第9話 学年のマドンナの用事
また明日。
あの地獄の様な雰囲気の教室から退避した俺達は、こりもせず屋上にやって来ていた。
屋上は落ちてた鍵のスペアキーを作って勝手に開けているので、俺以外誰も来ない。
まさにこう言った目立つ人と話す時にはうってつけの場所と言うわけだ。
そう———俺しか入れない……その筈なんだけど何故か柚も持っている。
それも原キーを。
謎が深いね。
何故かとても気になるが、何か嫌な予感がするのでやめておく。
時には知らない方がいいこともあるのだ。
「———それで、一体姫野さんは俺に何の用で……?」
「ん、早く、答えろ。私の時間を奪った罪は重い、ぞ」
「おお……知り合いなの2人?」
「ん、初対面」
「……初めて話しました」
「何様ですか貴女」
「ん、私様」
「馬鹿言ってんじゃないの」
何故か腕を組んで不遜な態度で柚が言うので、取り敢えず失礼だし額にデコピンでもして黙らせておく。
「んてっ」
「少し姶良は黙ってなさい。今は俺と姫野さんとのお話なの。姶良はあっちで弁当でも食ってて」
多分柚がいると姫野芽衣が何も言わないと思うし。
しかし、そんな俺の言葉を受けて尚、柚は一向に動こうとしない。
何なら弁当すらも受け取ろうとしない。
「やだ。私も、聞く」
「だめ。姶良は何するか分からないから」
「……」
少し不機嫌そうなオーラを出して弁当を受け取ると、少し離れた場所に移動した。
俺は気を取り直して姫野さんの方に意識を向ける。
俺達のやり取りをみて目を何度も瞬きをしているが……やはり学年のマドンナと言われるだけあり、柚に負けず劣らずの美少女だな。
柚は女子にしては少し高い方だが、マドンナは逆で少し小さかった。
身長は約158センチくらいで、見た目は柚の方が大人っぽい。
まぁ精神的には圧倒的に姫野芽衣の方が大人っぽいけど。
「それで……俺にどんな用事があったの?」
「えっとですね……2つありまして……取り敢えずはこれです」
姫野芽衣はそう言うと、ポケットから俺の生徒手帳を取り出した。
「ありがと……あれ? 何で姫野さんが持ってるの?」
「その……こ、告白された時に落とした様でして……」
え……そんなどっかのラブコメみたいなベタなことする?
いや俺が落としたんだろうけどさ。
「ん? でも落としたのって金曜日だよな? 今水曜日だけど……」
「あ、それはですね……月曜日はそもそも学校をお休みになられていたと先生から聞きましたので」
あ、俺があまりの行きたくなさにサボって居た日ですね。
ごめんなさい。
「でも昨日は学校行ってたぞ?」
「昨日は昼休憩と放課後にクラスに行ってみたのですが居らず……」
あ、昨日は昼休憩も放課後も授業終わりと同時に教室出ましたね。
「———何度もクラスに来させて本当にごめんなさい」
「い、いえ! 全然大丈夫ですよっ!」
おお……彼女は見た目だけでなく性格までいいのか……!
どっかの弁当勝手にとったり、ゲームで容赦なくボコボコにしてきたりする無口美少女とは違うな。
俺がそんな風に思いながら柚を見ると、『私、ゲーム格安であげるけど?』と言う意思の篭った瞳でガン飛ばされた。
柚にも謝っておいた。
———では気を取り直して。
「2つ目の相談って?」
俺がそう言うと、姫野芽衣の顔が露骨にぎこちない表情に変化する。
しかし直ぐに取り繕う様に言った。
「学校で私と姶良さんに佐々木君が告白したという噂が流れているじゃないですか」
「うん。自分が悪いけど過去一大ダメージを食らってる噂と言うか事実ね」
ほんと、何で皆知っているんだろうね。
柚は流してないって言ってたし、今話してみたけど姫野芽衣も流しそうな人じゃない。
何て思っていると、彼女の口から予想外の言葉が出てきた。
「それ———私を最近ストーキングしている人が流したのかもしれません」
…………え、ヤバくね?
……流石に反応の仕方分からんですわ。
俺も柚も姫野芽衣の衝撃的な一言に完全に動きを止めてしまった。
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