魔王FXにgameoverさせられちゃって、地球で農家していた俺だけど嫁を魔王に奪われました。
俺はピョンタといいます。今は結婚もして農家をしながら平凡な日々を過ごしていたのですが、こんな俺でもその昔は株やFXをやっていまして 小金持ちになれるかもしれない、と夢見るほど順調でした。
そんな昔のある日。
魔王FX「がぁぁ これだけ高い手数料を引いているというのに、まだ ワシの邪魔をするか?しかし これで最後だ!サブプライムビーーーム!!!」
ピョンタ「ぐがぁぁぁあ、、、体が!心がぁぁあ。」
魔王FX「お前の勝はすべてが幻。無に帰したのだ。あと、ついでに状態異常も付与しといたぞ(笑)」
大きく負けてしまったことは タダの負けじゃすまなかった。胃液が逆流するような思いだったし顔の中心に吹き出物もできたりして健康を失ってしまった。そして 投資で失ったお金は戻らない。例えば100万円で20万円稼ぐのには20%の利益を出せればいいが 20万円で20万円を稼ぐには2倍。20万円になってしまったものを100万円に戻すには20万円を5倍!。「一体何倍にすれば元に戻るんだ?」どう考えても無理ゲーだった。
だから俺は手元に残った所持金15万円を気まぐれに選んだ投資信託に託してパソコンを閉じた。「もう投資はしない。健康が一番だ!」投資を諦めて静かに生きていくことにした。
・・・。
あれから数年が経った。
時間が経つのは早いもので体調を壊してピザが食べられなくなっていたことも忘れかけていたし 実は この間に結婚もした。
妻にはFXの事を少しだけ話しておいたが そのほかには誰にも話ていない。
子宝には恵まれなかったが、今は何よりも信じられることができたし、働くことは俺を裏切らなかった。
なにせ お米を栽培して収入を得る仕事をしているのですが、秋の収穫になると「ドン!」とお金が入ってくる。
通帳の金額を見るたびに 労働で得たお金は自分を正当に評価してくれたし俺を導いてくれると実感した。
しかし ある日の事。
「ただいま~」
家に帰ると 妻がスマホをポチポチやっていた。
パズルゲームみたいに 難しい物によく熱中できるな・・
妻のショートヘアの髪型の頭は大きな脳の一部なにかもしれないと思わせるほどに
アクティブに難解なパズルを解いていく。
ただ 頭のいい妻だけに理解できないことがある。
それは 10歳も年上の俺と結婚してくれたこと。それだけはどうしてもわからないし 教えてもくれなかった。
・・・。
・・。
10分後。
妻はソーシャルゲームが好きだから、と気にも留めていなかったけど
妻はスマホの画面を凝視したまま俺に聞いてきた。
「あなたって 昔、株とかFXやってたわよね?実は~ 私もFXやってるの(*^-^*)」
マジか!!
マジか!って思ったけど、そんな取り乱した態度をとるわけには行かない。でも、いくらやってるんだろう?数十万?だけど FXって言ったら中毒になっちゃう人もいるし・・・もしかして。俺は取り合えず妻に話を合わせた。
「へぇ~そうなんだぁ。登録とかよくできたね。それで調子はどうなんだい?」
「登録?簡単だったわよ。ほら!(スマホの画面を見せてきた)」
妻のスマホの画面は、昔よく見慣れた黒い背景に赤と青のグラフが描かれていた。しかも運用益はプラスじゃないか!(数百円プラス)投資金額1万かい! さすが俺の嫁!
「驚いた?やっぱり イヤだったでしょ??」
この後 運用が順調な妻はFXを続けていいかを俺に聞いてきた。俺は思い出すだけで胃がキリキリしていた頃を思い出してしまうのだけれど、妻を否定する資格は俺にはないわけで。「いいんじゃないか?」と返事をした。だけど 妻はどうしてFXを始めようと思ったのだろう?そりゃー ソーシャルゲームの広告をクリックしたのが原因だろうけど、本音のところはどうなのだろうか?満ち足りた生活は送っていないかもしれないけど 何か思うところが積み重なっていったりしていないだろうか?
