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 野球部をやめて数日経ったある日。



 朝、つむちゃんたちと廊下で談笑しているときだった。


「かんちゃん、後ろ」

 そう言われて振り返ると、飯塚先輩が立っていた。

 


「お疲れ様です」


「よっす。かんちゃん今ちょっといい?」


「あ、はい」

 そういって一旦みんなから離れる。





————少し歩いて空き教室に入る。



 廊下から見えないようにふたり並んで床に座る。

 座った瞬間、飯塚先輩が話を始めた。


「いきなりごめんね。ちょっと聞きたいことあって」


「なんですか」

 何も思い当たることありませんけど。


「うーんとさ、かんちゃんって増田と連絡取ってる?」


……ん? 何の話だ?

 増田って野球部の増田先輩のことかな?


 私の返答を待たずに先輩は話を続ける。

「連絡取ってるならやめてくれないかな。増田彼女いてさ、」


「ちょっと待ってください!」

 たまらず話を遮る。


「あの、私連絡取ってませんよ。そもそも連絡先知りません」


「え? マジ?」

 

「はいマジです。変なこと言うのやめてください」

 不信感いっぱいの目で先輩を見る。


「あーちょっと待って、マジか」

 不貞腐れる私を見て焦ってるみたい。


「私じゃなくて増田先輩に聞いてくださいよ」


「いや聞いた。そしたらたまにメールするって言ってて……しかもサキちゃんとか名前で呼んでたし、」


「ちょっと待った。サキちゃんって誰ですか」


「え? かんちゃんの名前じゃないの?」


「違います。咲花(さな)です。咲に花でさなって読むの!」


 私の言葉に目が点になっている先輩。

 やっと状況が理解できたのか明らかに落ち込んでる。

 こんな先輩見たことない。


「うわー名前間違えられたー」

 面白くなって、わざと落ち込むふりをした。


「ほんっとうにごめん!」


「もういいですよ。何があったんですか?」

 

 そう聞いた私に事の経緯を説明してくれた。




 「はぁ……つまり、そもそも彼女以外の女の子とメールしてるかは聞いたけど、私の名前は出さなかったと。でも増田先輩の口から、さきって人とたまにメールするって聞いたから、私だと思ったってことですね」


「はい。そうです。すいません」

 そう言った先輩は耳をぺたんとして反省する犬みたい。

 敬語になってるし。

 

 ってかなんで、飯塚先輩に相談したんだ?

 増田先輩の彼女なら、直接本人に言えばいいのに。

 頭の中でぐるぐる考える。


……あ、そうか。わかったぞ。



「飯塚先輩のことが好きなんだと思います」


「え?」

 

「だってそうでしょ。そうじゃなかったらなんで彼氏じゃなくて先輩に相談するんですか」


「え? あーそういうことか。それはないよ〜あのふたり仲良しだし。なんなら俺がキューピッド」



 そう言って笑う先輩を横にますます謎は深まった。


 

 

 





 

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