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"異"能力バトルは劇的に!  作者: しらべ
異世界テンプレは劇的に!
6/26

第六劇 ファーストバトルは劇的に!




「ひ...光だ、おい皆! 光だよ! やっと地上に出れたぞ!」


洞窟の中から声を張り上げる男が一人。そう、我らが煉華である。


そのまま這い出でるように出てきた煉華は日の光の元へと転がりでる。


「うおおおお!!! やっと出てこれたァ!! いやーやっぱり光合成って大事だよな!!!」


大の字に寝そべりながら気持ち良さそうに背筋を伸ばす煉華に続くように、洞窟から抜け出してくる仲間たち。


「あ、ホントだやっと外に出れたね...」


最初に声を出したのは陽だった。道中で何度もバテた煉華とは違い、多少の疲れを見せるものの、しっかりと自分の足で立っていた。


「これが外でゴザルかァ、眩しいでゴザルな」


二人目はスケさん、彼の能力、空挺監督(エアボーン)は空を飛べる能力だった。その能力でずっと飛んでいたのであまり疲れた様子はない。


煉華が2回ほどバテた時、彼は煉華を空挺監督(エアボーン)で浮遊させて、地上まで行けばいいのではないかと、提案をしたのだが、陽が見てる前でそんな恥ずかしいことは出来ないと断られていた。ちなみに陽もスケさんの提案は断っている。


「これが地上ですか...」


三人目はアキラであった。煉華と同じ制服のズボンからワイシャツを出している。


自身の体の表面を煉華の着ている服の形にしていた。元がスライムなので色々と融通がきくのである。


「マジで大変だったな...かれこれ十時間ぐらいか...」


「いやいや、一時間ぐらいしか歩いてないから」


辺りには、煉華の寝ている洞窟の前を避けるように木々が生い茂っている。煉華は暫く寝ていたかと思うと、いきなり立ち上がり、スケさんの肩を叩く。


「スケさん、ちょっと空飛んで人が住んでそうな街とか探してくれないか?」


「む? 承知したでゴザル、拙者の初めての活躍の機会でゴザルな、ちょっと待つでゴザル」


スケさんが立ったそのままの姿勢でスーっと上空へと登っていく。


「なんか天に召されてるみたいだね...」


若干シュールな光景を眺めながら陽が呟いた。空中で暫く辺りを見回していたかと思うと、やはりそのままの姿勢で垂直に降りてきた。


「あっちの方向に沢山建物があったでゴザルよ」


そんな訳で、煉華一行は取り敢えずスケさんの指差す方向へと進路を向けるのだった。数十分ほど森の中を歩いた所で煉華の足が止まる。




「あの...まだでしょうか...」


「煉華、あんまり文句言わないの」


「はい...」


ただでさえ体力のない煉華、鬱蒼と生い茂る木々の間を縫うように歩くとゴリゴリと体力が削れていき、現在では最早、陽に情けない姿を見せたくない、というプライドと気力だけで歩いていた。


本人はもう既に情けない姿を見せているという事に気が付いていない訳だが。


足を引き摺りながら煉華が歩き始めると、後方から、


「ギギィ!!」


と、甲高い声が鳴り響いた。


「...煉華?」


前を歩いていた陽が振り返り、煉華を疑うような目で見る。


「ちっ違う違う!! 俺じゃないって!」


慌てて否定する煉華。その後ろからガサッと草を踏みつける音がした。煉華も振り返ると、そこにはくすんだ緑色で身長1m程の小人のような化け物が太い木の棍棒を片手に持ち立っていた。


「ギィギギイイ!!!」


人を不快させる周波数だけを発しているようなその声に思わず陽は耳を塞ぐ。


「れ...煉華...何その、人間...?」


「陽下がってろ、コイツは多分RPG定番のゴブリンだ、アキラ、スケさん、陽を頼む」


陽を二人にに任せ、後ろに行かせると


「レンカ様も下がってください、ここは我が」


煉華とゴブリンの間にアキラが立ち塞がった。


「いや、ここは俺に任せてくれ、アキラにかかれば一瞬だろうが、俺も闘いの経験値が欲しい」


アキラも後ろに下がらせる。恐らく今世紀最大の熱い勝負が今、幕を開けた。



ゴブリンがあらわれた!

