『ハンバーグ』『メンヘラ』『独占欲』
・匂わせ程度のカニバ描写あり。
・『ハンバーグ』の霊圧が消えている。
以上、大丈夫な方のみお読みください。
お帰りなさい。と微笑むあなたの唇はいつもつやつやしている。
おいしそうだな、と思うけど、キスしようとするとあなたはすっと避けてしまう。
「ごはん食べたばかりだから。歯磨きしてからにさせて」
同棲して、ずいぶん経つのにあなたはいつまでも初心で可愛らしい。
「じゃあ、私もご飯食べちゃおう」
「今日はミートソーススパゲティよ」
「お、好物」
あなた得意のトマト料理は本当においしいから。もう口の中がミートソースの味でいっぱいになってしまう。
「あたため直すから先に着替えちゃって」
「うん」
くつくつと鍋がおいしそうな音を立てている。
「そういえば今日は何食べたの」
「ハンバーグよ」
「好きだね」
三日に一度は食べてる気がする。
「ええ、好きよ。とっても」
鍋を煮ている間に横で歯磨きを終えたあなたの唇はもう艶めいてないけれど。
弧を描くそれが今日一番に艶やかに見えた。
「あ、そういえばね」
「ええ」
絶品のミートソーススパゲティを食べながら今日のニュースを話す。
「今日、バイト先の男の子が無断欠勤したんだけど、なんか事件に巻き込まれたみたいで警察が来てびっくりしたよ。聞き込みとかはじめて受けた」
「あら、それは大変ね」
一番仲が良かった子だから、すごく心配。
「なんかハンシャ? みたいのと関わりあるかもって」
「まあ、それじゃあ……」
私の言葉にあなたは大きく目を見張って。
「悪い人に食い物にされてないといいけれど」
そう言って、トマトみたいに真っ赤な唇を指でなぞった。
お読み頂きありがとうございます。