第38話 メイド喫茶最高(一部を覗いて)
「ご、ご主人様、御注文はお決まりになりましたか……?」
「ん、ご主人様達には、私達が色々とやる。遠慮しなくていい」
未だ恥ずかしさが抜けず若干頬を朱に染めている芽衣と、全く恥ずかしがらず、何故かベテランの風格を出す柚。
そんな対照的な姿も、俺達オタクには非常にグッと来る。
「お兄ちゃん……さてはここ天国だね?」
「よく分かったな我が妹よ。此処は正しく天国だ。永遠に此処で住みたい」
「ん、バカ言ってないで決める。あと、普通にキモい」
「おい! 今シンプルな罵倒が聞こえたぞ! まぁメイドさんから罵倒されるのは一種のご褒美だがな。ありがとうございます!」
俺が全くのノーダメージ……それどころか逆に喜んでいるのを見た柚は、『流石えーた。キモさに限界がない』などと言って軽く引いていたが……うん、見ていないことにしておこう。
「お兄ちゃん、何頼む?」
瑞稀がキラキラと瞳を輝かせながら訊いてくる。
俺はそんな瑞稀とメイド達から視線をメニュー表に移す。
そこには安いので数百円のものから、2,000円程度のものまで結構色々なものが売っていた。
学生の出し物なのに結構充実してるな……まぁ大方、2組の男子がめちゃくちゃ頑張ったのだろう。
本当に2組の男子には感謝しかない。
「そうだな……やっぱここは『萌え萌え付きオムライス』一択だろ」
俺はこのメニュー表で1番高い、オムライスにケチャップで絵を描いてくれる&『萌え萌えきゅん』のおまじないを掛けてくれる奴を頼む。
そう言えば、会計時に運が良ければチェキが撮れるらしいが……まぁそれは諦めよう。
1日目は誰も当たらなかったらしいしな。
「お兄ちゃん———分かってるね」
「だろ? やっぱメイド喫茶と言えばこれしかないだろ」
「うん! 私も同じにしよーっと!」
「———ってことで『萌え萌え付きオムライス2つお願いします」
「はいっ! 少々お待ち下さいっ!」
「ん、お待ち下さい」
2人はそれだけ言うと、厨房担当の下へと去っていった。
「———お待たせしましたご主人様っ! 『萌え萌え付きオムライス』ですっ!」
「です」
十数分後、軽く瑞稀と雑談をしている最中に芽衣と柚が、それぞれオムライスを持って戻って来た。
そのオムライスは普通に見た目も匂いも美味そうなのだが……此処で1つ問題がある。
作っていたのが———全員男子なの。
いや、生徒がやる文化祭の出し物だし、女子は殆どがメイドになっているから当たり前なのだが、もう少し隠そうとは思わなかったのだろうか?
めちゃくちゃ待ってる間に見えるんだが。
何なら俺達が座ってる席は男子生徒達が汗をかきながら作っている一部始終が完璧に見えてしまっている。
「何か一気に現実に戻された気分だよ……」
「言うな瑞稀……これが学生の限界だ……ただ店のよりオムライスが美味そうなのは普通にバグだろ」
男子達の手捌きエグかったぞ。
神業といっても過言ではなかったわ。
俺がそんな事を考えていると、柚と芽衣は持って来たケチャップを取り出した。
「それではケチャップをかけさせて頂きますね?」
「ね?」
「おい柚、最後だけ合わせとけばバレないみたいなこと考えてんだろ」
さっきからめちゃくちゃ気になってたんだよな。
ただ柚は、俺の言葉をガン無視して、俺のオムライスの右半分に『ハートの中にえーた』の文字を書くと、今度は芽衣と柚が移動して芽衣が左半分に『ハートの中に瑛太君』の文字を書いてくれた。
そして遂に———この時がやって来た。
2人はケチャップを仕舞うと、芽衣が少し恥ずかしそうに言った。
「そ、それでは私達から、美味しくなるおまじないを掛けさせていただきますっ」
「「いぇーい!」」
俺達のテンションも最高潮に達する。
そんな俺達の前で、芽衣と柚がとびきりの笑顔で(柚は営業スマイル)言った。
「「美味しくな〜れっ。美味しくな〜れっ。萌え萌えきゅんっ」」
……………………。
俺も瑞稀も2人のあまりの可愛さと尊さに尊死した。
それと余談だが、オムライスは美味しくいただきました。
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