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ガラスノカケラ  作者: せんのあすむ
13/18

ガラスノカケラ 「プロローグ」

「帰れ! お前ら、帰れ! 二度と来るな!」

入院していた彼が叫んだ。

 …足元が、音を立てて崩れていくような気がした。頭の中が一瞬にして真っ白になって、私はそのまま、振り向きもしないで、一緒に来てくれていた二人の友達のことも忘れて、その病室からエレベーターへ向かって走っていった。

 私の背中で、病室の扉が乱暴な音を立てて閉まる。そして、

「何、アイツっ!」

私を追いかけてきてくれた友達の一人が、憤慨して叫ぶ。

「せっかく見舞いに来てやったのに、帰れって、何っ! だからあんなヤツ、コーコには勿体無いって言ったじゃんっ!」

「…ごめんね、もーちゃん」

エレベーター、どうやって降りたんだろう。気が付けば病院の入口で、泣きそうになるのを必死に堪えながら、私はその友達に謝った。

「…コーコちゃん」

病院から出て、一番近い駅へ戻りながら…雨が降ってきたけれど、私達は濡れたまま…もう一人の友達が、そっと私の肩に手を置いて、

「でも私は、中畑君の気持ちも分かるよ。いきなり女の子が尋ねていったら、恥ずかしいかも」

「こらミーコ! 何言ってんのっ! とにかく、あんなヤツ、退院してきてもシカトしてやんな、ね、コーコッ!」

「…あはは」

私は、キノコ頭をしたこの友人へ力なく笑った。あの言葉を投げつけられた私本人よりも、勝気そうなもーちゃんのほうがよっぽど腹を立ててるって…ちょっと分からない。

 各駅停車しか止まらない、小さな小さな駅。来る時のドキドキ感とは裏腹に、

(…帰りたくないな、家に)

人がいるから、泣きも出来ない。

お父さんやお母さんにも黙って出てきた『校区外』。来た電車は空いていた。

今の天気と同じくらい、情けない気持ちで家へ向かいながら、

「忘れな。あんなヤツ、コーコにはホント、勿体無い」

「…うん」

「コーコちゃんには、もっともっと、コーコちゃんと同じくらい頭が良くて優しい人、出てくるよ、ね?」

「うん…ありがとう」

私を挟んで両隣の席に座った二人へ、私は呆然としたまま、ただ頷いていた。




…TO BE CONTINUED…


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