2,カゲカゲ
頑張るぞー、おー!
「…………………………」
「…………………………」
「……………………か…?」
うん?
誰かの声がする…
「本…に……………し………………よ」
聞き覚えのある様な…
「………君、そ……ろ……て」
何故だか目を開けてはいけない様な…
「狗我葉君、起きてください」
はっきりと聞こえた声に反応して僕は目を開け一言
「知らない天井だ」
「そりゃ知らない天井ですよ」
「一度行って見たかったので、つい」
「うん、冗談が言えるなら大丈夫そうですね」
目が覚めたら目の前にあの顔がありそうで、目を開けるのが嫌だったのだが、そうか今はこの顔か…
「矢井野さんが君に着いたって言った瞬間に本人が倒れたって連れて来たもんだから慌てましたよ」
倒れた?
ああ、夢で見た時より実際に見た顔が怖すぎて気が遠くなったんだっけ
そういえば夢でこんな部屋があったのも見たっけ…って
「あの、ここはどこであなたはどなたなんですか?
僕は確か、えっとSSUだったかの訓練兵団の基地に矢井野さん?と向かっていたはずなんですけど…」
僕は現実で初めてみる、別の姿に変わった矢井野さんにきく
「はい、ここはその基地の手当室ですよ」
と本当に綺麗な白衣の似合う女医の格好に変わった矢井野さんが答えて、続けて自己紹介をした
「私は刈染亜里香です
ここで、医者の真似事をやってます」
「いや、医者の真似事ってそこら辺にいる医者より凄腕だろ?君は」
存在感が無く、いきなりでてきた様な男の声がその自己紹介にツッコミを入れた
「_____⁉︎びっくりした...
どなたですか?」
夢で知ってなかったら気づかなかったな…
「いや驚かせて悪いね俺は本名は伏せたいので通称で失礼、這い寄る影って界隈では呼ばれてる
親しみを込めてカゲカゲって、呼んでくれてもいいんだぜ?」
と本名、虹野煌彩はフレンドリーな言い方だが一切こちらを信用していない様子で言った
_______________
僕には他の人とは違うところが1つだけある
それは夢を見るとき、それが全て《半明晰夢》になること
《半明晰夢》なんて言い方をするのは夢の中で自由には動けるのだが現実と同じ様にしか動けず、夢の内容も自分で決められないからだ
小さい頃は現実との区別がつかなくて、大変だったのを覚えている
現実との区別がつき難かった理由にその《半明晰夢》が予知夢の様になることがあったからだ
夢の内容と同じ場面があった時に夢の中と同じことをすればそっくりそのまま夢と同じ内容が現実でも起こる
(現実で夢と違うことをすればもちろん、夢の内容とは違うことが起こる)
現実での選択肢の1つを先に夢で体験できるわけだ
ランダムで起こるセーブとロードみたいに思って僕は生活している
_______________
「じゃあ坊主も起きたし、俺は行くからな」
とカゲカゲは気配薄く、どこかに行ってしまった
「なんで隠すのかはわからんが、俺に気づいていたのはわかってるからな」
と僕の耳元に言葉を残して
「さあ、寝ていたあなたはここでのルールを聞いていないだろうし、私が説明するわね」