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第一章4  『魔法』

「―で、なんで俺を召喚したんですか?」


「敬語は使わなくていいですよ、カズヤ様♪」


 俺の真剣な問いにさして真面目に答えようとしない銀髪碧眼の甲冑姿の女―


 彼女の名前はセレナ。騎士団の副隊長だと説明された。騎士らしくすらっとした体形だが、無骨な服装に対して性格は穏やかそうだ。


「セレナ様はすごい人なんですよ、敬意は忘れないでくださいね?」


 俺にタメ口が許可された事を不服そうにする桃髪翠眼の美少女の名前はスクーデリアというらしい。この家(宮殿?)でメイド長をしているそうだ。


 いまだこの状況に半信半疑だが、ドッキリにしては手が込みすぎている。


 美人に囲まれているのだから、この状況をできるだけ楽しもうとひとまず流されてみることにする。


「聞いていなかったけど、ここはどこなんだ?」


 まずは基本的な質問をしてみる。


「ここは…そうですね、私たちの家、とでも言いましょうか、、」


―私たち?


「とにかく、今日からカズヤ様がお住みになるところですよ♪」


 なるほど、よくわからんが俺は今日からここに住むのだな。


「では改めて聞くが、なぜ俺を召喚したんだ?」


「最初のお目覚めの時にもお伝えしたのですが…」


―覚えてるわけないだろ。半分寝てたんだから。


「我々の音楽隊に入団して、私たちを助けてもらうためです!」


―そんなこと言われた気もするなあ


「助けるって、何をすればいいんだ?」


「痛っ!」


 突然、スクーデリアが大声を上げた。スクーデリアはさっきまで部屋の掃除をしていたみたいだが。


「指を切ってしまいました、、、」


 壁に飾ってあるサーベルを触ってしまったようだ。手にぱっくり傷ができている。血が滴った。絶対後になるタイプの傷である。メイドでもケガするのか。いたそー


「あらあら、自分で治せる?」


 セレナがいつものことだといった感じで話しかける。


「はい、、」


 スクーデリアがしょんぼりと答えた。


―ん?今自分で治すって言った?治すってどういうことだ?



 突然、スクーデリアが歌いだした。



「え?歌?」


 指から血を流しながら歌いだしたメイド。そのわけわからん状況にカズヤが混乱する。


 ただ、その歌は信じられないほど美しかった。


 カズヤは友達の少ないほうだったので、自分以外の歌声を生で聞いたことがなかったが、その歌声は今まで聞いたどの歌声よりも透き通った、時間を止めるような、いや、さらに戻してしまうような、蠱惑的な歌声だった。


 カズヤはその歌声にしびれてしばらく我を忘れて聞き入ってしまった。


 

 歌が終わった。



「今のは、、なんだ、、?」


「説明が省けましたね、♪」


 セレナが微笑しながら言う。


「リア、お手柄です。♪」


 スクーデリアが嬉しそうにほほ笑み、さっきケガした手をカズヤに見せる。ちなみにリアというのはスクーデリアの愛称らしい。


 驚いたことに、傷は消えていた。


「今の歌で、、治したのか、?」


「さすがカズヤ様、理解が早い。♪」


 確かに心が癒えるような歌だったが、体まで治してしまうだなんて。そんなことがあるのか?


「異世界からいらしたカズヤ様にはなじみがないかもしれませんが、この世界では当たり前のことですよ♪」



「今のは私の魔法です。どうです、すごいでしょう」


スクーデリアが自慢げに俺を見る。


 どうやらこの世界では音を使って魔法的な効果を生み出すらしい。


―なんてことだ。


 銀髪碧眼の騎士と、桃髪翠眼のメイド。さらに音楽と魔法の世界。


―なんだか大変なことに巻き込まれてしまっている気がする。


 カズヤはこの時、自分が予想したよりももっと大変なことが起こることを、まだ知らなかっただろう。


 次の瞬間、さらなる来客が部屋の扉をノックした。

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