第60噺 かくて真実は混ざりあい、踊りを始める。
悪魔と堕天使の子同盟から、大馬鹿者魔法使いへ!
ーダンス!何勝手に生け贄になろうとしてるのよ!
銃で撃たれ傷ついた貴方を介抱したのは、この私なのよ!私の前で死ぬなんて許さないわ!
〜そうだぞダンス!お主はどんな理由で生まれようがどんな気持ちで今を望んでるか知らん!
だが何も言わず恐ろしい事をしようとするな!見よ、リンベルは生きている!
死んでなどいない!命を持って、お主を助けようと走り出した!
後はお主を救出し、ここから脱出するだけだ!それまで死ぬな!いや死んでも気合いで生き返れ!
ー急ぎましょう魔王!ダンスはきっと何処かにいるわ!
〜そうだなリンベル!先ずは味方を揃えなければ・・・え?
〜デビルズ・ヘイヴン・廊下〜
大急ぎで走っていた魔王とリンベルはぴたっと足を止める。
先に口に開いたのはリンベルだ。
「え?ダンス助けにいきましょうよ」
「何を言う!ダンスは今、国中の観衆のど真ん中にいるのだぞ!?
二人だけで助けにいくには無謀すぎる!
先ずは味方を集めなければ!」
「そんな時間無いわよ!いつダンスが殺されるか分からないのにそんな事出来ないでしょ!」
「だが我等までやられれば意味が無い!
多少時間がかかっても成功率を上げるには仲間が必要なのだ!」
「その間にダンスが殺されたらそれこそ台無しよ!こうやって話してる時間だって惜しいのに!
大体仲間なんて何処に・・・」
「侵入者だー!!捕らえろー!!」
不意に、悪魔兵達の声が聞こえてくる。
魔王とリンベルは急いで物影に隠れ、辺りを伺う。
「ば、バレた!?」
「いや、それなら『侵入者』と呼ぶのはおかしい!まさか、誰か我等の他にもいるのか!?」
「ぎゃーっ!こいつ、廊下に侵入してきたぞー!急げ、急いで槍で突き刺すんだ!!」
ブロオオオ!!
声は大きくなり、同時に何かが呻くような音が聞こえてくる。
そして悪魔兵の声は途切れ、呻くような音が大きくなる。
ブロオオオオオオオ!!!
「な、何の声だ?
竜が上げる雄叫びにしては些か不気味だが・・・」
「待って!
私、この声・・・っていうか音、聞いたことある」
「何?」
ブロオオオオオオオ!!
ギャキキキキーーっ!!
けたたましい音と共に、それは二人の前で停止する。
それを見た魔王は目を丸くして驚き、
それを見たリンベルは涙を流して喜んだ。
「貴方は・・・最高の援軍が来たわ!!」
〜デビルズ・ヘイヴン・祭壇〜
全国民がピラミッドが見上げ、その頂点で湯浴みを終えたダンスがいつもの紫色のローブに着替え、祭壇に横になっていた。
祭司ミールバイトはじっとダンスを見つめる。しばらくダンスを見つめた後、全国民の方に宣言する。
「これから魔神様召喚の儀式を始める!!」
「ウオオオオオオオオ!!」
「まーじーん!まーじーん!まーじーん!まーじーん!」
「ベル様ばんざーい!魔神様ばんざーい!デビルズ・ヘイヴンばんざーい!」
「儀式の手順を説明するぞ!
先ずはダンスに服従の呪いをかける!
これはダンスの魂に『我々の物』である契約をする事で、魔神を服従しやすくする為である!
次にピラミッドに設置された召喚魔法陣で魔神を召喚する!
だがこの状態では魔神は魂が無く、ただの肉の塊に過ぎない!!
次にダンスの魂を取りだし、魔神に食べさせる!これで魔神の中にダンスの魂が入り、魔神は我々の物となる!
そして最後に、ベル様がスイッチを押すで核爆弾を起動し、デビルズ・ヘイヴンを滅ぼす!
これで儀式は完了だ!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「まーじーん!まーじーん!まーじーん!まーじーん!まーじーん!」
「ベール様!ベール様!ベール様!
ベール様!ベール様!ベール様!」
「デビルズ・ヘイヴンばんざーい!魔神様ばんざーい!」
全国民が叫ぶ中、ダンスはこそっとミールバイトに訊ねる。
「ま、待て・・・最後のはどういう事だ?」
「何だ?」
「お、お前達が自殺する腹だってのは知ってる・・・だけど、なんだ、核爆弾って?」
「ああ、ベル様が教えてくれたんだ、未来の奴等が自殺するなら核爆弾を使えって、こいつは擬似太陽を造れる爆弾らしいからな、俺達は跡形もなく吹き飛ぶだろう」
「太陽を造り出す、だと!?
半永久エネルギーを確立する手段が未来にはあるのか!?
