表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

15 謎解きは激務の後で

「あの……」


『只今っ、ちょうど只今っ!! 天王陛下をお乗せした柩が、エドゥサイユ宮殿から運びだされましたっ!

 ゆっくり、ゆっくりと、待機中の霊柩車へと── 』



 俺の声は、テレビのリポーターの声でかき消された。





「あーーのぉぉっ!! 聞こえていますかぁぁあーーっ!! 」


 奥の事務机でキーボードを、恐ろしい速さで打ちつけている男に、俺は叫び掛けた。


 ……が、此方を見向きもしない。





 金髪女を連れ出した俺は、女の運転する車で、寂れた事務所へと連れてこられた。


 1階が喫茶店で、2階が事務所という、よく見る造りのビルヂングだ。


 通りに面した窓には、『郷探偵事務所』というウインドサインが、これでもかと貼り付けられている。


「こっちよ」


 女が建物の右隣に設えられた階段を登っていき、奥へと消えていった。


 慌てて追いかけた結果、俺は──放置された。





 女は居ないし、男は無視する。それはもう、まるで、俺の存在など無いかのような振る舞いだった。


 最初はソファーで、大人しく我慢もした。


 しかし、それも限界だ。遂に、俺は男の指を止めるべく、立ち上がった。





 ガチャッ。


 正にその時だった。右奥の扉が開いたのは。





「いらっしゃい」


 女がドレスの端をもち、優雅に挨拶をする。狭さなど微塵も感じさせなかった。





「ほっ、 ホンモノっ!! 」


 俺は叫んでいた。


 女は女でも、俺が知っている女ではない。


 いや、逆によく知っている女……女性とも、言えた。テレビではよく見ることがあったし、実物とも、一度謁見を果たしている。


 オシャレに結われた艶やかな黒髪と、猫を思わせる大きな黒い瞳。すーっと、通った鼻梁に、ぷっくりとピンク色の小さな唇。


 誰がどう見ても、第一王姫その人だった。


 「えっ…… 」


 その後ろを着いてきた巨漢をみて、さらに言葉を失った。


 キラキラと輝くオールバック風の長い銀髪。

 切れ長の目は日本刀のように鋭く、鼻はエベ レスト級に高い。

 そして、薄い唇に、細面の輪郭。


 頭部に角が無いことと、肌の色が肌色であることを除けば、鏡の中で見たハーフ男その者だった。何時ぞや見た、カーキのチノパンにシロTというスタイルだ。


「……これで、役者はそろった、か。

2人は空いている所に、座ってくれ。

お忙しいところ、お集まり頂き──っと、忘れるところだった。」


 やっと視線をこちらに向けた男が、徐に、デスクの引き出しを探る。


「よっっと」


「俺様をこんな目にあわせて、デスポザ様が復活された暁、なっ、何をする──ぎゃーーーっ!!」


わーわー騒ぐ何かが飛んでくる。

ぽふんっ、と音を立て、俺の隣のソファに頭から突っ込んだ。


胴体を紐でぐるぐる巻きにされた、小さいピエロだった。目を白黒させ、頭の上に星を浮かべている。


「──それでは、謎ときを始めるとしよう」


 顔の前で手を組み直した男が、ニヤリと口角を釣り上げ、不敵に笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