次の日は 仕事をしながらも妻のFXについて色々と考えた。「彼女はもしかしたら自由が欲しかったのだろうか?。。だとしたら 何やってるんだ俺・・」
でも 考えを巡らせているうちに違うことも考えた。
「俺と妻とは年が10歳離れていて俺のほうが先に死ぬわけで・・。俺が死んでから農地を妻に残したとしても うまく農地を貸して不動産所得を得て、年金と不動産所得で暮らすことが出来るだろうか?」
当時の俺は お米を作る仕事をしながら 冬は農家の税金の申告を手伝う仕事をしていた。仕事と言っても税理士じゃないから報酬とかはもらえないボランティアみたいな仕事です。当時は足が悪くて事務所までこれないお年寄りの家を回っていました。
「お電話をしていたピョンタですが確定申告のお手伝いに来ました」
「まあ まあ 今年もよく来てくれたねぇ。」
昔の農家は大抵が旦那さんが自分に農業者年金などの手厚い福利厚生をかけているので旦那さんが健在なときは安心。「年金+農業者年金(国民年金っぽいもの)+不動産所得+自家野菜+持ち家」があります。だけど それだけに奥さんは国民年金しか入っていない家が多いので 旦那さんに先立たれると「年金+不動産所得」になってしまうので貯金を切り崩して暮らさなければいけないという状態に陥ってしまう。
でも昔の人だから 無理をしなければ暮らせちゃうのだけど・・ただ実際は 自分が節約生活をしていても子供や孫のために何かをしようと思うたびに貯金が減っていく。。そして旦那がいないので家が壊れたりもする臨時出費も発生する。
だから 結局は不動産所得を生み出す畑を売却することになっていた・・。
申告のお手伝いが終わり、おばあさんからは 帰りに「ありがとう」と感謝いっぱいの言葉と見送りを受けたけど、笑顔を返した半面 心の裏側では「全然 ありがとう。。じゃないよ おばあちゃん。。」と胃から何かが突き上げるような気持になった。もう 来年からはこのおばあちゃんとも会うことはないだろう。
「さーて 次は・・脳梗塞で筆記をする力がなくなって、申告が出来なくなったおじいちゃんの家にいかないとな。ほぼ初対面の相手だ。 大丈夫だろうか。。ハアハア・・心配だ」
・・・・
ボランティアでこの現状を見てきた俺は 妻がFXに手を出してしまったことは残念だったが これを機に投資を覚えてもらえれば生き抜いてくれるのではないかと思っていた。
「FXをきっかけに妻には投資を覚えてもらおう。そうだ! 昔眠らせたお金があったはず!」とクローゼットの奥にある箱を取り出して 証券会社のログインコードの紙から証券会社へアクセスした。
ピンチをチャンスにじゃないけど そんな乗りだったと思う。
そして 俺のアーリーリタイヤを育てるという 目標が生まれた。
証券会社にアクセスしてみると
「え。。と 所持金が15万円あったはず。。 あれ?23万円ってなんだ? お金が23万円に増えていた」普通預金がゼロ金利の時代に投資信託で1.5倍もお金が増えていた。
数日後・・。
23万円の軍資金は得たけど 「ポン」と妻に渡す気にはなれなかった。自分の欲なのかそれとも、「俺は1.5倍になる投資信託を選べる心眼を持っている」とでも思って、性懲りもなくまた天狗にでもなろうとしていたのかもしれない。
だけどある日 妻から「為替が凄く下がっている(円高)」と言われた。グラフを見るとサブプライムほどじゃないけどグラフが急激に下がっていた。風邪に似た流行り病の影響のようだ。
「買ったのかい?(投資したのかい)」と聞くと 妻はゆっくりとうなずいた。俺が FXに対して難色を示したと思った妻は あれから投資金額をさらに減らして数千円で取引をしていたようだった。だけど 負けることに免疫のない妻にとっては 今まで稼いだお金が無くなってしまったことが相当ショックだったようだった。
「よし 今がチャンスだよ」と俺が斬り出して23万円あることを妻に話した。円高になった為替を買って負けた分を一緒に取り返そうと夫婦で力を合わせることになった。それからは 妻もどこの通貨を買えばいいのか?とか色々聞いてくるようになったので 「流行り病の事もあるしニュージーランドなんていいんじゃないかな?」なんて適当な事を言いながらグラフの見方を教えることにした。
「すごい 下がってるわ」
