4.吹き飛ばした仲間との再会
ユリサの名前は、百合が由来ではなく、好きな中型車のサブネームを元に名づけています。
あなたは、仲間のことを大事に思っていますか?
私はそう思っています。
それなのに、私は吹き飛ばした仲間の救助を後回しにして、冒険者ギルドへと先に向かいました。
ギルドでの用を終え、ユリサを捜しに行こうとしましたが、彼女から私のほうに来てくれました。容赦なく吹き飛ばしたはずですが、大怪我をしているような様子はなく、私は安心します。
「無事だったみたいですね、ユリサ。……すみませんでした」
「謝らないでよ、ティブちゃん。私が吹っ飛ばすよう提案したんだからね」
そうでした。
私が頑固なデオをどう追放しようかとユリサに相談したら、ユリサが自分に危害を加えたらデオも考えを変えるだろうと申し出てくれたのでした。
あなたにお教えすると、ユリサは私の共犯だったのです。なお、ユリサはあの広場に行く前にパーティーメンバーを抜けてもらっていました。
「――その巨大な胸が爆発する前に、星座の一等星に加わることですねっ!」
ユリサが雰囲気を込めて言います。このセリフは彼女からの提案でした。
「で、私の頑張りで、デオ君をクビに出来たの?」
「はい、おかげ様で。それと、大変言いづらいのですが……デオの正体って、ユリサは知っていたのでしょうか?」
「本人からは聞いてないけど、……実は女の子だったんでしょ?」
「ユリサは気づいていたのですね。じゃあ、スライムだということも知っていましたか?」
「えっ、スライムなの?」
こちらは知らなかったみたいです。
「そのことを黙っていたのを責めたら、無事にデオもパーティーを抜けてくれました」
「そうなんだ、良かったね」
「もちろん良かったのですけれど……。ユリサは、私がみんなをクビにして、本当に良かったと思うのですか?」
彼女は共犯でしたが、追放の理由は全く話していませんでした。
「良くはないけど、ティブちゃんがどうしてもって頼んできたんだから、きっと、辞めないとまずいことになるような理由があったんでしょう?」
「……すみません。理由を言えなくて」
私はユリサに対して、申しわけない気持ちでいっぱいでした。
「いいよ。私、ティブちゃんのこと、信じてるから」
ユリサは私に近づいて、大きな胸部を押しつけて来ます。すごく、です。
「ちょっと苦しいですが……ありがとうございます、ユリサ」
私がそう言うと、彼女は少し下がりました。
「じゃ、今からお昼でも食べに行こうよ」
「えっ? 私はユリサをパーティーから辞めさせたのですよ?」
「でも、私とティブちゃんはお友達でしょう? お友達同士でお食事に行くことに、パーティメンバーかどうかは関係あるの?」
「……関係ありませんね。ですが、私は今日、独りでいたいのです、すみません」
「じゃあ明日ね! 約束!」
「明日はもっと無理なので……。さようなら、ユリサ」
私はこれ以上彼女の笑顔が見ていられず、振り切るように素早く離れました。
ユリサは、私とデオが一緒に冒険者を始めてから、最初に加わったパーティーメンバーでした。
すぐに抱きついてきたりしますし、暇な時にはやたら女の子の絵を描いていたりと、多少変わったところもありますが、私にはもったいないぐらいの素晴らしい仲間です。
ユリサだけじゃありません。デオもヴェリアも、私の最高の仲間でした。
そんな仲間達を追放しなければならない理由を作った“あの人物”のことを、この時の私はすごく憎んでいました。
ユリサだけでなく、残りのメンバーの名前も好きな中型車を元にしています。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。