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体育館でおこなわれる部活勧誘会。
椅子が片付けられていて入学式とはは少し違う印象を抱く。
建て直されたばかりの体育館はすごく綺麗。
バレーボールコート3面分の広さがあり、2階には観客席付きだ。
1年生は各クラス2列に並ぶ。
つむちゃんと話していると、前に座ってる2人が振り返る。
話しかけてくれたのは、学級委員の久保千帆さんと、黒髪ストレートでお姉さんっぽい印象の谷貝葵さん。
つむちゃんの提案でみんなそれぞれの呼び方を決めた。
私は久保さんのことを久保ちゃん。
谷貝さんのことを葵ちゃんと呼ぶことにした。
そしてふたりは、かんちゃんと呼んでくれることになった。
こうしてまた友達が増えた。
————アナウンスが入り、部活紹介が始まった。
吹奏楽部の演奏が体育館に響き渡る。
それから各部活ごと部活紹介という名の催し物が始まった。
真面目な部もあれば、謎の劇やコントみたいなことをしてる部活もある。
あきらかに先輩たちのほうが盛り上がっている。
最後に出てきたのはチアリーディング部。
アップテンポな音楽がかかり、軽やかなパフォーマンスで最後を締め括った。
各部活ごとのブースが設置され、私たちは自由行動。
部活に入る気がない私と。
すでに女子サッカー部に入部しているつむちゃん。
つむちゃんの希望で女子サッカー部のブースへ。
先輩たちはすぐつむちゃんに気がついて、こっちにきてくれた。
もうすでに先輩たちと仲良さそう。
つむちゃんを待つ間、数え切れないくらいのチラシをもらった。
ひとりでいると、どんどん話しかけられる。
もう何回ごめんなさいって言ったかわからない。
もはや何部に誘われたのかも覚えていない。
このときはまだ知らなかった。
まさか私は部活をすることになるなんて。
***
今日は待ちに待った体力測定!!
全学年授業なし。1日かけておこなわれる。
紺色ベースに学年カラーの水色のラインが入ったジャージはお気に入り。
高校生になって初めてポニーテールにして、気合を入れる。
まずは体育館で、長座体前屈からスタート。
それから、握力、上体起こし、反復横跳びの順番でおこなっていく。
「かんちゃん、がんばって」
現役で部活をしてるつむちゃんはずっと元気だ。
私を励ます余裕もある。
どうにか反復横跳びを終えて、体育館種目は終了。
靴を履き替えて、外に移動する。
————外は体育館より人がたくさんいる。
外種目はシャトルランからスタート。
時間的に午前の最後の種目。
テニスコートで走るシャトルラン。
周りには順番待ちという名の観客がいる。
周りを見たら負け。集中しよう。
最初はゆっくりと。
だんだんと早くなるリズムに合わせて風を切る。
ときより風を感じて、髪がなびくのがわかる。
疲れて辞めたい私と、目標を達成したい私が頭の中で喧嘩する。
「かんちゃんがんばれー!!!!!」
あれ? つむちゃんの声がする。
集中して走っていたせいか、全然気が付かなかった。
久保ちゃんと葵ちゃんと一緒に手を振ってくれてる。
結局、私は101回まで走り切った。
————お昼休憩を挟み、午後スタート。
とは言っても、私たちのクラスは立ち幅跳びの順番待ちから。
立ち幅跳びを終えて、次はハンドボール投げ。
苦手なんだよな〜。せめて7点取れますように。
……願いは届かず。
5点。しかもギリギリ。もはや投げた記憶もない。
つむちゃんはお腹を抱えて笑っていた。
————最後は50m走。
よーーーーーーーーい、ピーッ!!!!
笛の音とともに一斉に走り出す。
数秒の世界。実際の時間より、長く感じる。
呼吸を落ち着かせて、前髪を整える。
自分の記録用紙を記録用紙を受け取ったところで、つむちゃんが勢いよく走ってきた。
今さっき50m走ったばっかなのに元気。
「ね! 何秒?」
「うーんと、7.3秒だったみたい」
記録用紙を見て自分でもびっくり。
中学のときと大差ない結果で安心した。
「わー負けたあー! 早すぎかよ!」
結局、握力とハンドボール投げ以外は10点取ることができた。
私たちはふたりともAの結果で締め括った。
この後に、私の高校生活を変える出来事が起きなんて思いもしなかった。