顔が好きで、付き合ったけど
オレの彼女は、気が強い。
だからと言って、
オレに対する嫉妬心が強いわけでは、
ない。
彼女と出かけていると、
街行く女性たちを、
警戒する動物のように、
威嚇、
睨む、
時には、
言葉で攻撃する。
「ねえ、もう出よう。なんか、あの女の人、リョウくんのこと見てるから」
ぐいっと、オレの腕を胸に引き寄せ、歩き始める彼女。
え?
オレも、睨まれた30代くらいの女性も、目が点状態だった。
思い込み、激しすぎじゃないか?
と、
口にしたいところだけど。
んなこと言ったら、とばっちりがこちらに来る。
つまらない事で、
ケンカとかは、できればしたくない。
だから、
黙っておくオレ。
「リョウ君、お腹すいたから、ゴハンしよう。パスタ食べたい」
行きたいところや、食べたいものは、
全て彼女が主導権。
べつに、
尻に敷かれてるわけではない。
オレの事、
オレの好きなもの、
考えている事、
気持ち、
そう言うものは、
全く、考えていない。
彼女は、
オレには全く、興味がないんだ。
友達には、オレの事自慢したり、
するけれど。
時に、
他人には、敵対心。
けど、
それって。
“彼氏”と言う、
流行りのバックとか、
ブランド品とか、
自分のステータスとしてしか、
考えてない。
彼女は、
自己中心。
ま、
顔が好みで、付き合ってるオレだから、
仕方ないんだけどさ。
そんな彼女も、
オレの、
「ルックスが好きだから、
付き合っている」
と、
堂々と言い切っている、
潔さ。
そこんところは、おんなじだから、
けどさ。
他人を威嚇してまで、
独占するってところは、
どうなんだ?
その度に、
オレは、
彼女が威嚇した相手に、
素知らぬふり。
まるでオレまで、思い込み激しいヤツだと思われてるか?
違うんだけどな。
だから、
そう言う時は、
その場から、存在を消し去りたい思いだった。
この繰り返しが、
オレの日常。
そろそろ、正直、
窮屈。
「リョウくん! こっち!」
足が止まったオレに、間髪入れず、
声をかける。
オレには、
考える時間すら、
与えられないのか?
軽いノリで付き合ってるだけだから、
先のことなんて、
全く考えないけど。
適当な所で、
身を引こうと思う。
そんな事を、頭の片隅に考え始めていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
お話は、短編ですがこの後1話とループします。
ご興味ある方、次作もどうぞよろしくお願いします。