3.命が懸かった確認は念入りに
確認は大事です。
本文とは関係ないですが、日常生活にて、確認したのに失敗していた時のダメージは強烈です。
あなたにまず伝えたいのは、私には悪意があって、デオ達を追放したのではないということです。
私はすぐに広場を離れ、冒険者ギルドに向かいました。担当の受付嬢さんのもとに行き、私はある調べものをお願いします。
「セティーブさん。確かにインヴィンシブルのメンバーはあなただけになっていて、他の方は全員パーティーを離脱したことになっています」
「本当ですか? 確認させて下さい」
私は二十代の美人受付嬢ラユーケさんから、情報の表示される板状の端末『コンカラー』を奪い取りました。
私はコンカラーに目を近づけて、該当箇所を何度も注視します。
パーティーメンバーは、自らが明確にパーティー脱退を宣言した時点で、パーティーの離脱状態となります。ギルドの情報でも、それが自動的に更新されます。稀にそうならない場合もありますが、その場合はこの端末を使うことで、リーダーが手動で離脱操作をすることが許可されていました。
コンカラーで映し出される画面には、間違いなく登録してあるパーティーメンバーがリーダーの私だけになっています。
「良かったです……」
私は心底ほっとしていました。
「ほら、大丈夫でしたでしょう? 私って信用されていないのですかぁ?」
ラユーケさんは眉を上げて私に抗議しました。その顔は愛らしいです。
「すみません。どうしても自分の目で確認したかったので……」
「まぁ、セティーブさんですから、特別に許してあげます」
笑顔が素敵なラユーケさんに、私はコンカラーを返却しました。
長い金髪の彼女は容姿も素晴らしく、私が羨むぐらいでした。私の周りの女性は、みんな美しいですね。デオもそうでしたし、美人でもない私がますます悲しくなります。
ただ、私が悲しく思う程度で済んだことだけは、ありがたいです。
これで私は、大切な仲間達を失うことを回避出来ました。
「ところでセティーブさん。今、あなたはステータス異常になっているみたいですが、その該当部分の詳細が表示されないのですよね。こういうのって結構めずらしいのですけれど、どうされたのですか?」
ラユーケさんがコンカラーの画面を見せてきます。私は説明に困りました。
「……ちょっと私がミスをして、そうなっただけですよ」
私が失敗をしたせいで、デオ達を追放しなければならなくなったのです。……全部、私が悪い。
ステータス異常は、私のかけられた呪いが最上位のものであるため、詳細の表示が不可になっているのでしょう。
私は己の不運を呪いながら、既定のコンカラー使用料をラユーケさんに支払いました。
ラユーケさんも、どうして私が他のパーティーメンバー全員を追放したのか、疑問には思ったでしょうね。ですが、彼女は理由を一切聞いてきませんでした。
「ありがとうございました、ラユーケさん」
私は彼女にすぐ背を向けました。
「またのお越しをお待ちしています」
いつもなら、仕事熱心なラユーケさんがそう言い終えるまで待っていたものですが、この日だけは違います。
彼女と接すれば接するほど、私は後戻りをしたくなるでしょう。それが許されていないと信じていました。
私は、死んでしまう。
この時の私はだいぶ悲観的でした。
端末の名称は好きな重戦車と同じにしてみました。征服者の意味です。
今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございます。