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「おっはよーう!!」
みんなのテンション低い月曜日も、つむちゃんは元気だ。
「おはよう」
「練習試合どうだったー?」
「うん、大丈夫だったよ! 多分ミスってないはず。わかんないけど」
そう言って笑うと、つむちゃんも嬉しそう。
「心配してたから良かった〜変なのにも絡まれなかった?」
「あははっ! そんなの何もないよ〜」
「かわいいんだから、気をつけなきゃだめだよ! 約束!」
そう言って小指を見せてるつむちゃんのほうがかわいいでしょ。
「はい、約束!」
私たちは謎の指切りをした。
————楽しくない授業を終えて、お昼休み。
売店は今日も賑わっている。
……トントン。
誰かに肩をたたかれた。
振り返ると大沢くんと田代くん。
制服で会うことに慣れてなくて、ちょっと気まずい。
反応に困った私はお疲れって声をかける。
「優斗じゃーん!!」
つむちゃんが気がついてくれて、一気に場が和む。
「おっす」
「私のかんちゃんに何のようですかっ!!」
「いや普通に見かけたから、声かけようと思っただけだし」
「あたしのかんちゃんイジメたら絶対許さないから!!」
イケメン発言をして、私を隠すように前に立つ。
「そんなことしないわ!」
……まるで夫婦漫才を見ているようだった。
————午後の授業。
授業にも慣れてきて、毎日まぁまぁな課題が出されるようになった。
ため息をつく。
隣を見ると、つむちゃんと目が合う。
「終わる気がしないんだけど」
ほら、やっぱり同じこと考えてた。
わかるわかると言いながら深く頷いて、机に倒れ込む。
————気がつけば部活の時間になる。
他のクラスより授業終わるのが遅い私は、いつも後から合流。
「かんちゃん、お疲れ〜!」
遅くきても明るく迎えてくれる優しい先輩たち。
それからしばらく、練習試合のことを褒めてもらった。
「あ、そういえば、来週の水曜日から春季大会が始まるのね。うちは木曜日が初戦で……その日は公休扱いになるからジャージでグラウンド集合ね。2回戦以降はゴールデンウィークに入るよ」
ん? 来週?
公休ってつまり学校休むってことだよね。
授業はどうするの?
まさかの補習させられるパターンか?
「了解しました!」
頭の中のはてなを無視して、返事をした。
翌日、澤村先生に確認するとやっぱり補習があるらしい。
どんまい、私。
自分で自分を励ますしかなかった……。
——————それからあっという間の日々を過ごす。
火曜日の筋トレDayだから、マネージャーはお休み。
筋トレDay以外は授業からの部活、そして課題に追われるを毎日を繰り返す。
ただ、ありがたいことに部活中に課題をさせてもらうことができた。
これがほんっっっとうにありがたい。
クラスのみんなとも少しずつ打ち解けてきたし。
仲良くなった3人以外とも話すようになった。
それに野球部の先輩たちの顔と名前も一致してきたし。
昼休みとか校内で会うと、挨拶だけじゃなくて話しかけてくれる人も増えた。
入学してからまだ1ヶ月も経っていないのに大革命だ。
入学前には想定していなかった、高校生活を送っている。
そして、あっという間に4月最後の週を迎えた。
——————いよいよ春大が始まる。