でも 適当なことは言うものじゃないと言うか ニュージーランドに限った事じゃないけど65円あったドルが50円くらいまで円高になっていった。 だけど そこは 少額の投資と損切りを繰り返し、さらに妻の相場を読む堪が素晴らしくて利ザヤを稼いでくれたので あまり苦労せずに50円台まで持っていくことが出来た。
「おっしゃー! 50円台を捕らえたぞ!」
「ねえ 今どのくらい 負けてるの?」
「大丈夫だ 君のおかげで ほぼ ノーダメージだよ」
そして相場は 大きく反転し妻の快進撃が始まった。
「株とかFXって本当に稼ぐことができるのねぇ~」
妻の投資は順調で留まること知らず、
「投資を知ってもらうのが目的で、こんな予定じゃなかったんだけどな・・」
でも すごく儲かった。そして・・ 所持金は1か月で2倍になっていた。
そして俺は投資を教えるどころか、逆に口だしすることが出来なくなってしまった。
儲けたお金は 定期的に一定額をFX口座から引き揚げて勝分の全額を妻に払った。
7回くらいATMに通っただろう。
でも 金額が大きくなってきて ある日「FXの税率は20%だから引いてもいいよね?」と言ったけど
妻は首を縦には降らない。
どうやら妻は税金のことはわからないという。
このまま稼いで 例えば100万円になったら税金が20万円かかるけど・・え!
その時の20万は俺が払うのか??
そんな心配をしていると
「そんなわけないよ!そんなに稼げないから」と妻はほほを持ち上げて笑っていた。
なんだか イキイキしてるな。
「こんなことで本当にお金を稼げるのね」
ひな鳥のような表情でそんな可愛い事を言っていた妻でしたが 最近ではFXに慣れてむしろモジモジするように俺に注文を出してくるようになりました。
なにせ 俺の証券会社の口座からFX取引をしているので 注文を出すときにいちいち俺を通して注文をしなければいけないというのが 煩わしく感じているのだと思う。
グラフの見方だけでも覚えてもらえればと思って始めたFXだったけど 投資がうまくいきすぎてしまい
絶好調になった彼女は 今さらグラフを覚えることはないだろう。
勝てるときは理由に関係なく勝てるものだし、モジモジしたくなる気持ちもわかる。
俺も仕事があるし。 そうだ
「ねえ そう言えば前に自分で開設した口座を持ってたのね?楽天証券だっけ?」
俺は以前に妻がやっていた証券会社にお金を移して 自分の口座で取引をすれば俺をいちいち仲介しなくても取引が出来ると提案をした。
「ん~」と うなった妻はソーシャルゲームのパズルの画面に目を落としてそっけなく返事を返してきた。
「今のままで いいわよ。LINEで連絡をするから注文お願いね イヤじゃなければだけど・・」
そうなんだ。FXって注文のタイミングがシビアだったりするから自分の口座でやったほうがいいのにどうしてだろう?もしかして 前に話をした税金の事を心配しているのかな?自分の口座で取引をしたら確定申告をしなくちゃいけなくなるから・・・とか?
その後は 「確定申告だったら俺がやってあげるよ」とか 不具合が出そうなことを2~3くらい助けてあげる提案をしたけど ど~も 何かが違うらしい。
苦笑いの表情で 嬉しいのか困っているのか 何を考えているのかよくわからなかった。。。
魔王FX「ふふふ・・」
誰かの笑い声が聞こえてようだけどおそらく気のせいだろう。
「さて 今日も仕事を頑張りますか! よっしゃ!」
それにしても農業はいい! すっごくいい!
最近読んだ本で「世界のエリートがやっている 最高の休息法」って本があったけど
何かに没頭して 今にフォーカスをした時間を過ごすということは
今の心が疲れて疲弊した現代人には必要な事らしい。
確かにこうして
ただ、ただ 野菜の苗を植え続けている作業をしているだけなのに
作業が終わると頭が スッキリした感覚がある。
実は没頭して苗を植え続けるという行為は ムーブメント瞑想という瞑想法だったたしい。
瞑想・・ 実は俺ってすごいヤツかもしれない。
ただ 作業をしていると心配になることがある。
魔王FXの事だ。
今は調子もいいようだし、俺は妻の言う通りに注文を出して口出しはしないようにしているけど
妻に目をつけてビーム光線を撃ち込んでくるなんてことにならないよな?
