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第37話 拉致

「堕ちるところまで堕ちたな鬼頭……」


 俺に復讐したいがために、元カノを人質にとり、自分をボコした不良どもと手を組むとは……。


「るせんだよこの野郎! 八神、てめえだけは絶対許さねえ……! ドラム缶にコンクリ詰めにして、海に沈めてやるよ!」


 鬼頭は俺に向けて、ナイフをブンブンと振るう。


「将吾ちゃん、こいつどうすんの? ここで殺る?」

「いや、人目につかないとこまで連れて行きます。――おら、八神! 黙って縛られろ! 逆らったら分かるな!?」

「んんんんん……!」


 鬼頭は、ひまりの首にナイフを突きつけた。


 ここは鬼頭に従うしかない。

 あの不良たちとつるむくらいだ。今のあいつは何をするか分からない。本当にひまりを刺す恐れがある。


「分かった……お前達の車に乗ろう。黒いワゴン車にな」


 不良たちが俺を囲む。


「おらぁっ!」

「うぐっ……」


 腹を一発殴られた後、俺はロープで腕を縛られ、ワゴン車に乗せられた。


「んんん! んんんんん!」

「大丈夫だひまり……心配するな……」


 涙を流すひまりを安心させようと声を掛けつつ、彼女の状態を観察する。


 彼女は手も足も縛られているので、最低でも足の拘束だけでも解かないと、逃げ出すことは不可能だ。

 それには、まず俺の拘束を解かなくてはならない訳だが、不良どもがずっと俺から目を離さないので難しい。


「八神、お前の目の前でひまりを嬲ってやるからな……録画もバッチリしておくぜ」

「んんん……!」


 鬼頭と不良が俺達にスマホを向け、ニヤニヤと笑う。


「……生まれて初めてだ。人を殺してやりたいと思ったのは」

「キザったらしい台詞はいてんじゃねえ!」


 鬼頭に顔面を殴られた。

 さすがにノーガードで殴られると、かなりくる。


「……悪かったな、鬼頭と4名の不良さん方。……ところでこの車は、どこに向かっているんだ?」

三隅(みすみ)埠頭だ。そこにウチの倉庫がある」

「さすがお坊ちゃまは違うねえ!」


 不良どもは「ひゅう!」と口笛を吹く。

 車はしばらく走ると、一つの倉庫の中に入った。


「グレーの壁に緑の屋根……黒字で鬼頭埠頭倉庫と書いてあるな……本当にお前んちのものなのか」

「おう、すげえだろ? つまり、誰にも邪魔されずに、お前を痛めつけられるってこった! ははははは!」


 むりやり車から降ろされると、俺はイスに座らせられ、ひまりは床に寝かされた。


「将吾ちゃん、どうするよ?」

「んじゃあ初めは、八神が『もうやめてくれ』って泣いて懇願するまで、ひまりをいたぶりましょうか」

「いいねえ! まずはスッキリしないとな!」

「んんんんん……!」


 奴等がひまりの服に手をかけ始める。


「おい八神! しっかり見とけよ!」


 奴等はゲスな笑みを浮かべる。

 今すぐ殺してやりたい。


 鬼頭が、ひまりの口を塞いでいたガムテープを思い切り剥がす。


「やだよー! 八神、助けてー!」

「ほら、彼女が助けを呼んでるぜ。なんか言ってやれや。ぎゃはははは!」

「ひまり、必ず俺が助けてやるからな」


 不良どもは腹を抱えて笑える。


「縛られておいて、なにが『助けてやるからな』だよ! 酔ってんのかおめえはよ!」

「ぐっ……!」

「八神っ!?」


 不良に腹を蹴られる。

 いいぞ、もっと俺に構え。殴れ。


「お前らは俺とやり合う度胸がないから、こんな卑怯なやり方しかできないんだな。ははっ! クソダせぇ!」

「うるせえんだよ、馬鹿野郎!」

「お願い、やめて!」


 また不良に顔面を殴られる。

 鬼頭達全員も俺の近くにやって来た。そうだ、それでいい。


「調子乗んなよ八神……俺が本気になれば、てめえなんざ秒殺なんだよ! お前に地獄を味わせるために、こうやってめんどくせえやり方してんだ。それくらい分かれや、この低能が……!」

「よく言うぜ。本当は俺が怖いんだろ? 分かってんだよ鬼頭。お前が、根が小心者のクソザコだってことはよ」


「ざけんじゃねえぞおおおお! 死ねこらああああああ!」

「やめてよ将吾!」


 鬼頭に何発も殴られる。こりゃ明日の朝には、顔パンパンだな……。


「予定変更。先に八神からやりますわ」

「おっけー。こいつ、ちょっとうるせえもんな。―――で、どうするよ?」


「こいつ陸上部なんで、足折りましょうか」

「お、いいねー!」

「やめてください! 八神は県大会に出るんです! アタシのことは好きにしていいから、八神には手を出さないで!」


 不良たちはゲラゲラと笑う。


「いいねー! なんか俺、感動しちゃった!」

「本当にこういうこと言う馬鹿な女っていんだなー」



 ガランガランガラン。

 不良の一人が、鉄パイプを引きずってきた。


「いいの、あったべ」

「お、ナイスナイス」

「じゃあ、早速いきますか」

「将吾ちゃん、やる?」

「う、うーん……」


 俺はニヤリと笑う。


「お前に、人の足を折れる度胸なんてないもんな」

「んだと……この野郎……! 貸してください!」


 鬼頭は鉄パイプを受け取った。


「お願いします! どんなことでもするからやめてください!」

「はいはい。そういうの、もういいから」

「つうか、抵抗してくれないと萎えるし! ぎゃはははは!」


 ひまりが泣き叫ぶ声にかき消されたが、俺はかすかに小排気量のエンジン音を聞いた。



「ふー、ふー、やってやる……やってやるぞ……!」


 鬼頭は鉄パイプを振りかぶる。


「やってやる……やってやる……」

「何回『やってやる』って言ってんだよ、根性無しが。俺なら何も言わずに振り下ろしてるぞ?」


「カースト最下位の陰キャが、俺に舐めた口利くんじゃねえ……!」


 鬼頭は手にグッと力をこめた。



 ――お、やる気だな。


 だが、覚悟を決めるのが、ちょっと遅かったようだ。



 バギャアアッ!

 倉庫のシャッターが破られ、一台の原付が突っ込んで来た。


「このクズどもがああああああああ! 皆殺しじゃああああああああ!」

「ぐわっ!」


 原付は一人の不良を撥ねると、俺のすぐ前にとまる


 なんとか間に合った……!



 一体なぜ彼が助けに来てくれたのか。

 それは、俺がワゴン車に乗せられる前、あるアクションを起こしていたからである。


颯真のセリフに注目すると、分かるかと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 極道院先輩好きw [一言] 極道院先輩好きw
[一言] 極悪院先輩!トゥンク♡ これは選択肢も極悪院ルートを用意しざるを得ない。もうデート(ツーリング)の約束も取り付けられてるし
[一言] 極悪院先輩パネーっす
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