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GO!!~氷上の剛腕番長~  作者: 渋谷直樹
第4巻:もう一つの闘い
31/33

第31エンド 苦しい言い訳

口数は、少なかった。


 いつも通りの賑わいのロビーで、どう、声をかけたらいいのか、分からなかった。

 俺もメンバーも、悠歩の彼女の美鈴でさえも。


「ドンマイドンマイ」

「惜しかったね」

「練習試合で良かった」


 などと、パラパラと声を掛けていたが、悠歩の表情は、暗いままだった。


 負けた所で、練習試合だ。

 これで何かが終わるとか、止まるとか、そういう事は何も無い。

 そう、たかが練習試合。気にすることはない。


 .....本当に、そうだろうか?

 今日起きた事は、本当に、取るに足らない些細なミスなのだろうか?


 何かは分からないが、大事な事のような、気がする。


 リンクの上では冷静沈着で、常に確実に事を進める男が、あり得ないミスをした。

 今まで見たことの無いミスをした。


 何かが、起きた。


 怪我か?

 それとも、ストーンを離す直前に目にゴミでも入ったか?

 春が近づいてきたとは言え、まだまだ乾燥しているのかもしれない。


 何にせよ、終わった事だ。

 おいおい、話してくれるだろうさ。


 そうやって、気まずい沈黙を噛み締めていると、ドヤドヤと声がした。


『いや〜、緊張しましたね~!練習試合だからと思ってたら観客が居たんですもの!ビックリしちゃいましたよ!アップルストーンズさん、ノッてますね〜!』


 津軽じょっぱりーずの面々が、慣れない観客達から解放されて、晴れ晴れとした顔をしていた。


『いやはや、ご迷惑をおかけしてしまいまして、すみませんでした。我々もまさか練習試合にまで観に来る方が居るなんて、驚いてしまいました』


 人の良い苦笑いで、ススっと前に出た為川コーチが、悠歩を後ろに隠した。


「我々も新鮮でしたよ!」

「マイナースポーツですから、注目は嬉しいですね~」

「また是非、声をかけてください!」

「ええ、また胸をお借りします」


 それでは、と彼らもまた、打ち上げを行いに、自分達の行きつけである居酒屋へと、待ってましたとばかりに向かっていった。


 さて、俺達もまた、いつも通りに我らがホームである「みゆき」で、反省会をしようではないか。

 貝焼き味噌に、ホタテの刺身に、日本酒で一杯やって、次への英気を養おう。


『あ、あの、今日は、その、僕は帰ります』


 悠歩が、口を開いた。


「おいおい、最後のミスでも気にしてんのか?大丈夫だって、あんなの!」

「坂本くんもあんなミスするんだって、逆に親近感が湧いたくらいだよ」

「.....切り替えろ」


『あの、その、もしかしたら、この前の熱がまだ下がって無かったのかもだし、新学期もそろそろだから、準備しないと、ですから...』


「真面目だね~、アルコール消毒でもするかぁ?」

「海至くん、そういうのはアルハラになっちゃうよ?」

「....お前が飲め」


 悠歩の申し出に、場を和ませようと口々に声をかけたり冗談を言ったりしているが、どうにも空回りのような、滑っているような感じだ。


 ふぅむ、あのショットは、随分とショックだったようにみえる。

 元から口数の多い子ではないが、これじゃあまるで佐山のようだ。


 そんな佐山ですら、ポロポロとジョークを言っている。

 余り、面白くはないが。


『そうですねぇ、春先といえど、この辺りはまだまだ冷え込みますからね。今日は帰って、ゆっくりとお風呂にでも浸かると良いでしょう』


 穏やかな笑顔で、為川コーチがそう促した。


「....ありがとうございます」


 ペコリと頭を下げると、まるで逃げるように、忘れようとするように、足早に去っていった。


「ちょっと待ってよ!」


 と言いながら追いかけた美鈴にも、構わずに。


『坂本くん、大丈夫でしょうか?引き摺らないと良いのですが』


 腕を組み、小さくなっていく、悠歩と美鈴の背中を眺めながら、望田がポツリと呟いた。

 その眼差しは、思春期の子供を見守る父親のような、温かいものだった。

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