第22エンド 馬、走る
────ピコン、ダイレクトメールの通知が鳴った。
次のリングの、通知が鳴った。
嘲笑、からかい、興味本位のイタズラ。
では、無かった。
「青森アップルストーンズ様
突然のDMで驚かせてしまったことをお許しください。
当方、YouTube上で活動しております、漫才コンビ「馬、走る」の、森野昌幸と高島航大と申します。
この度、アップルストーンズ様のメンバーであられる桐原剛士様の動画を拝見させていただき、是非ともコラボをする事が出来たらと思い、DMをさせていただきました次第でございます。
当コンビのツッコミ担当である森野は、3年ほど前に街頭インタビューで、自身の性癖を語った動画をきっかけにネットミームとなりました。
同じく、ネットミームとなった事、そして、テレビでもご活躍をされている桐原様と、一度お話をさせて頂くことが出来ましたら幸いで御座います。
冬の寒さが益々厳しくなっていくこの季節、青森アップルストーンズの皆様のご健康と、今後のご活躍をコンビ、スタッフ一同、祈念しております」
うぅむ、へぇ~、ほぉ....、などなど、三者三様、いや、六者六様の反応がwebミーティングアプリの画面越しから返ってきた。
チームのSNSアカウントに突如として飛び込んてきた一通のDM。
冷やかしや、茶化すようなものも少なくなかった中で、真面目な、誠意を感じる一通。
バズったカーリングおじさんだけでなく、俺がテレビタレントをしている事も知っているらしい。
芸人ならば、もしかしたらなにかの収録の時に会ったことがあるのかも知れないが、生憎このコンビ名に覚えは無かった。
美鈴が調べた限りでは、ちゃんと活動している、真っ当な芸人らしい。
が、残念ながら海至がネットミームになった動画は知っていたものの、漫才の方は知らなかった。
イタズラなどでは無さそうだから、話を
聞くくらいは良いんじゃない?
そんなボヤっとした空気が、画面越しからも伝わってくる。
.....
........
『.......「馬、走る」って、ツッコミのマーちゃんがバズってからかなり人気ですよ。今は下ネタ中心だけど、元々は硬派なネタが多かったですね。因みに、バズったのはショタと男の娘が好きというのを語った内容でした。YouTubeチャンネルで、さらに深掘りをしています。個人的には相方の高島さんの方が、ヤバい人だと思います』
.....皆が止まった。
小さなテーブルに鎮座したノートパソコンの、ウゥーーンという排気が、じわりと部屋を暖めた。
....
......佐山!!
お前、長文を喋れたのか!?
そして、お前、お笑いが好きだったのか!?
俺はまだいいさ、付き合いだってそう長くは無い。
他のメンバーなんて口を開けて呆然としている。
あの軍師・為川コーチですら、目をまん丸にして驚いている。
誰も予想していなかった角度からの、まさに奇襲。
『....確か、ネットミームになった人とコラボをする企画を良くやっていたはずなので、恐らくそのオファーだと思います。剛士さん、サイン、貰ってきてください。宛名は「凡利休ゑ」でお願いします。僕のラジオネームです』
え?お、おう。
サインまでねだられてしまった。
しかもお前、深夜ラジオリスナーでもあったのか。
そして、このオファーを受けるのが何となく決まってしまったような雰囲気が流れてしまった。
俺もまた、奇襲を受けてしまった。




