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俺は日記帳を拾った

【相談】妹の友達に監禁されています。


 お願いです、助けてください。

 僕は今、妹の友達に監禁されています。


 この日記帳を拾った方にお願いです。

 ここに書かれている内容を、どこか人目のつく場所に公開してほしいんです。ブログでも、小説投稿サイトでも、動画収益のネタにしていただいてもいいです。

 この件を警察に持ち込んでも、取り合ってもらえない可能性が高いです。それに、拾っていただいた貴方にもご迷惑がかかることになるので……どうか、匿名性の高い手段でこの内容を広めてください。


 フィクションだと思われても仕方ないと思います。むしろ、分かる人にだけ分かるようにしていただければ嬉しいです。


 もう監禁されて1年以上が経過します。家族はきっと僕のことを探しているはずです。その手がかりになるよう、どうかご協力をお願いします。本当に、お願いします。


 平成31年10月30日

 M男(仮名)




 *    *    *    *




 その日記帳を拾ったのは、たまたまだった。


 爽やかな秋晴れの昼下り。

 小説家を目指している俺は、何か執筆のネタになるものはないかと川沿いを散歩していた。というより、完全にスランプに陥っていたので、川を見て現実逃避していたと言うのが正しい。


 まさかミケ猫、と言えば知っている人もいるだろうか。


 自分で言うのもなんだが、知る人ぞ知るアマチュアの名作家だ。おそらく今ごろは、出版社の社員も「どのタイミングで書籍化の打診をしようか」と手をこまねいている頃だろう。


「だがしかし、新作の構想が浮かばない……」


 編集者から「ミケ猫大先生、何か新しい作品書いてくれませんか?」と言われたときに「あぁ、いいのがあるぜ」とクールに答えるのが俺の理想なのだ。だがこのままでは、情けない結果だけを無様に晒してしまうだろう。


「くっ……百万人の読者が俺の作品を待っているというのに……」


 俺が頭を抱えていた、その時であった。


 川岸に落ちている透明のビニール袋。

 その中に、何やら古びた日記帳のようなものが入っているのを見つけたのだ。


「日記帳だと……? これはいいネタになりそ――ゴホンゴホン、これは事件の香りがするな」


 気分転換に吸っていたエア煙草を投げ捨てる。

 ビニール袋から実際に漂うのは事件の香りというより泥臭さだったのだが、俺はネタのため、そして自分の中の妙な胸騒ぎを鎮めるために、その日記帳に手を伸ばしたのだった。




――さて、ここからは真面目な話だ。


 この日記を書いた彼は今、監禁されている。

 以降の話を読んで心当たりがあると思った読者は、可能な範囲でご家族へ連絡をとり、彼の救出に協力してほしい。


 この投稿では、あくまで小説という体で、彼の意思に従って個人情報を特定できないような書き方に終始しようと思う。

 どうやら彼自身、助けては欲しいものの、妹の友達を犯罪者にはしたくないようなのだ。そのあたりは日記内で詳しく語られている。


 個人名についても、下記のように置き換えて記載するつもりだ。


 (例)

  彼 → M男

  妹の友達 → K子


 イニシャルでの記載にはなるが、伝わる人にはおそらく伝わるだろう。


 心当たりのない方は、この日記を単純にフィクションとして楽しんでいただいて構わない。それもまた、監禁されている彼がこの世界に生きる「証」となるはずだ。



 彼の日記は、平成30年の3月から始まっている。


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