第31話 文化祭前って告白増えるよね
「———ちゃんと買えましたっ! 私のメイド服っ」
姫野さんの衝撃的な発言から1日経った昼休憩。
いつも通り3人で食べていると、姫野さんがやたらハイテンションで報告してきた。
「おーおめでとさん。どうだった? 身体に合う奴あった?」
「いいえ! なかったので特注品を発注しましたっ! 大分高かったので私は大丈夫と言ったのですが……クラスの男の子達がどうしても、と言うので……」
ナイスだ2組の男子達よ。
お前らの頑張りのお陰で学年屈指の美少女のメイド服が拝めるぜ。
俺が内心ガッツポーズを決めていると、突然柚が弁当を食べるのを中断して、立ち上がるではないか。
普段は食べ終わるまで頑なに動かないと言うのに。
俺は驚いて柚に問い掛ける。
「ど、どうしたんだ柚……!? ぐ、具合でも悪いのか……!? 何なら一緒に保健室行ってやるぞ?」
「ん、えーたが私をどう思ってるかよく分かった。後でけちょんけちょんにする。ゲームで」
「うわっ……しれっと自分の得意なことで勝とうとしてくるやん。ガチさが伝わってヤダわぁ……」
「……覚悟しとけ」
柚は俺を睨んでそれだけ言うと、屋上から去っていった。
2人になった屋上で姫野さんが呟く。
「……行っちゃいましたね……」
「ところで柚の奴、何処に行ったんだ?」
さっきは驚きで忘れてたが、柚に用事があること自体珍しいし、俺達以外の用事があるとはあまり考えにくい。
だって俺並みのボッチだし。
と言うことは———
「———告白か」
「そうだと思います。私も最近増えていますので……あ、も、勿論断っていますよ!」
「うん、わざわざ言わないでも大丈夫。彼氏出来たら此処に居ないから。それに……うん、男子達の考えている事が手に取るように分かってしまうのが辛いわ」
大方、文化祭で一緒に回りたいと思って告白するか、今の時期皆浮かれてるからワンチャンいけると思って告白するかのどちらかだろうな。
まぁ2人は安定の絶対に無理だと思うけど。
「因みに……姫野さんは、今日の放課後呼ばれてるんじゃないの?」
「はい……実は呼ばれています。勿論断るのですが……毎回断るのも心に来ると言いますか……少し罪悪感が……」
そう言って不恰好な笑みを浮かべる姫野さんの姿に、俺はついつい思ったことが口に出てしまった。
「いや———罪悪感なんて感じなくてもいいだろ」
「…………えっ?」
姫野さんが少し目を見開いて驚いた様に俺の方を見た。
さながら、初めての考えだと言う様に。
「で、ですが……」
「だってさ、告白って言うのは、告白する側の勝手だろ? 自分が付き合いたいから告白するのであって、相手の気持ちは大して考えずに、ただひたすらに自分の気持ちを押し付けてるだけなんだから」
「そうですけど……相手も勇気を出して……」
「いや、勇気を出すのはあくまで自分の利益になるからだろ? 別にソイツが勝手に告白するのに勇気を出したって、所詮はソイツのことじゃん? わざわざ姫野さんが心を痛める必要はないんだよ」
「そう、なんですかね……?」
姫野さんは、それでも完全に納得いっていない様で、未だ顔色は芳しくない。
そこで、俺は最終兵器を投入した。
「それに———告白する側からすれば、自分勝手に告白したのに、そうやって申し訳なさそうにされるとダメージ強くなるんだよ。どうせならスパッと言って欲しいって俺なら思うね」
実際、柚の時は大して心にダメージは響かなかったが、姫野さんの時は心に大ダメージを喰らわせられた。
逆に自分のせいで考え込んじゃって申し訳ない的な感じ?
「逆に告白してきた側がキレてきたら噂でも流せばいい。姫野さんの影響力は学校随一だからな」
「流石にそれはしませんよっ! ですが———ありがとうございます、瑛太君。お陰で少し気分が楽になりました」
「おう、それはよかったよかっ———ん?」
今何て言った?
俺のこと……下の名前でお呼びしたかい?
「ど、どうかしましたか……?」
「いや……俺の名前……」
俺が少し吃りがちに言うと、姫野さんは少し恥ずかしそうに口を開いた。
「と、友達なのに苗字呼びと言うのは少し距離を感じると言いますか……柚ちゃんも下の名前で呼んでいるわけですし……迷惑でしたか……?」
おい、潤んだ瞳で悲しそうに言われると、迷惑なんて言えなくなるじゃないか!
まぁどうせ俺はそんなこと絶対に死んでも言わないけど!
「ま、まぁ俺は下の名前で全然構わないと言うか……寧ろ嬉しいまだあるし……因みに俺も姫野さんのこと下の名前で呼んだ方がいい?」
「はいっ! 是非とも下の名前で呼んで貰いたいですっ!」
姫野さんは、先程とは表情を一変させて嬉しそうに、そして期待の篭った瞳を此方に向けて頻りに首を縦に振る。
流石にそこまで期待されたら呼ばないわけにもいかないわけで……。
「…………芽衣さん……?」
「出来れば『さん』付けなしでお願いしますっ!」
「………………芽衣……」
「はい、芽衣ですっ。瑛太君———これからも宜しくお願いしますね?」
上目遣いで笑顔を浮かべながら言ってくる芽衣に、俺は陰キャらしくただただ頷く事しか出来なかった。
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