第21話 3人で登校(死ぬ気しかしねぇ……)
また明日。
次の日の朝、俺の身に起きたことを端的に話そうと思う。
———腰が抜けた。
俺は朝起きて腰が抜けた。
人生で初めて腰が抜けたかもしれん。
理由は、今尚俺のスマホに何度も送られてくるL◯NEのせいである。
《芽衣:今日、一緒に私も登校したいです!!》
《ゆず:OK》
《ゆず:子猫がOKの文字を掲げているスタンプ》
《芽衣:ありがとうございます!》
《芽衣:因みに何時に集合とかあるのですか?》
「———おい、遂に学年の美少女2人と登校するのか……!? 夢だよな? 流石にこれは夢だよな……!?」
何度読み返しても全く変わらないL◯NEのトーク画面を眺めながら、頻りに頭を壁に打ちつけてみるも、残念ながらとても痛い。
どうやらこれは現実の様である。
「———って集合時間あと10分じゃん! やべぇ急がねぇと……!」
くそッ……もっと早く此処が現実だと気付いていればこんな事にはならなかったのに。
俺は超速で、顔洗って歯磨きして口臭ケアして制服着て外に出る。
これに掛かった時間———7分。
そして集合場所まで走って5分。
「———全然間に合わんじゃんかくそったれが!!」
それでも俺は、なるべく早く到着するために全力疾走で目的地へと急行した。
「———と言う事の次第ですね、はい」
「ん、馬鹿」
「何も言えん」
「えっと……し、しょうがないんじゃないですかっ!?」
「うん、姫野さんのその気遣いで心が癒されるわ……」
「ふぇっ!? い、いきなりそんな……」
今日朝会ったことを2人に話すと、案の定俺の予想通り、柚は俺を馬鹿にし、姫野さんは優しくカバーしてくれた。
まぁ今回ばかりは完全に俺が悪いので、責められるのも当たり前なのだが。
実際、俺は集合時間に数分遅れた。
俺が集合場所に着く時には、既に2人とも居たので、速攻で謝った次第である。
「ん、もう良いから行こ」
「そうですね。誰しも失敗はあります。次から気を付ければ良いのですよ」
「うっす……肝に銘じます」
いやでもさ……普通夢だと思うじゃん。
起きた瞬間に3人で登校しようとか書いてあったら誰しもが夢を疑うぞ。
あとさ———
「———どうして俺を挟むんですかね? 正直物凄く落ち着かないんだけど……」
俺の両隣りを歩くのやめません?
せめて2人が隣同士で俺がどっちかの横の方がまだ落ち着くんだけど。
「俺いつ刺されるか分かったもんじゃないんだが?」
「ん、知らない」
「知らない!? 友達なら少しくらい友達の身体を労われよ!」
「私もこのままでいいと思いますっ!」
「姫野さんまで!?」
神よ……俺の味方は居ない様です。
俺は何故か強情な2人に困惑しながらも、仕方ないのでそのまま学校に向かう。
ただ、この2人に挟まれた状態が完全に両手に花なので、正直周りの目が痛くて仕方ない。
それも生徒だけじゃなくて、道行く通行人にも三度見されるほどだ。
まぁ……2人はそこらのアイドルとか女優より断然可愛いし、二度見するのは分かる。
ただ———最後に『何故お前が美少女の間に?』的な視線はやめて頂きたいのだが!
俺だって知らねぇもん!
「ん、えーた挙動不審」
「一体誰のせいだと……もうツッコむのも疲れたよ……」
俺は周りにウチの生徒が増えて来たのを見ながら、コレからまた新しい噂が飛び交うんだろうなぁ……と思った。
主に俺の評価を下げる感じの噂がね。
「そう言えばさ、急に話変わるけど2人はファンクラブって容認してんの?」
俺はふと昨日の放課後聞いたファンクラブについて2人に訊いてみる。
俺があまり友達がいないからかもしれないが、2人のファンクラブがあるなんて全く知らなかった。
2人が知っているならどんな感じのものなのか知りたいと思ったのだが———
「ファンクラブ、ですか……? 初めて知りました。そんなのが高校生の中でもあるのですね……。私はてっきりアイドルとかにしか居ないのかと」
「……あれ?」
「ん、知らない。私は、容認してない」
「…………んん?」
ならどの名分で告白した人を襲ってんだ?
もしかしてただの独りよがり的な?
え、そんなの集団的なストーカーやん。
俺は前回のストーカーがあと数十人いると考えて背筋が凍り、引き攣った笑いしか出てこない。
「はは……俺、2人から離れないでいよ」
「ん、それがいい」
「はいっ! 3人で一緒に居ましょう!」
ああ……美少女に一緒に居ようと言われるなんて嬉しいなぁ……。
まぁそれのせいでこんな事態に陥っているんだけども。
あっ…………2人が居ない教室はどうしよ。
俺は頭を抱えた。
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