(掌編)優しい夫の「幸せになってね」が自分にブーメランで返ってきた話
Aは50歳にして
25歳も歳下の若い妻、
Cを娶ることになった。
しかし楽しい結婚生活が5年も続くと
枯れたススキの穂が燃え落ちるように
Aは自分に明らかな老いを感じるようになった。
やがてCが密かに
職場の年下男性Zに
想いを寄せている事に気づいた。
Aは
『彼のもとへ行っていいよ…
俺のことは大丈夫!
Cには幸せになって欲しいから。。。
でももし彼がCを傷つけるようなことがあったら
いつでも戻って来て良いからね…
…本当に…』
そう告げて
良心の呵責に躊躇うCを見送った。
Cと10歳年下のZの同棲生活は
燃え上がる恋の炎のような日々だったが
5年もすると
あれほどまでに燃え盛っていた炎は
種火ごと消え失せ
冷たい灰だけが残った。
Zが浮気を繰り返していることに気づいたCは
「彼女のもとへ行っていいよ…
私は大丈夫…
Zには幸せになって欲しいから…」
と言って
悲しみと悔しさに目を潤ませながらも
5年前別れた時のAの言葉を思い出し
彼の家のインターホンを鳴らした。
玄関のドアを開いたAは
年齢相応に見た目が変わってはいたものの
かつての優しい眼差しはそのままだった。
CはAの言葉を信じてAを訪ねたが
彼の表情はどこか困惑しているように見えた。
気まずい空気を察したCは咄嗟に気を利かせて
どう転んでも良いように
「元気にしてるかな?と思って
顔見に来たの!」
と笑って言ったが
彼女の心はバツの悪さと
予想外のAの様子に
形容し難い焦りを感じ
その場の二人に沈黙が流れた。
その時、Cの背後から
「Aつん!?、Aつ~ん!!.......」
と若い女の声がする。
『M!!、Mじゃないか!』
Mは
「あの男最低だった!
あたしやっぱりAつんが,,,Aつんが、、、
……ぁれ?.....
このひと、誰??。。。」
と言って
そこにいたCを訝しんだ。
3人は玄関の前で
しばし無言で立ち尽くしていた。