最近の妻の一回当たりの投資金額が資金の50%を超える注文も珍しくなくなってきた。
危ない注文をしていると言うことに 妻は気づいているのだろうか?
注意したほうがいいだろうか?
いいや・・ 妻は利ザヤを稼ぐのが上手だったこともあって俺の発言権はほとんどなくなっているからな。
「そうだ 本を贈ろう」
旦那である俺の言葉なんて所詮は 説得力がないわけでここは書籍を出版しているような大先生のお力を借りようと思った。 選んだ本は図柄が多い本で作者は移動平均線(平均点のグラフ。グラフで作ったグラフみたいなもの)を重視した取引をする人だった。
俺は妻をスターバックスに誘った。
妻はピンク色が好きだったし 春にやっている限定のパフェのようなコーヒーを飲みたいと言っていたのでちょうどよかった。
スターバックスの店の近くには桜の木が植えられており、北海道の桜の咲く季節は5月なので
桜の花が咲き始めていた。
・・。
・。
「なんか スターバックスの店員さんて親近感を持って接してくるよね。コーヒー一杯売るためなのに大したものだ」
「・・そう。それより ストリベリーフラペチーノがずっと飲みたいって思っていたの。大きなサイズを頼んじゃったかあなたも手伝ってね」
「君って共有するのが好きだよね。一口いただくよ」
コーヒー、一つでこれだけ笑顔になれるなんて幸せな性格だよな。
まあ俺もスタバのブラックコーヒー好きだけど、、機嫌もよさそうだし話を切り出すにはちょうどいい
・・・。
・・。
・。
「なあ 君に本を贈ろうと思うんだけど 読んでくれるかな?」
「え! どんな本?あなたが買ってくれるなら読んでみてもいいわよ。けど あまり難しいと読めないかも」
よしよし 本を読んでもらえるという約束は取り付けることが出来たぞ。
あとは 今晩にでもAmazonで本をポチるだけだな
けど そう思っていた矢先にまた FXの為替の動きが活発になり始めてた。
目に力のこもった自信に満ちている妻は 長刀を振るう女中のごとく今回も大口注文で「バサリ!!!」と注文を出してきた。
ディーラー(仲介者)の俺としては 迷うところです。
「注文数が多すぎでは?」と物申すのは なんだか可哀そうに思ってしまう。
と言うか主婦業の合間に見つけられた自分らしさ、
生きている実感を感じられる瞬間を奪ってしまうのはよくないだろう。
外には奇麗な桜が咲いていて 妻が飲んでいたストロベリーフラペチーノのカップの底には真っ赤な真っ赤なジャムが溜まっていた。
あの事を話してみるか。。
株もFXもなんでもそうだけど結局のところ未来では何が起こるのかはわからない。
会社だったら 社長のスキャンダルのような一つの理由だけで株価が大きく動いたりするけど
為替に至っては 十人十色で輸入・輸出業から世界中の人たちの思惑があって動くので為替が動く理由というのはあってないようなものだと思う。
だけどね たった一つだけ、必ず負ける方法だったら存在します。
俺は FXの注文が終わってショッピングに頭を切り替えようとしている妻を引き留めることにした。
「ねえ ギャンブルやってみないかい?」
「ギャンブル?いいや いいわ。そのギャンブルって意味があることなんでしょ?何なの?話してよ」
ん~ 妻に隠し事はできないな。 別に浮気しているわけじゃないけどさ。
それに妻をハメるみたいでホントは俺もやりたくなかったんだ。
俺は手を妻の方へ差し出した
「そうだね じゃぁ 説明するよ。例えば あなたに100万円を渡します。 そして、あなたと私でギャンブルをしたとします。
ルールは簡単で、コインを使った表と裏(勝率50%)のゲームで、勝てば掛け金は2倍になって負ければ掛け金は没収されるよ。
あなたは いくら賭ける???
賭ける金額は自由でいいよ。
だけど 一つだけ条件があって100回!いいや 50回は連続で勝負してもらうよ さあ!どうする?」
「賭けないわよ(笑)」
マジか! これだから頭のいいヤツは困るんだ。
理由を知らなくてもそれなりの正解を選べるなんて 羨ましぃ!
