表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

4 人質

『ドンッ!ガチャ、ガチャ……ちょっと、やめてっ、きゃーーっ! 』


「おっ、おいっ! ナツかっ? どうしたっ? 」


『カイくんっ、カイくんなのっ? 助けっ…プツッ……ツー、ツー、ツー』


「ナツっ! おい、ナツっ、聞こえるかっ!! 」


 つー、つー、つー。


 通話時間、ほんの十数秒。

 それでも、勇者が全てを悟るのには十分だった。


 廊下では、まだ、聖騎士団が実況見分を行っている。


 数瞬、動きを止めた勇者が、二三歩後ろへと下がった。そして、駆け出す。コンクリート製の手摺に手をかけ、ヒラリと飛び越えた。


「なっ!? なんということをっ!? 」


 それに気付いた大司祭が、青ざめた顔で手摺に駆け寄る。


 ここは四階だ。例え勇者であっても、飛び降りて無事な筈はない。


「きっ、きえたっ!? 」


 身を乗り出した大司祭が、狐に摘まれたかのような顔をして、そう叫んだ。





「……なんちゃって。くふふっ。

やぁった、やった、お祝いだっ! 」



 ◆◇◆◇



 ふ~~ん、ふ、ふ~ん、ふ~~ん♪


 ほっかほっかのお風呂上がり、私は美顔ローラーで顔をコロコロとしながら、ベッドの上でテレビを見ていた。


 金9のエンディングが流れ出す。

 今夜、カイくんは飲み会だと言っていた。そろそろ、家路に着く頃だろうか。


 スマホを取り出し、ココアトークを起動する。


『飲み会は、おわっ 』


 フリックし終わらないうちに、廊下で音がした。


「えっ? 」


 私のマンションは、オートロック式の3階。帰宅時に鍵をかけた記憶もある。


「気の所為よね? 」


 たまにある、家が軋む音、だ。





 バタンッ!


 視線を落とした瞬間、廊下と繋がるドアが勢いよく開け放たれた。


 咄嗟に通話ボタンを押した。甲冑姿の男達がなだれ込んでくる。

 110番を選ぶ余裕さえ無かった。





 テトタ、トロラ、トゥリンッ!

 テトタ、トロラ、トゥリンッ!


(早く出てっ! )


 祈ること、6コール目。

 男達に囲まれ、スマホを持つ手を掴まれた。


「ちょっと、やめてっ、きゃーーっ! 」


『おっ、おいっ! ナツかっ? どうしたっ? 』


 スマホの向こう側で、カイくんの声がした。


「カイくんっ、カイくんなのっ? 助けてっ! 」


 叫んだのも束の間、甲冑男にスマホを奪われる。


 クシャ


「うっ、嘘でしょう」


 そのまま、握り潰された。


「きゃ、もう、やめてっ! はなしてっ!! 」


 後ろ手に拘束される。

 周りの男達が、クローゼットや収納ケースを乱暴に物色し始める。




 どうやって、入ってきたのか。

 何が目的なのか。

 何処へ連れていかれるのか。

 何故、そんな格好をしているのか。

 どうして、そんなに馬鹿力なのか。



 何もかもが、不気味以外の何者でもなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