だよ?」


 魔王は反論したくなった。

 あれは忠実と言わない。今の所、目指す先が「似ている」から従ってるだけ。


 正直、魔王は人間を根絶やしにする気は無い。彼は世界を支配したいだけ。

 あらゆる種族の頂点に立ち、神すら跪かせて悦に浸りたいだけなのだ。

 だからこそ、五百年前「世界滅亡」ではなく「世界征服」を目指した。


 だが、あの思想強めのユニコーンは、人の生き血を啜る事しか考えてない。

 諫めようとしたら、まず魔王の腹に角が突き刺さる。そしてそのままご臨終だ。

 今の魔王は、そこいらのスライム並みに弱い。レベル1の雑魚である。


 視線を別の方向へ。

 いるのは口の達者な知的なオーク。

 そして、すっかりギャルみたいになった妖狐。


 どいつもこいつも、癖の強い玄人向けユニットだ。

 今のショタ魔王に扱いこなすのは、あまりに難しい。


 だが。


「それでも……それでも僕は世界を征服してみせる……ッ!」


 そう。魔王の野望は消えていない。

 消えるようなら、五百年前に消滅している。

 勇者との戦いで敗北し、封印されても生き続けた魔王の悲願は、この程度で途絶えない。



 ――これが始まりだった。

 封印が解かれた魔王の、新たなる第一歩。



 蟻のように這いずり回りながら、それでも頑張るショタ魔王の――最初の一ページ。



魔王を主人公にしたファンタジー短編を考えていたら……コメディになりました。

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