第42話 我が家族と二大美少女①
昼の分をあげられなくてすいません。
インターネットが終わってました。
「———3日間お疲れ様!」
神山朝陽の掛け声と共に、クラスメイト達の歓声が教室中に響き渡る。
その言葉の通り、無事文化祭は3日間の開演を終え、幕を閉じた。
まぁ正直文化祭では天国と地獄を同時に味わったが……うん、2つの意味で心に残る文化祭だったな。
主に思い出とトラウマに残るね。
俺が昨日のお化け屋敷のことを思い出して再び震えていると、神山朝陽が面白いことを言い出した。
「佐々木君、俺達と一緒に打ち上げに行かないかい?」
まさかのお誘いに思わず目を瞬かせる。
同時に気になることもあった。
「俺達、と言うのは……?」
私的に、ここはマジで重要中の重要。
だってあの西園寺とかと一緒に打ち上げなど行けたものでもないし、そもそもアイツとはもう関わりたくもない。
そんな意味も込めて訊くと、神山朝陽は困った様に笑みを浮かべて頬をかいた。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。打ち上げは俺と雅人と翔平の3人だけだから」
流石生粋の陽キャ、神山朝陽。
このクラスでの俺の立ち位置がよく分かっているじゃないか。
正直このクラスの男子ならまだしも、女子なんてここ1ヶ月くらい全く話してないもん。
「どう? 一緒に行かないかい?」
「お、瑛太も来るのか!? それならカラオケ行こうぜ!」
「偶にはいい案出すねぇ翔ちゃん」
「偶にはじゃねぇよ! 俺は常にいい案出してるわ!」
秋原翔平がそう吠えると、神山朝陽と矢上雅人がけらけらと笑う。
中々に良い雰囲気で、最近全く男子と遊んでいないことも考慮すれば、ついて行っても良いかな?
コイツらならそもそも嫉妬とか買われそうにないし。
俺がそんな考えに至り、口を開こうとした瞬間———俺のスマホが突然震え出す。
同時に俺の全神経が、この電話に出れば確定打ち上げには参加出来ないと警鐘を鳴らし始めた。
いや……まだ恐れるのは早い。
これで我が家族だったら無視すればいいだけだ……。
俺はそう自分の心に言い聞かせてから、そっと画面だけ見て、誰からの電話か確認すると———意外にも柚のL◯NEからの電話であった。
取り敢えず電話に出るために、3人に言って席を外すと、トイレまで駆け込んで電話に出だ。
———この後、電話に出たことを後悔することになるとも知らずに。
「もしもし? 柚?」
『ん、えーた、今からえーたの家行っていい? めいも一緒』
「…………は? ごめん、もう1回言ってくれない? 俺の耳が腐ったかもしれん」
俺は柚の突然の言葉に驚き、思わず自分の耳を疑い、聞き直してしまった。
しかし柚の口からは先程と同じ言葉が述べられる。
『ん、えーたの家にめいと一緒に行っていいかって言った』
「聞き間違えじゃなかったんだねあーやばいぞこれは」
俺はここで電話に出たことを後悔する。
ここからは完全に俺の仮説なのだが、おそらく柚が俺に電話したのは、俺の家族の内誰かが柚と連絡先を交換して呼んだからだと思われる。
幾ら何でも突発過ぎるからな。
流石の柚でも男の家に上がろうとは……流石に言わないよな?
少し言いそうなんだが。
「ねぇ柚……もしかして俺に拒否権は……」
『ん、ない。みずきからL◯NE来た』
「うん、だよねぇ……」
俺はあまりにも予想通り過ぎて、全く驚きもしなかった。
『後、お兄さんが「バックれるなよ? やったらお前の黒歴史バラすからな?」って。黒歴史、私も興味ある』
「よし兄貴にすぐに行くと伝えてくれ。2人とはどこで合流したらいい? あと、死んでもお前に黒歴史は教えん」
『ん、正門で待ってる』
「了解。超速で向かうわ」
黒歴史を人質に取られた俺に、もはや断ると言う選択肢など欠片も存在しなかった。
「あぁ……最悪だ。絶対に怠いやんか……」
俺は怒る気力も湧かず、半ば諦めモードで打ち上げを断るべく教室に戻った。




