第一章1 『お目覚め』
「ようこそおいでくださいました」
―気がついたら、そこにいた。意識が朦朧とする。
「召喚に応じてくださり、感謝します」
―召喚に応じる?なんのことだ?
「異世界人様、どうかお名前をお聞かせください」
―俺の名前を聞いている?
「異世界人様!」
―異世界人様?俺のことか?
思考を重ねるうちに、ぼんやりとしていた意識がだんだんと現実へ上昇してくる。
「異世界人様、お名前を教えてください!」
今度はやけにはっきりと聞こえた。朦朧とした意識はほぼ消え、注意が声の主へと向けられる。
「異世界人様!」
―名前を聞かれているのだったか。まだ覚めきらない意識のなかで、たどたどしく自分の名を発音する。
「……カズヤ」
「カズヤ様とおっしゃるのですね!」
初めての反応に声の主が嬉しそうにする。
「初めましてカズヤ様、召喚に応じてくださり感謝します」
―召喚に応じた覚えなんてないのだが…一体どうなっているんだ?
「ここは…どこだ?」
聞いてみる。
「ここは、カズヤ様のいらした世界とは別の世界です。」
―別の世界?何を言っているんだ?疑問符だらけの心のなかで、すがるように質問をする。
「召喚…ってなんのことですか?」
先ほど聞かされたカードゲームでしか聞かないような言葉について尋ねる。
「カズヤ様は、私が召喚しました。」
―俺が…召喚された?どういうことだ?
「カズヤ様は、別の世界から私が連れてきたんですよ♪」
―説明されたところでわからなかった。
「カズヤ様、私たち魔法音楽隊を助けてくれませんか、、?」
―魔法?音楽?助ける?何を言っているんだこいつは?
「カズヤ様、さあその手に持っているギターを弾いてみてください!」
―ギター?
―何を言っているのかわからず脳がくらくらしてきた。
―あれ、やっぱり俺って誰だっけ。ここはどこだっけ、、
―戻りかけた意識がまた沈んでいく…
「あれ?カズヤ様?カズヤ様!?」
これは夢だろう……そう夢に違いない…
カズヤの意識は再び奥底へ沈んでいった。