第零廻: プロローグ
;)
……分かっていた、事だった。
一人、ただひとつの人工物もない、純然たる「自然」に取り残された私は、そうぽつりと独りごちた。
周りをそっと窺う。日は頂点にあり、方角すらまともに知ることができない森の中、その深奥。助けはおろか、子供の一人も迷い込むことはないだろうことが理解出来た。
ぱた、と気が抜けた音と共に、私の腰が地面に着く。その音がなんだかおかしくて、笑いが漏れてしまった。
はあ、と溜め息を吐き、思った以上に自分が冷静に思考できていることに驚く。が、それはまだ感情が理解に追いついていないことの証左に過ぎない、と思い直し、また息を漏らした。
「……とりあえず、水が欲しいな……」
なにせ、着の身着のままこの森に放り出されたのだ。朝日を迎える家もなければ、満足な食料もない。水など言わずもがな。
生きるために。
ただ、細い糸を掴むようにして生にしがみつくために。
ぐっと遅れてやってきた悲痛な感情を押し込め、ただ生存のために思考を最適化する。
……暗月二十八年、妙の月明日。
この日をもって私の二度目の生が始まった。
一度目はただ他者のために。
そして今からは、己のために──。
「狂気の森」にただ一人で降り立った、憐れな只人の人生が、再び。
『─────観察者より受取手へ。SKシナリオの発生を確認。指示を仰ぐ』
気分で続きます。




