第一章3 『二度寝』
―目が覚めた。
「見知らぬ天井だ、、」
某有名ロボットアニメのようなセリフを言いながら、少年―カズヤは目をぱっちりと覚ました。
カズヤが今寝ているベッドは、自分の部屋のものより数倍ふかふかしている。確実に自分の家以外のベッドである。
自分の部屋でギターを弾いていたのに、なぜか別の人の部屋のベッドで寝ている。あり得ない状況だが、カズヤは少し寝ぼけていた。
夢と現実が入り混じる中、寝ながらふと右側を見る。
視界に自分のギターが映り込んだ。
さっきまで弾いていたギターである。
ご丁寧にスタンドにかけてある。
左の方も見渡してみる。ずいぶん部屋は広いようだ。その時、カズヤの脳内に素朴な疑問が浮かんだ。
(ここはどこだ?)
寝ぼけていたカズヤの脳内に、「知らない部屋にいる」というヤバい状況に対する危機感が流れ込んだ。
カズヤは雷に撃たれたように跳ね起きた。
「これは、、」
カズヤが寝ていた部屋は、まるでベルサイユ宮殿の一室のような豪華な部屋だった。
壁には誰か知らないが高貴そうな婦人の肖像がかけられ、家具はロココ式?で統一されていた。
「なんだここは、、、」
なんで自分がこんなところにいるのか不思議に思っていると、突然部屋にノックの音が鳴り響いた。
ノックは4回だった。ずいぶんご丁寧である。
カズヤは緊張した。ずいぶんいいタイミングでノックがなったものだ。
扉が勝手に開く。
扉の向こうから現れたのは、古風なメイド姿の少女であった。
扉はベッドに対して横向きについていたので、少女の顔はすぐには見えなかった。が、なんとなく怖い大人が現れると思っていたカズヤは少し安心した。
アニメか歴史の教科書でしか見ないような白黒フリルのメイド服に、落ち着いたピンク色の髪をツインテールにした身長低めの多分美少女。
見るからにメイドだ。カズヤは一瞬邪な妄想をしたが、情報量が多すぎてその妄想は消え去った。
メイドがこっちを見た。
目が合った。やはり美人。美しくつぶらな瞳をしている。
目が合うなり、メイドがびっくりしたように口を開いた。
「ああ!カズヤ様が起きた!」
突然大声を出されたのに怯んで、カズヤも一緒にびっくりしてしまった。
なんで名前を知っているのか、カズヤは声をかけようとしたが、メイドはすぐに走り去っていってしまった。
2分ほどしただろうか。
あっけに取られてぼーっとしていると、さっきのメイドがもう一人女性を連れて再び部屋に入ってきた。
「カズヤ様、やっとお目覚めになりましたか、」
そう自分に声をかけるのは銀髪碧眼のなかなかの美人だ。
容姿なんてどうでもいい。注目すべきはその服装だ。中世の騎士のような甲冑を身に纏っている。
メイドと甲冑にロココ様式の部屋。テレビのドッキリ番組かと思いながら、とりあえず甲冑の女性の話を聞く。
「よかった、召喚に成功したと思ったらすぐに寝てしまうんですもの、、」
どこかで聞いたような声である。あと、召喚?同じような声で、同じような言葉を聞いた気がする。
夢だと思っていた記憶が蘇る。
俺はぼんやりとした意識の中で、名前を聞かれ、それに答えた。
「あの時のやつか!?」
目の前にいるのは、確かに俺を異世界に召喚したとか言っていた人物である。こんなやつだったのか。
「お前、俺を召喚したとか言ってたやつか?」
「その通りです。」
あの夢は現実だったのか。信じられない気持ちで、当たりを見渡す。
「これって、、、」
混乱した脳みそが、さらに混乱するような結論を出す。
―「異世界召喚ってやつか!!!」
あまりのことに、思ったことがそのまま口に出てしまった。
「そうですよ♪」
もう説明しているだろうと言った感じで、甲冑の女が微笑をたたえながら答える。