16 主犯格は君自身
「──それでは、謎ときを始めるとしよう」
「ちょっと、待ってください」
男を、俺が遮る。
「そもそも、貴方は誰なんです。それに、この人たちは?
俺は何でここに連れてこられたんですか?王室の秘密を知ったから、ですか?
俺はどうなるんです?
というか、どうなったんです? 俺、死んでるんですか?生きてるんですか? 」
一度堰を切ったら、止まらなくなった。
「まぁ、落ち着きたまえ」
「どう落ち着けばいいんですかっ!? 俺は殺されているんですよ? 」
「君は、ミステリーによく有る2つの王道パターンについて知っているか? 」
「いきなり、なんです? 」
「よく吠える奴が一番最初に殺される」
「……だから、俺が殺されたと言いたいわけですか? ふざけるなっ!! 」
「王道のパターンを話したまでだ。
落ち着け。君の意志を尊重して、順に説明するとしよう。だから、座りたまえ」
興奮して立ち上がった俺に、男がうながす。
しぶしぶ従った。
男の態度は気に入らなかったが、怒り続けたって、埒が明かないのも事実だ。
「まずは、我々の自己紹介だったな。
私が、異世界を股に掛ける探偵、シャーロット・郷・ホームズだ。
そちらが、第一王妃殿下のさきこ様。その隣が、元異世界魔王のデスポザ。
そして、君の隣のソファで伸びているのが、元魔王の右腕のクレーマンだ」
「はぁ? 」
あまりにも濃い面子に、思わず変な声をあげてしまった。
「で、次。君がここに呼ばれた理由だったかな」
探偵は、俺に構わず続ける。
「それは、君がこの事件の被害者であり、重要参考人だからだ。それに、君自身も知りたいだろう。誰が君を殺したか、について」
「はぁっ!? そんなの、そこのハーフ顔の男でしょ! 俺、刺された現場まで見ていたんですから! 」
「確かに、実行犯はデスポザだ。しかし、彼をそこまで導いた主犯格が、この中に、いる」
「なっ!? 」
そこで、カットインが入った。
王姫の不安げな瞳。
デスポザの焦ったような瞳。
クレーマンのぐるぐると回る瞳。
俺の、怒りに満ちた鋭い瞳。
そして、探偵の不敵に笑った瞳。
「界人くん。私は、王道のパターンについて、2つあると、言ったはずだ。
もう1つ。それは、よく吠える奴が犯人であるパターンだ。
一之世界人、君を殺した主犯格は──君自身だ」