勝ち誇った顔というか 俺を見透かしたような顔というか ん~もう 妻が何を考えているのかわからないけど
ここで引き下がるわけには行かない。
「でもさ タダで100万円もらえたうえに、親(賭け主)は青天井で上限がないよ。
だから わかりやすいように天井を設けて仮に俺が200万持っていたとしよう。
コインゲームのルールの勝率が50対50だったから、君はうまくやれば300万円の半額の150万円受け取ることが出来るかもしれないよ?それでもやらないのかい?」
「やらないわ(笑) 早く正解を教えてよ」
・・・。
「そうかい? これはね 投資では有名な話なんだけど投資には絶対に負けることが出来る方法があるんだ。
例えば君がギャンブルに参加するとして、一回当たりの掛け金を所持金の60%とかそういう額を賭けていくとね、かなりの確率で負けることになる。
なぜだと思う??
100回連続で勝負をしないといけない条件で 1回目から100%の金額を投資していくとしたら100回連続で勝つことは不可能だってことは想像がつくよね。
それを数学的にもう少し細かいところまで見ていくと1回に投資できる金額は40%ぐらいまでが限界だと言うことがわかっているんだ。
リカバリーできなくなっちゃうと負けてしまったときに大きく所持金を減らしてしまって、取り返しが付かなくなるってことだね」
「そうなんだ。わかったわ」
俺の話に感心しているのか、話が長かったのか、妻の表情からは 何も読み取れなかった。
でも真意は伝わっていないだろうなって感じはする。
実際 昔の自分はどうだったかと言えば、オーレンバフェットの本を読んで知ったけど知識としてしか認識をしていなかった。
それよりも 「ここぞ!」と決めた会社や土地に妄信的に投資をしていくバフェットの投資スタイルがカッコイイと思って憧れていたくらいだ。
数日後の朝
俺はいつも早起きで4時半に起きていた。まぶしいパソコンの光に目を凝らしながら薄目でメールボックスをチェックすると 証券会社から何通ものメールが届いていた。
20%を割り込みましたロスカットの恐れがあります・・・追加入金を・・・
そんな内容のメールだった。。。
朝起きてメールボックスをチェックしてみると 証券会社から何通もの警告メールが届いていた。
ロスカット警告通知、つまり 10ドルを担保に100ドル借りていたけどお金が目減りしすぎたので 100ドルを刈り続けたかったら追加で入金してください。さもないと ロスカット(強制反対売買)になりますよ!という内容のメールだった。
パンチを一発貰ったボクサーのように頭が「キーン」とした。
だけど 頭がすっきりと冴えまたり何かのスイッチが入った
懐かしい感覚だ。ついつい パソコンに手が伸びそうになるが・・・「おっと いかんいかん」
ついつい 手を出してしまいそうになるけど 妻のものに手を出すわけには行かない。
ここは 我慢だ。
俺は 2時間ほど待ってからベッドに横たわる妻を起こしてFXがどんな現状になっているのかを伝えた。
すると 眠気眼の妻は冷静な判断をした。
「じゃあ 半分売って!!」
いつ覚えたんだろう?
つまり100ドル持っている状態でロスカット通知が来たのなら50ドルに減らせば 一部の損失は確定するけどロスカットは発動しないというわけだ。
妻ながら 「初心者なのによく思いついたな」と思った。
でも 今回の件の本当の目的は、そうゆう事じゃなくて投資を覚えてもらうために始めたFXなので、心を鬼にしようと思った。
「ねえ 今の状況わかってる? どうしてこうなったと思う?」
これが 俺の言いたかったこと。どうして今の状況が起きたのかを考えてほしい。。
負けた事なんてどうでもいいんだ。
ただ 例えるなら、のど元に剣を突きつけられて「チェックメイトです」なんて言われるくらいの状況にどうしてなってしまったのかを考えてほしかった。だけど妻は
「わかったは 全部 売ってちょうだい。それでいいんでしょ?あのお金も返すわ」
そんな つれない返事を返してきた。一緒に考えたかったんだけど、伝わっていないようだ。
そうじゃないんだよ。 違うんだぁ!
