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第41話 お化け屋敷

「…………遂に来たよお化け屋敷。何だよこの本気感プンプンな外見……本当に俺達と同じ構造の教室か? 教室感ゼロなんだが?」


 俺は、全身鳥肌がエグい程立っているのを自覚しながら、ただただ3年5組のガチさに圧倒される。

 教室の扉は取り外され、血文字で『お化け屋敷』と書かれている暖簾(のれん)が掛かっていた。


 いや……結構ヤバいと覚悟してたけど……想像より3倍ガチですやん。

 一体何処で手に入れたんその暖簾?

 血文字は誰が書いたんや?

 ここまで来ると、思わず関西弁になってしまう程、別の意味でツッコミどころ満載過ぎて草も生えんわ。


 しかし、恐れ慄く俺とは対極に、女性陣の2人はキラキラと瞳を輝かせていた。


「ん、楽しみ。ワクワクする」

「私は初めてお化け屋敷に入りますが、とても楽しみですっ! どんなお化けが出るんでしょう?」

「おお……女性陣が予想外に頼もし過ぎて俺困惑」

「ん、えーたはビビりすぎ」

「いやこれが普通だからな? け、決して俺がビビりだからとかじゃないと思うぞ? それに目の前の光景見て間違えても柚みたいに楽しみとかいう奴は少ないと思うぞ?」


 柚が大変不名誉なことを宣うので、優しく丁寧に教えてやるが……柚は俺の言い分を軽く鼻で笑い飛ばしやがった。


「ん、違う。えーたがビビりなだけ」

「だからビビリじゃないって。これが普通! 一般的! 平均なの!」


 俺はめちゃくちゃビビりではあるが、柚の前でそれを認めてしまえば、後に物凄く弄られそうな予感しかしないので、何とか汚名返上したい所だ。


「ならこのお化け屋敷でビビらなければいいんだ!? これで俺がビビらなかったら覚えとけよ柚!!」

「ふっ、望む所。どれだけ耐えれるか楽しみ。私の予想は15秒くらい」

「15秒だと? あまりにも俺を舐め過ぎではないかな?」

「ん、妥当」


 コ、コイツ……明らかに俺のことを馬鹿にしてやがる……ッ!

 いいだろう……何か柚の思惑通りに進まされている気がしなくもないが、とっととこのお化け屋敷に入ってビビリであることを隠し通してやるわ!


「いざ行かん———お化け屋敷へ!」


 俺は威勢よく第一歩を踏み出した。




「———ん、やっぱりえーたはチョロい」

「……少し可哀想ですね……こうでもしないと入らなそうだったので仕方ないのかもしれませんが……」


 案の定全てが柚の思惑通りだとは気付かないまま。








「———ひぃいいいい!? 注射器が動い———来んなこの野郎! お、やんのか!? 注射器如きが人間様に歯向かおうってのか!? ———ごめんさない怖いのでどうかあっちに行ってくださああああああああ!? 助けて下さい柚様芽衣様! 何でもしますッ! 無理! このお化け屋敷ガチで無理なんだがぁああああああッッ!?」

「「…………」」

 

 俺がお化け屋敷と言うなの廃病院と化した教室に入ること25秒。

 意気揚々と入ったはいいものの、様々な高度な驚かせポイントに掛かり、既に何十回と驚いては、その内の数回は腰が抜けそうになっていた。


 何なら最初に驚いたのは入って1秒も経たず、それもお化けでも何でもないルール説明している人を見た時である。

 それからは恐怖の連続で、そろそろ声も枯れそう。

 

 そして今は、あまりの怖さに柚と芽衣の後ろに隠れ、ガッシリと腕を掴んでいることしか出来ない。

 これではもはやどっちが男でどっちが女か分からないな……などと思いながらも、それを気にする余裕は今の俺になかった。


 更に俺のビビり具合は、どうやら柚の予想の斜め上だったらしく、申し訳なさそうに———


「…………ん、ごめん。調子に乗りすぎた」


 いつもちっとも謝らない柚がガチ謝りをしては身体を支えてくれると言う事態へと発展した。

 それだけでは無く、お化け屋敷初心者であるはずの芽衣も———


「わ、私が身体を支えておきますので、あと少し頑張りましょう? 大丈夫です。私達が側にいますから……」


 と優しい言葉を掛けてくれながら柚と一緒に身体を支えてくれるまでに至った。

 仮にこれが素面な状態であれば、2人から押し付けられるパイ乙に鼻の下をだらしなく伸ばしていただろう。

 しかし、今はただ只管(ひたすら)に隣に誰かがいることが分かり、安堵しか出て来なかった。


 それから四苦八苦しながら何とかお化け屋敷を出た時には———


「あ、あぁ……空が明るい……」


 俺は完全に放心してしまっていた。

 お化け屋敷は、今まで2人の美少女を独占していたバチが当たったのだろうかと疑いたくなる程の怖さだったとだけ言っておこう。

 

「…………次からはえーたをお化け屋敷に連れてくのは止める」

「そうですね……物凄く悪いことをしたきがします……」


 放心する俺の横では、美少女2人の反省会が同時に行われていた。


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