そ、そんな物が未来には出来るって言うのか!?」
「そうだ、未来では太陽を造る事だって出来る。その力を応用したのが核爆弾らしい」
「太陽を造るなんて・・・俺を作る技術といい、未来の奴等は幾つ神が作った禁忌を破れば気がすむんだ・・・?」
「ちなみに、核爆弾は二つある。1つはボタンで爆発する奴。もう1つは時間で爆発する奴だ。
きっと派手に爆発してくれるんだろうな、今から楽しみだ」
ミールバイトはけらけらと笑いながら自殺する瞬間を楽しそうに期待し、
ダンスは太陽を簡単に造れる未来に恐怖した。
「それに、核爆発でも魔神は倒れないから安心しな。
さて、ここから本題だ。
魔神様は俺達が自殺した後、どうなると思う?」
ダンスは首を横にふり、分からないと言った。
ミールバイトは笑みを浮かべる。
「神は本来、信仰する人、聖地、魔術師の魂の3つがあって初めて成り立つ存在。
だが何かが欠ければ、神は本能的にそれを埋めようてする。
核爆発でも魔神は消えないが、聖地と信仰する人をいっぺんに失えば、神は自らの存在意義が無くなってしまい・・・」
「消えるのか?」
「まさか、その逆さ。
神は我等の恨み憎しみ悲しみを残さず吸い上げ、全てを吐き出そうと暴れまわる。
そして更に恨みをつくり憎しみを買い悲しみを頂くのだよ。
それはそれは素晴らしい化物に仕上がってくれるだろうな。
しかもその化物は聖地と信仰する人が居ない為に永久に退治される事もない。
君の魂にかけた『服従の呪い』のせいで誰かの話を聞く事もない。
永久に戻る事も出来ない。
絶対無敵永遠無敗の化物の完成、だ」
ミールバイトは笑みを浮かべる。
その笑みは、彼が悪魔である事をさしひいても狂気的だと分かるだろう。
「かくてこの世は無情に呆気なく地獄に変わるのだ!
素晴らしいだろう!我等は皆誰かの思惑から生まれた怪物だ!
俺も!この国にいる者全員、何処かの神話から生まれ永遠に『役者』である事を強制され続けていた!
今、今、本物だと威張り散らしている神話や人間やこの世界に復讐し、俺達の魂は自由と歓喜を謳うのだ!
我等こそ御伽噺から抜け出した真の自由な存在だ!我等こそ!
御伽噺から抜け出した真の勝者なのだ!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「自由!自由だああ!この御伽噺だらけの世界をぶち壊せ、魔神!!」
「世界は私達を祝福してくれる!
ハッピーエンドは直ぐそこにある!」
「早く!早く儀式を始めてくれ!
そして我等に自由を!」
「みんな!最高の自殺をしようぜ!全世界を巻き込んで、みんなみんな殺すんだ!
地獄も練獄も改装工事も満杯だ!」
「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
観客達が次々に叫び、歓喜の声をあげる。
ダンスは黙ってそれを聞き届けるしか出来なかった。
そんなダンスにミールバイトは問いかける。
「さて、ダンスよ、何か気付く事は無いかな?」
「ん、気付く事って・・・あれ、体が動かない?」
ダンスが幾ら体を動かそうとしても体が動かないのだ。
まるで体が言うことをきかない・・・そこまで考えた所で、ダンスは気付き悪魔は笑う。
「くく、気付いたか。
あの湯浴みの水には服従の呪いがかけられていたのだ。
術の力が弱すぎてお前にも気付かれなかかっだだろうが、もう遅い」
「ぐ・・・!」
「さあ、次は魔神を召喚するだけだ!詠唱を開始す」
パアアアアァァァ!!パァァ!パアアアアァァ!!
ミールバイトの台詞をけたたましい音が遮る。
音の方を見ると、ピラミッドの麓、数百の国民の遥か向こうから、彼が今まで見た事が無い物が高速で向かって来ていた。
ダンスも必至に首を動かして、それを見て目を丸くする。
「何だ・・・?」
「あれは・・・車!?」
パアアアアァァ!!パアアアアァァ!!
パアアバン!
それは、ボロボロの自動車だった。
そこら中がでこぼこに凹み更に穴だらけで、しかも後部座席とトランクの扉は無くなっている。排気マフラーから出る煙は黒く、今にも爆発しそうだ。
だが、ダンスが驚いたのは車の状態ではなく、そんな危険な車に乗って尚もこちらに向かってくる、
もう死んだと思い込んでいた、大切な人を見てしまったからだ。
「リン・・・ベル・・・?」
〜車内〜
「ヴググググググ!!
揺れる、揺れるぞリンベル!もっと安全運転を心掛けてくれ!」
「は、ははははは魔王ともあろうものがこれぐらいの揺れで(ガックン)・・・まだ、まだ大丈夫!」
車内ではリンベルと魔王が車に乗って〜正確にはしがみついて〜いた。
C・トベル・・・失礼、シートベルトが無ければ今頃頭をあちこちにぶつけていただろう。
車から機械音が聞こえてくる。
「スイマセン、シャタイだめーじ60%、速度、40%テイカ、コレデハイッキニハシレマセン、モウシワケアリマセン」
「ううん、そんな事ない!貴方が生きてただけで凄い嬉しいわよ!
それに謝るのはこっちの方!城を出るためにボロボロにさせて・・・今もまた貴方を傷つけるなんて!本当にごめん!」
「・・・マダ、だんす・べるがーどノモトヘタドリツクマデ、コワレル、ワケニハ、イキマセン」
「・・・悪魔の我が言うのも何だが、喋るクルマってあるのだな・・・」
魔王がボソッと呟くが、二人には聞こえていない。
リンベルはまっすぐピラミッドの頂点で横たわっているダンスを睨み付ける。
「遂に見える所まで来た・・・!
行くわよクルマ!残された力全部使って、突っ切れーー!!」
続くか?続かないか?
ボロボロになったクルマだけが、それを知っている・・・。




