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第5話 1日で二大美少女に告白した男

夕方も上げる。

 ———次の日の朝。


 俺はさながらゾンビの如くふらふら足元がおぼつかないといった感じで登校していた。

 目元に濃い隈が出来るほど寝不足なのもあるが……。

 

「くそぉ……何でガチでゲーム全部ぶっ壊してんだよ……それはないだろぉ……」


 昨日、俺の愛するゲーム機もカセットも何もかもが、全部真っ二つにされてゴミ箱に捨てられていたのだ。


 あの時は流石の俺も、驚きと絶望で意識が遠のいて気が付けば気絶してたね。

 それでその後過去一の母息子喧嘩で普通にバトった。

 まぁ俺がボコボコにされたけど。


 そんな中、俺はふと見覚えのある集団を見つけ、怒りが再燃する。

 更に、奴らが……俺との約束を破って勝手にリア充となった我が元友達とその彼女達が手を繋いでイチャイチャしている姿が俺の目を腐らせる。


「あのクソ裏切り者共め……公共の場でイチャイチャすんなよ腹立つなあ!」

「ん、同意見。家でやれ」

「やっぱりそうだよなぁ! しかも友達で唯一の非リアである俺の目の前……で…………もうビビらないぞ」

「ん、おはよ」


 しれっと俺の隣に立ってナチュラルに会話に入り込んでいた姶良柚が挨拶してくる。

 何で此処にいるのだろうか、と思うが、多分訊いても答えは返ってきそうにないので諦めてあの裏切り者共を早足で追い抜かして先に進む。

 すると若干息を切らした姶良柚が相変わらずの無表情で口を開いた。


「ん、早い。私、女」

「だから待てと?」

「違う。もう少し、ゆっくり」


 えぇ……真後ろに裏切り者共が居るんですけど……普通に逃げたいんですけど。

 

 しかし、念願の彼女を手に入れモテるためには、こう言った些細なことから直していかないといけないのかもしれない。

 俺は仕方なく姶良柚の歩幅に合わせて僅かに速度を緩める。


「ん、よき」

「めちゃくちゃ上からだなおい」

「私、えーたより、ゲーム上手い」

「ぐ……」


 姶良柚が無表情ながら胸を張ってドヤる。

 対照的に俺は、実際に昨日様々な種類のゲームでフルボッコにされたので何も言い返せない。

 

「ん、私が上」

「たかが昨日ゲーセンで全勝したくらいでいい気になるなよ! 俺だって自前のゲームなら負けないわい!」

「あるの?」

「…………」


 昨日全部ぶっ壊されたんだよな……ああ……折角忘れてたのに自分から思い出してしまうなんて……。


 俺が本気で落ち込んでいると、姶良柚が仕方がないと言った風に肩に手を置いて言った。


「今度、格安で売ってあげる」

「おおマジか!? 因みに何があるんだ?」

「Sw◯tch、P◯5、S◯S、ゲーミングパソコン」

「全部あるのかよくださいお願いします!」

「ん、全部2000円でよき」

「おお……貴女は神であったか……」

「ん、もっと、崇めろ」

「ありがとうございます姶良様ー!!」


 よし、そのうち姶良教でも作るか。

 教祖は俺で、崇めるのは姶良柚様……めちゃくちゃ流行るな。

 多分学校の男子の8割くらいは入信間違いなしだろ。


 俺がそんなくだらないことを考えていると、ふと自分に向く周りの視線がいつもより多いことに気が付いた。

 同時に先週の金曜日にしでかした一件を思い出して即座に合点。


「ねぇ、アレって姶良さんと姫野さんに同じ日に告白してフラれた奴でしょ? 何で姶良さんと一緒に居るんだろう?」


 俺のことをアレ呼ばわりするなアレと。

 そんな貶さなくても良くない?


「あ、そうだね。と言うか1日で2人の女子に告るとか有り得なくない? と言うかフラれてるのに付き纏うとかキモいね」

「確かにー!」


 ……貶されても文句言えねぇわ。

 確かに側から見ればただの軟派な奴だ。

 後、普通に俺が付き纏われている側です。


「……着々と広まってるなぁ……悪い方に。もう帰りたいよ……」

「帰るな。私、暇」

「いやそんなの知らな———」

「ゲーム」

「よし、今日1日頑張るか!」


 俺は様々な視線に耐え、辛いであろう1日に心を砕かれながら学校へと登校した。


 因みに姶良柚は、隣で俺をボロクソ言ってた女子達を何故かジッと見つめていた。




「……ん、とても不快」


 

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― 新着の感想 ―
[一言] ゲーム機まで真っ二つにするとは、躾というよりただのDV……。まるで高◯ちさ子のような……。
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