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歩き続ける者達  作者: C・トベルト
第1章 ノンビーリ村のピリオ君
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第6話 ダンク登場


「ああ、十年ぶりに水を飲めたよ」


その声に、ローブの男もピリオも思わず声の方に目線を向ける。

水をかけられた男は虚ろな笑みを浮かべ、そしてまるで空気の抜けた風船のように顔が凹んでしまった。


思わずピリオは驚愕の声を上げるが変化はそこで止まらない。

男の体が顔同様に凹んでいき、体が段々白く変色していく。それはまるで包帯のようであった。

包帯は何かを掴むように空間を蠢いていく。

ローブの男は危険を察し後ずさる。その足元を包帯に姿を変えた足が床を嘗めていく。

ピリオは半狂乱になって叫んだ。


「な、何が起きてるんだよ!?

こいつは一体…何なんだよ!?」

【不味いな…怪物が目を覚ます】


怯えるピリオの前で、もはや全身が包帯に変化した男が起き上がる。顔には目も口もなく、その部分に僅かな隙間ができていた。その目の部分の隙間がピリオの方に向けられ、口の部分の隙間が動き出し、まるで普通の青年のような声が聞こえてくる。


「やっと動けるようになったぜ、ありがとよ少年」


ピリオは何もいえず、とにかく頭をブンブンと縦に降った。

ミイラは次に、ローブの男へ目を向ける。

ローブの男は杖をミイラにとっくに向けているが、その手は震えている。


【く、怪物め、遂に見つけたぞ!】

「おーおー、 たかが人間の分際で俺を殺す気か。

畜生にも劣る馬鹿がまだいるとは思わなかった」


ミイラはトントントン、と足で三度床を叩く。

すると突然桃色に光る魔方陣が現れる。

ミイラは包帯で出来た顔でニヤリと笑った。


「なら、畜生の中で生きれば少しは賢くなる、か。

桃色召喚魔法、『ピンクレギオン』」


魔法陣が輝き、突然豚が現れる。

一瞬、誰もが目を疑った。しかしそれはローブの男にとって致命的なミスであった。

何故なら、その後に現れた豚の群れに対処する時間を無くしてしまったからだ。ローブの男は声帯から声を出して驚く。


「何だこいつはっ!?

豚の群れ!?」

「正解。豚達よ、ここから一番近い海まで走れ」

『ぶー(明日に向かって走るぜえええ)』

『ぶー(青春まっしぐらだあああ)』

『ぶー(俺達の戦いは、これからだ!)』


豚達が喚きながらローブの男に向かって走っていく。

ローブの男は逃げ出そうとするが、何故か磁石のように豚の背中にくっついてしまう。


「うわ、何だ離れない!?

おのれ、ダンクめ…覚えてろ!!」


ローブの男を背中に乗せた豚の大群はそのまま宿屋の玄関から外へ走り出していった。


ローブの男が入り、男がミイラに変身し、ローブの男が豚達に連れていかれる。

十分にも満たない間に幾つもの出来事が起きて、ピリオはただただ目を丸くするしかできなかった。

そんなピリオにミイラは顔を向ける。


「悪いな少年、トンだ迷惑をかけてしまってよ。

すぐこの場を去るから…」

「あ、あの…あなたは一体…?」


ミイラは包帯で出来た顔でフッと笑った。


「世界一お馬鹿な魔法使い、ダンクだ。

さっきは助けてくれてありがとな、少年」


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