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一か八かのバレンタイン〜社内恋愛〜

作者: 瀧 ゆきの

こんな大胆なアクション起こせるんだって


自分でも驚くほど。


今日という日に勇気をもらって。



     ◇


あなたは見た目も中身もパーフェクトって


社内の仲間で噂してた。


一年前に彼女と別れたらしいって他の先輩から聞いた。




クレーマー対応が上手くできなくて、


言葉が出なくなった時、


庇うようにフォローに入ってくれたね。




上司からお叱りを受けて落ち込んでいる時、


飲みに誘ってくれて励ましてくれたよね。




二人きりの書庫で書類の整理をしてる時、


距離が近くてドキドキしてしまったの。


     ◇




自分で言うのもなんだけど、


可愛いね、なんて街で声をかけられたこともあるし、


性格だって面白いよね、ムードメーカーだよねって


友達からも言われてるから、


あなたを飽きさせない自信はそこそこあるの。


でも、


職場の後輩から告白されたら困るよね。


上手くいっても、ダメだったとしても、


大変で気を遣わせるよね。




あなたが同じ職場でなければよかった。


あなたが笑いかけてくれる度に胸が苦しくなる。




長い間悩んだ苦しさから解放されたくて


この日に背中を押されて気持ちを伝えることにしたの。


自分勝手かな?


でも思いを断ち切るために、思いきり振られたいし、


もしもの可能性に賭けてみたい。




あなたのデスク。席を外してる。


あなたへ渡す仕事の書類にこっそりメモをつける。


「渡したいものがあります。

 昼休みになっても席に残っていてもらえませんか?」


昼休み、社員達は各々食堂や外へ食事に行く。


事務所に誰もいなくなる、この時がチャンス!


何気ない顔でメモ付きの書類を


裏返してあなたのデスクに置く。


私は有給消化で今日の午後はお休みをもらってる。


事が済んだら早く帰れる。




あなたが席に戻った。


メモを見て一瞬驚いた表情。


でも、すぐいつもの飄々とした顔で仕事を始める。


私はずっと心臓バクバクで


キーボードを打つ手が震えていた。




昼休み、


いつも通り他の社員は昼食へと部屋を出て行った。


あなたと私以外、誰もいなくなった事務所。


あなたに渡すチョコレート。


震えた声で伝えた情けない告白。


緊張と恥ずかしさで顔が上げられないまま、


息も上手くできなくて。


いい方の結果を想像してダメだった時、


更に落ち込むことになるから考えないように。




たとえ振られたとしても、


OKを貰えたとしても、


落ち込んだ顔をしない。


舞い上がりすぎない。


あなたには気を遣わせるかもしれないけれど、


明日からは割り切って仕事をできる。


前に進んだ私になるから。

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