コマンド?



「色々な事が起こり過ぎて、異世界に来たら先ずやる事を忘れていたぜ...いでよッ! ステータスオープンッ!!」


しかしなにもおこらない


ドヤ顔で叫んだ煉華の顔がどんどんと赤くなる。


「れ、煉華...何してるの?」


「ギギ...」


「ええええええ!! なんで何も起こらないんだ?! 教科書にはこうすればなんかよく分からないバーが目の前に表示されて自分の強さがわかるはずなのに!!」


一人で喚き散らかす煉華を見てゴブリンも思わずため息をついた。


「なんでお前がため息ついてるんだァァ!!」



ROUND 2



コマンド?



「ギギィ!!」


「危ねッ!!」


ゴブリンがいきなり煉華に飛び掛り真上から棍棒を振り下ろした。それをすんでのところで煉華が横にジャンプし避ける。


「フッ...避けゲーのプロと呼ばれた俺の動体視力は常人のそれを軽く上回っている...」


若干冷や汗を垂らしながら体勢を立て直す煉華。ゴブリンも棍棒を持ち直し、再び対峙する。


ジリジリと二人の距離が縮まる。瞬間、ゴブリンが棍棒を使い、地面を抉るように、土を煉華の顔へと飛ばす。


 「なッ───!!!」


慌てて両腕を顔の前で交差させ、顔面への直撃を避ける煉華。ゴブリンに頭を使うような芸当ができると思っていなかった煉華に隙が生まれる。煉華が両腕を下げた時にはゴブリンはそこにはいなかった。


 「煉華ッ! 上!!」


陽の声につられて上を見上げると、ゴブリンが今にも棍棒を煉華に叩きつけようと振りかぶっている所だった。


(避けるのは間に合わない...ッ!だが今こそあれを試す時...!)


「真剣白刃取りィ!!!」


叫びながら両手を棍棒に合わせて閉じる───!!







ゴッと鈍い音が森中に響き渡った。


「れ、煉華ぁぁぁ!!」


我らが煉華はタイミングを見誤り、棍棒が直撃した瞬間に頭上で両手を合わせるという、マヌケな格好で気絶した。




YOU LOSE!!







「おいおい、なんて事してくれてんの、能力者が最弱のゴブリンに負けちゃったら示しがつかんでしょうが」


(...ここは?)


「ここはお前の精神世界だよ」


(精神世界...? 確か俺はゴブリンにやられて...で、どうなったんだ?)


「どうもなってねぇよ、気絶しただけだ、っていうかお前さ、能力使おうぜ...なんの為に俺が能力を教えてやったと思ってるんだよ」


(あ...完全に忘れてた)


「自分の能力を忘れるってどういう事だよ...まあいい、今はお前に二つ目の能力を教えようと思って呼び出したんだ」


(二つ目...? 二つも能力があったのか、勿体ぶらずに最初から教えといてくれよ)


「一つ目の能力を忘れてた奴に言われたくないセリフだな...今から言うが忘れるなよ? 能力名は『極性制御(ガウス)』、能力は触れたものに引き寄せる力か、反発した力のどちらかを与えることができる能力だ、簡単に言えば、好きなところにS極、N極の属性を付与することができる」


(えっと...それって磁力を操作したりして、相手の血液から喉にハサミとかつくれる能力じゃなくて?)


「そんな強そうな能力じゃないし、さらに言えば作れる極性は一度に一組が限度だ」


 (...)