でも 議論を重ねても険悪になるだけで寝起きの妻が可哀そうになってきた。
妻と話をしているときに 脳裏に一冊の本が何度も浮かんできた。
それは「嫌われる勇気」という本でアドラー心理学を現代風のストーリーで語っていく内容の本だった。
アドラー心理学によれば他者を変えようとすること自体が愚かな事らしい。
助ける用意は必要だけど、相手を変えることはできないので、やっちゃいけない事だったんだよな。
実際に 諭すつもりが責め立てているだけになってしまって何一ついい結果にはならなかった。
どうすれば 「助ける用意」を準備してあげられるだろうか???
・・・。
・・。
・。
「今のポジションをオレに売ってくれないか?もちろん 今の金額のお金は払うから」
妻の目元は鋭くなり エリートのような頭のよさそうな目線になった。
「ふっ!! 要らないわよ。元々あなたのお金でしょ?」
怒ってはいないと思うけど 目を合わせてくれなくなった。
やっぱり怒っているのだろうか?
こうして 妻からポジションを受け取りパソコンの画面に向かった。
ああ 懐かしい画面だ。そうだ!いつもの儀式のコーヒーを淹れなくちゃ。
俺は 高橋名人並みの指さばきでコーヒーメーカーを操作した。
ブラックなので押すボタンは少ないけど。
気を取り直して画面に向かうと 昔の画面とはずいぶんと変わったところがあることに改めて気が付いた。
それはレバレッジを示す項目がなくなっていると言うこと。
昔は1ドルを200倍とか400倍とかに自由に設定して運用することが出来た。
危険な倍率が有名になった一方で 倍率の方でリスク管理が出来るので計算が容易だった。
だから例えば1ドルを10倍のレバレッジで買えば10ドル持っていることになる。
つまり為替リスクが10倍の状態になっているなどなど、総資産に対して何%のドルを持っているのかを用意に把握できた。
確か高レバレッジによって破産する人が続出したとかいう話になって金融庁がレバレッジの上限値を決めたんだったな。だけど FXは自己資金が多ければ安心って訳でもない気がする。
むしろ FX口座に大量の資金を入れていることの方が危ない気がする。。
魔王VSピョンタ
魔王FX「がはぁぁぁ ピョンタよ。再び戻ってくるとは お前はどうしようもないヤツじゃ!
どうしようもないヤツじゃが ワシはお前を待っておったぞ。ワシはお前の様なヤツが大好きだ!」
FXの魔力はすごい。
・金利の高い国の通貨を2倍のレバレッジをかけて買えば 金利も2倍になるんじゃないか?
・毎日 金利の清算が行われてお金が入ってくるから効率のいい複利効果が期待できるんじゃないか?
・下がったときも上がったときも 儲けることが出来るなんてチャンスが2倍じゃないか?などなど・・。
ピョンタ「俺は 別に戻ってきたわけじゃない。流行り病がなかったらここへは来なかっただろうさ」
そう、マウスをカチカチとする音が心地いいけど 今は立ち寄っただけ、、
「ガチャン!」
ドアが開いて寝室から妻が現れた。だけど 髪で目元を隠し、コーヒーカップを持って、そそくさと コーヒーメーカーのところへ歩いていく妻はよそよそしい。
どうする?すごく、こ・・声をかけにくい。
そして 妻も高橋名人並みの指さばきでコーヒーメーカーを操作してそそくさと 部屋へ戻ってしまった。
ドアの閉まる音が 二人の間に壁を作った気がする。
ああ・・ なんてことしちゃったんだろう? おれ・・ 嫌われたのかな・・。
朝は 取引はせずにチャートを見て時間が過ぎた。
苦いコーヒーだな まったく。
そろそろ 仕事に向かわないといけない。
仕事に向かい働いて、銀行に向かい用事などを足してから夕方、家に戻った。
リーマンショックのときは アパートから飛び降りた人もいたらしく2チャンネルも荒れていた。
妻も 実家に帰ってしまったのではないかと心配だったけど仕事が手に付かなかったけど大丈夫だろうか?
ああ 車があるな。安心した。
でも 妻は部屋に閉じこもった切で出てくる様子はなさそうだ。
代わりに テーブルの上には食事の用意が整っていて なんか寂しいく感じた。
さらに 俺がお風呂に入ろうとすると 下着も用意してあった。
普段は 各自でやるようにしているのにどうしてしまったのだろう?
