記憶のすきまに咲く約束
はじめまして、灯乃ひかりです。
何気ない一言から始まる、ちょっと切なくて優しい物語を書きました。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
ねぇ、覚えてる?
彼女がそう言ったとき、僕は咄嗟に答えられずに、思い出すように目を逸らしてしまった。
…思い当たることがなくて視線を戻すと、答えられなかったことを後悔した。
彼女の目に雫が浮かんでいたから。
そんな顔をさせたくなくて、手を優しく握る。
「大丈夫だよ」
「…そうだよね、すぐ思い出すよね」
雫を細い指で強く拭き取り、擦って赤くなった目で笑いながら、僕の手をそっと握り返してくれた。
彼女の後ろには、病院の診断書があった。
それはとても恐ろしい宣告のようで…
彼女の笑顔にかかれば、ただの紙切れみたいだった。
「きっと乗り越えられるよ」
悲しませている原因が言えることでは無いかもしれないけど、この言葉を伝えるだけで、全てに打ち勝てそうな気さえする。
「うん。約束…だよ?」
「約束。」
読んでくれてありがとうございます。
この物語には、記憶や約束のあたたかさを込めました。
言葉にならなくても伝わる気持ちを感じてもらえたら嬉しいです。
これからも自分らしい物語を書いていきますので、
よろしくお願いします。
灯乃ひかり