「上手く使えよ」


ええぇぇえええ!!!! と叫ぼうとした所で煉華の意識は眠るように沈んでいった。







「.........か.........れん....煉華ッ!」


「ええぇぇえええ!!!!」


「うわぁ!! びっくりしたぁ!!」


身体をビクッと震わせる陽。仰向けの状態から煉華は身体を起こす。


「...ここはどこだ...そうか確か俺は───」


意識が覚醒するやいなや陽は煉華に抱きついた。


「良かった...何にもなくてホントに良かった...」


「───なッ!! バカやめろッ! 恥ずかしいだろ!」


慌てて陽を押し返そうとするもいつの間にかガッチリと脇を固められ身動きが全く取れない。


「バカは煉華だよ! もしあのまま死んじゃったら、私はどうすればいいの? もうあんなバカな真似はしないって誓って!」


「ち...誓う、誓うから...この拘束を解いて...」


「え?...あっごめん煉華、全然気が付かなかった、ってそうじゃないよ! 今もうバカな真似はしないって言ったよね! ちゃんと約束は守ってよ!」


「わかったよ...」


本人としてはバカな真似をしたつもりはないので若干悲しい煉華だったが、陽の気迫に押されて渋々頷く。そばに居たスケさんとアキラからも小言を言われた。


「レンカ様、ヒカリ様の仰る通りです、下のものより先に上のものが死ぬなど、あってはなりません、これからの闘いでは、先に我をお使い下さい」


「そうでゴザルよ、レンカ殿が気絶した後、ヒカリ殿を宥めるのがどれだけ大変だったでゴザルか...」


「ちょっ! ちょっとスケさん! やめてよ! 大丈夫だからね煉華? 私は別に泣いてなんかいないからね?!」


「いや別に誰もそんな事言って───」


キッっと陽から睨まれる煉華、慌てて黙る。


「そう言えばさっきのゴブリンはどこかへ逃げていったでゴザルよ」


「申し訳ございません、我が奴の武器を溶かした瞬間に目にも止まらぬ速さで逃げ出しまして...」


「そうなのか...まあ俺以外の皆が何事もなくて良かったよ」


そう言いながら立ち上がろうとするも上手く足に力が入らない。倒れそうになる煉華を慌てて陽が支える。


「まだ寝てないと危ないよ、頭に大きな怪我がある訳じゃないけど、多分軽い脳震盪なんだと思う」


「いや、歩けるって...」


膝をガクガク震わせながら立ち上がり、フラフラとした足取りで歩き始める。五歩ほど歩いた所でパタリとまた地面に倒れた。


「ほら、言わんこっちゃない」


陽が煉華に手を貸そうとする前にスケさんが煉華の肩に手を置く。煉華がつられて顔を向けると、もう片方の手で親指を立てているスケさんがいた。


「え? 何、その笑顔...表情なんかないはずなのにめっちゃウィンクしてるのが分かるんだけど...」







「...」


「これでヒカリ殿の心配事も無くなって、レンカ殿は身体を休めることが出来て、更に拙者らは目的地へと進むことが出来る、まさに一石三鳥でゴザルなぁ!」


活躍の場を貰ったせいか、やけにテンションの高いスケさん。一方煉華は、寝た状態で空中に漂っていた。スケさんの能力の一つ、空挺監督(エアボーン)の効果によるものである。


「これでいいのか俺?! ホントにこれでいいのか?! 異世界系主人公ポジとしてゴブリンなんぞにやられて、その後歩けもしなくなっていいのか?!」


「煉華、訳の分からないこと言ってないでちゃんと安静にしていなさい」


「レンカ様、この様な骸骨の能力などではなく、我にレンカ様のお身体を運ばさせて下さい」


空中に浮かぶ煉華の横でそう懇願したアキラを煉華は苦笑いしながら断る。


「いや、アキラみたいなイケメンが男を運ぶと、どこぞの業界の女性が喜びそうな図になるからそれは嫌だ」


「─ッ!! そうですか...それは残念です...」


沈んだような顔で渋々煉華の後ろへと下がるアキラ、前方を歩くスケさんを睨みつけると、スケさんの身体が震え上がった。


(だっ、誰かが拙者を殺そうと殺気を放っている気がするでゴザル...)


慌てて左右を確認するスケさん、いつ襲って来るか分からない殺気に注意し続ける彼の戦いは目的地に着くまでずっと続いた。




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