あーくんのおくりもの
今日は、あーくんの三歳の誕生日。
でも、あーくんは、そわそわした様子で窓の外を見つめています。
「あーくん。もう眠い時間だろう。ケーキ食べよう」
そう言ったのは、おじいちゃんです。
あーくんは振り向くと、首を振りました。
「まだ、いいの」
そう言って、あーくんはまた窓の外を見つめます。
「ごはんにしましょ。パパとママ、今日は遅くなっちゃうのよ。あーくんがおなか空かせたまま寝ちゃったら、パパとママは悲しむわ」
そう言ったのは、おばあちゃんです。
今日はあーくんの誕生日ですが、パパとママは遠くの街へ行っていて、今日遅くに帰るというのです。
「間に合わないの……?」
寂しそうなあーくんの顔を見て、おじいちゃんとおばあちゃんはあーくんの頭を撫でる。
「パパもママも、明日起きたら帰っているよ。ごはんは先に食べてしまおう」
そう言われると、あーくんのおなかがグーと鳴りました。
「ほら。あーくんのおなかも、ごはん食べたがってるわよ」
「うん……」
「ろうそくに火をつけなくちゃ」
おばあちゃんはそう言うと、ケーキに三本のろうそくを立てて火をつけました。
「よし、じゃあ部屋の明かりを消さなきゃな」
おじいちゃんはそう言うと、部屋の明かりを消しました。
ろうそくの明かりだけが、あたたかく部屋を灯します。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ――!
大きな息をはいて、あーくんがろうそくの火を消しました。
「あーくん。三歳のお誕生日おめでとう」
拍手ともに、おじいちゃんとおばあちゃんがそう言ってくれて、あーくんも嬉しそうに微笑みます。
「電気をつけなきゃな」
おじいちゃんが部屋の明かりをつけると、あーくんの目にパパとママの姿が映りました。
「ママ! パパ!」
驚きとともにすぐに笑顔になって、あーくんはパパとママに駆け寄りました。
「ごめんね、あーくん。待たせちゃったね……」
「これでも急いで帰ってきたんだよ。間に合ってよかった」
パパとママが口々にそう言うと、あーくんは首を振ります。
するとその時、あーくんの目には、パパとママの横に置かれていたバスケットが目に入りました。
「赤ちゃん!」
嬉しそうに駆け寄るあーくんに、ママがバスケットから赤ちゃんを出して見せてくれました。
「みーちゃん。あーくんの妹よ。優しくしてあげてね」
「うん! ぼくが守るよ」
「頼もしいお兄ちゃんね」
小さな小さな生まれたての生命。
あーくんの家にやってきた、素敵な素敵なおくりものだ。