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GO!!~氷上の剛腕番長~  作者: 渋谷直樹
第3巻:見慣れた新天地
19/33

第20エンド アップルストーンズの7か月

 ドサリ....


 屋根に積もった雪が落ちる。

 重く湿った音がした。


 もはやアップルストーンズにとって行きつけの店、ホームともいえる場所となった居酒屋「みゆき」で、為川コーチがこの7カ月間を振り返るように口を開いた。


『.....最初は、貴方達を観察していました。チームの知名度に寄与するのか、なにより、何処まで本気なのかを』


 もうすぐこのカーリング企画も終わる。

 次に臨む東北選手権大会。

 それを最後に、「ゴウちゃん」のカーリング挑戦企画はその役目を終える。

 そして、桐原剛士の挑戦が始まる。


『失礼な事をしました。改めて、申し訳ありません』

 剛士と藤原と、篠山に向けて、静かに頭を下げた。


 この7カ月間、ずっと観てきた。

 どんな人間なのか、何処までやるつもりなのか。


 本物の熱だった。

 本気の熱だった。


 懐かしい、瑞々しい、震えるような熱だった。


 自分も、チームのメンバーも、その熱に当てられて、更に熱くなった。


「強いだけでは駄目なんです」

 7カ月前に、このシミのついた跡のあるこの席で、そういった。


 そう、強いだけでは駄目。

 そこに、本物の熱がなければ。


 かつてのチームも、このチームも、強い。

 強いメンバーを集めたからだ。


 しかし、それでもまだ足りなかった。

 熱が、渇望するような、燃え盛るような、灼熱が。


 その熱を、競技の違う、テレビタレントの、素人の、桐原剛士が連れてきてくれた。


 ありがとう。


 最後のピースが、揃ったような気がした。


 小上がりの、今ではアップルストーンズの指定席のようになった席に、暖房で暖められた空気がゆったりと流れる。

 為川コーチの静かな告白が、その空気にじわりと溶けていく。


『でも、本当に終わっちゃうんですか?』

 しんみりとした空気の中で、カルピスサワーをちびちびと飲んでいた美鈴が藤原に聞いた。

 初めてのテレビ撮影、初めて生でみる業界の人。

 物珍しさと興味と、自分の周りにはいない世界の人間から学べる刺激に満ちた体験。

 それも終わってしまう。

 何より、友達のような仲間のような、家族のような愛着の湧いた人達と、離れ離れになってしまうのはやはり寂しい。


『おん?いやまぁ、流石にこれ以上は予算が取れなかったからなぁ』

 俺も粘ったんだけどなぁ、とボヤきながらボリボリと頭を掻く。

 本音を言えばもっと続けたかった。

 しかし、深夜バラエティの一企画を流石にこれ以上引っ張ることも出来なかった。

 予算の都合と美鈴には濁したが、上からはやんわりとそろそろ次へ行けよと釘を刺されていたのだ。

 のらりくらりと躱してきてはいたがここらが潮時。

 名残惜しくはあるがこればかりは仕方がない。


 ....しかし、Z世代なんて良くわからん宇宙人のようなものだと思っていたが、この数カ月のお陰でどうやらそれも偏見だったらしい。


 同じ人間、同じように、心躍るストーリーに熱くなる。


 良い奴らじゃないか。


 体が熱くなってきたのは、酒と、あと、暖房のせいだな。

 うん、暖房のせいだ。


『大丈夫だよ、大事な大会の時はちゃあんと応援に来るし、何より、剛士くんがいるからね』

 名残惜しさと寂しさと、それでも今生の別れというわけではない。

 彼らがこの熱を持っている限り、いつか何処かでまた会えるだろう。


 それにだ。


『何かと理由をつけて藤原くんが茶々を入れに来るさ、お気に入りだからね』

 どうやったって様子が気になるだろう相棒が放っておくはずはないさ。

 自分は気が向いたら付いていくとするよ。

 気が向いたらね。


『篠山さん!お気に入りなんかじゃねぇって!ただの腐れ縁だよ!腐れ縁!!』


『ははは、そうだねぇ、僕らはみんな腐れ縁だものねぇ』


「ツンデレだ」

「わかりやす!」

「藤やん泣いてんじゃない?」

 篠山の言葉に大学生組がぎゃあぎゃあと口々に囃し立てる。


「うるせぇ!違うって!!」


 耳まで真っ赤にして違うと叫ぶが、みなまで言うな、わかってるわかってる。


 おい!海至ぃ!相撲取るぞぉ!!

 なんで俺だけ〜!!

 きゃあ!溢れた!!

 誰かおしぼり!


 ぎゃあぎゃあワイワイ、そんなアップルストーンズの様子を遠巻きに、店主夫婦が目を細めて、微笑ましそうに眺めている。


 大漁旗、スサノオのねぷた絵に、縁起のいい意匠の凧の紐が、ユラユラと揺れている。

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