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GO!!~氷上の剛腕番長~  作者: 渋谷直樹
第4巻:もう一つの闘い
25/33

第25エンド 嵐の闖入者

『おぉ....ありがとうございます。初めて、剛士さんに感謝しました....』


「凡利休ゑ」そう書かれた色紙を受け取りながら、佐山が呟いた。


 恒例の居酒屋「みゆき」の指定席。

 海鮮鍋、いがメンチ、ホタテの貝焼き味噌。


 普段は懐事情も考えてささやかな注文にする事も多いが、年が明けてから最初の練習だ、その打ち上げならば、新年会も兼ねて豪勢にしたいと思うのが人情だろう。


 いつもの「みゆき」の内装も、今は正月の熊手やら、入り口にはまだ門松も飾って、祝賀のムードを漂わせている。


 店内には鍋やおでんの煮込まれる音、醬油やみりんを焦がしたような、懐かしい良い匂いが充満している。


 初めて....


 そうかぁ、初めてかぁ....


 青森選手権大会の時に髪の毛に気づいた時のスイープは、我ながら大したものだと思ったが、そうかぁ....初めてかぁ。

 為川コーチから聞いたが、あそこでストーンがハウスに入っていなかったら負けていたかも知れないと聞いていたが、そうかぁ....


『......青森選手権大会の次に...ですね』


 俺の露骨なガッカリ顔に気が付いたのかそう付け加えたが、おい、時すでに遅しだぞ?


 このおっさんはそれなりにテレビ業界とか、芸人とかタレントと繋がりがあるんだぞ?

 旬はとっくに過ぎたけど、歌ネタの「ナンジャモンジャ」とか。


 もしも俺がお前の好きなお笑い芸人と仕事をしても、知らないぞ?


 そうやって、俺が拗ねていると。


『お前ぇ!いいチャンスをモノにしたじゃねえかぁ!!良くやったなぁ!!』


 聞き慣れたダミ声が、俺の耳をつんざく。


 ......


 ..........


 ..............あのさぁ、なんでいるの?


 おかしいじゃん。

 企画、終わったじゃん。

 東京の、虎ノ門のヤニ臭い窓際部署で燻ってるはずじゃん?


 なんで「みゆき」に居るの?


『あぁ!?有給だよ!!有・給!!腐るほどあるぞぉ!!いくらでも取れるぞぉ!!買い取ってくれんなら売ってやるぞぉ!!』

「どうせ使い切れねぇんだからな!!」


 ガハハハと、良いんだか悪いんだか、誇れるんだか誇れないんだか、篠山だったら「僕は全然足りないよぉ」とボヤキそうな事を、堂々と言い放つ。


 この髭面。

 小太りの腐れ縁。


 藤原義久が、ビールがなみなみと入った、本来ならば「みゆき」に置いていない筈の特大ジョッキを片手に、そこにいた。


『いやいや!!ていうか何で藤やんいるのさ!!企画終わったんじゃん!!』


 だよなぁ、海至。

 もっと言ってやれ、俺も何も聞いてないぞ。


『おん?お前ら為川さんから何も聞いてないのか?ドキュメンタリーとしてこれから密着するぞ?』


「はぁ!?」

「ドキュメンタリー!?」

「密着!?」

「初耳ですよ!?」


 その場にいた全員が、目を白黒させた。


『ボクシングの世界王者が、今度はカーリングの日本代表になる!!当たれば特大だからなぁ!!わかってんだろぉ!!なぁ!!剛士ぃ!!』


 はぁ....

 いやいや!!

 だから聞いてないって!?


『おぉん!?日本代表になるんじゃなかったのか?アップルストーンズはよぉ?』


 うぐぐ....


 日本代表になる。

 その為に、為川コーチがこのチームを作った。

 だから、藤原が言う事は、ズレてはいない。

 いや、アップルストーンズの目的ということでいえば、何も間違ってはいない。


 「本格始動はまだ先だがな!」とガハハと笑っているが、余りの勢いに飲まれていたのは俺だけではない。

 この場にいるメンバー全員。


 いや、正確に言えば、アリーナの使用料金の精算やら、次の予約やらで遅れている為川コーチ以外のメンバーだが。


 .....あのオヤジ、さてはこうなることをわかってたな?


 たははと苦笑いをする、人の良さそうな顔が、アップルストーンズのメンバーの頭に、思い浮かんだ。



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