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霧開けて、明暗  作者: 小島秋人
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二人目の男


 二人目の男


 義務教育の時分が最て非行に走った時期だったのではないかと思う、反抗期と言うのとも違った。母が厳格であったので、悪事への憧れを叩き潰される儘伏せていたのが反動になったのだろうと見ている。当時の主観で分からなかった感情を今記憶頼りに客観視した所で真相の明かし様も無いのだが。


 何にせよ、その男のお蔭で随分波乱を孕んだ人生に成った事だけは事実だろう。


 同性愛者と言う言葉で括って良いものか自身を量り兼ねては居たものの、取り敢えず男性としか交際遍歴が無かった事を理由にコミューンを紹介された。上は二十代半ばまでと言う若年層の集まりで、それでも十人に近い程度に同じ趣味嗜好の男女が忌憚なく言葉を交わす空間は居心地が良かった。


 男はコミューンの立ち上げ人で、歳の離れたパートナーが日中を孤独にしている様子を見兼ねて交流の場を作ったと言うのが表向きの設立理由だった。真意については後述するが、当時は未だ一般に受け入れられにくい風潮も有った以上メンバーに他に寄る辺も無かった辺り巧妙な人集めだった。


 失踪癖のある相手をパートナーに選んでしまった私は体の空いている時期の方が長い。操立て出来る程度の倫理観が有れば良かったのだろうが、「本気ではないのだから」と囁く不逞の誘いは周囲からでなく己の内から湧いていた。


 言い訳にもなるまいが、その日男の家に誘われた折にはそんな気分が露程も有りはしなかった。建築デザインを生業とする男の自宅兼事務所に興味は有ったが、敢えて知人の恋人にモーションを掛ける様な飢餓感は当時未だ持ち合わせが無かった。


 男のパートナーは可愛らしい少年だった。私の彼と比較してどうかと問われれば、少々毛色が違った。中性的な要素の強い彼に魅かれていた自分は未だ男性の男性的魅力に陶酔を見出せる程両性愛者としての円熟を経て居らず、闊達な少年に弟分以上の扱いをする気分には成りようも無かった。


 其れでもこの犯罪臭の強い歳の差カップルのどちらを同衾の対象に見るかと言えば少年の方だった。先述の通り未だ青い果実の分際で有った事も有るが、何より受けに回っての交渉経験が無かった。それでも気付けば男の意のままに体を開いていたことを考えれば、両刀の上にもマルチプレーヤーの素養は元より在ったのだろう。


 肛虐自辱の指南本を表紙の男の娘イラストに釣られて購入した事が有る。その一節に『肛虐の嗜好は排泄時の快感から入門するケースが多い』と言う記載が有ったが、男のリードで度々洗浄・拡張を繰り返される内に納得せざるを得なかった。何事につけ経験者の手解きに勝る上達の道も無いのだろう。そんな悟りを得るには切っ掛けがあまりに品が無い様にも思うが、若い内は何事も経験だろう。いや本当に酷い。


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