100回勝負して100回勝つなんて不可能だって説明したのに! 勉強のための20万だったのに!・・結果は妻を落ち込ませてしまっただけだった。「嫌われる勇気」の警告は現実になった。
人を変えることは できないし、やった結果がこれか。。
魔王FX「がはは 愉快、愉快! のう。ピョンタよ。もはや妻はお前のいいなりだ。なんでも言うことを聞かせられるではないか?我に感謝するがよいぞ。がははは」
永遠にではないだろうけど この先しばらくは妻は、俺の言うことをよく聞くようになるかもしれない。
だけど 落ち込んでいて 泣き虫な妻はきっと 枕をベジャベチャに濡らすくらい泣いていたはずだ。
そんな ベタベタになった枕と妻の顔が目に浮かんだ。
ピョンタ「魔王FXよ!そう言うわけにはいかないんだわ。妻を返してもらうぞ」
俺は パソコンのボタンを押した。
魔王FX「何をする気だ?」
ピョンタ「いけ! 全投入! 事業資金の型!!!!!」
魔王FX「ばっばかな真似をするな! そんなことをすれば・・いろいろな方々に迷惑がかかるだろう!!!」
ピョンタ「それはない。お前のライフはすでにそれほど多くはないはずだ!
それに俺が1回に投資する金額は10万円だ。20年間働いて稼いだ金額はだてじゃないぞ!デスマッチと行こうじゃないか」
魔王FX「ふふふ ぐっはは。愚か者め。少額ならば100%安全だと思っているのか?再び無に帰してくれるわ」
ピョンタ「ああ、少額だからって安全じゃないし未来は誰にもわからない。
だが知っているか?その昔、月の満ち欠けでFX投資していたトレーダーたちがいたことを!
ハンバーガーの値段で投資をしていたトレーダーたちがいたことを!!
一寸先は闇だからこそ 自分のストーリー(羅針盤)を確り持たなくちゃいけないんだ!!! 」
そして俺のストーリーは! それは物価的に考えて今のドル円はあり得ない!だ。
魔王FX「ぐがぁぁぁぁ ぐぶ・・」
ストーリーは 決して正しかったわけではないかもしれない、正しかったとしても米粒ほどしか正解でしかなかったことだろう。でも 魔王FXは抵抗を辞めた。
為替は元の水準を超えてそれ以上に円安に振れて、俺をブルーオーシャンに連れて行ってくれた。
「奇麗な 景色だ。美しい。。ずっと見ていたい景色だ。 でも この景色はいつまでも見続けてはいけない。ずっと見ているといつか自分もこの海の一部になって消えてしまうから・・。さあ 戻ろう」
しばらくして「ガタン!!」と少し力強く扉が開いた音がした。
妻がひょっこりとした顔で 俺の前に現れた。
改まってどうしたのだろう?後ろに腕を組んで何かを言いたそうにしている。
「あのね。損させちゃって ごめんね。。お金はちゃんと返すから!それから前に あなたがくれたお金も返すわ。ごめんね」
俺の方こそ 損をするって知っていたのに こんなことをさせてごめん。
そして 真っすぐな答えを返してくれる、そんな君が大好きだ。
さてと 決意をしてきてくれたところを 申し訳ないけど
さっそく喜んでもらう事にしよう。
「大丈夫だよ。もう 終わったから。全部取り返したよ。画面を見てごらん」
妻の目は見開いた。ショートの髪が子供の様に揺れて状況を理解できない子供の様だ。
「うそ!」
「ほ~ら 見てごらん。前より増えている」
・・・・。
・・・。
妻「ねえ、FXって 本当は儲かるんでしょ(笑)」
やれやれ・・大丈夫か? そう思った。だけど この後、妻は数回、利ザヤを稼ぎたいとは言った事はあったが 徐々にFXからは離れていき、関係を断つことに成功したようだった。
負けて苦い経験をしたわけでもないのにFXを辞めることが出来るなんてなかなか出来ることじゃない。
さすが 妻だ。
最後まで読んでいただきまして ありがとうございました。
最後まで読んでいただきましてありがとうござい