第25話 木の枝からこんにちは
ピリオが洞窟の中へ足を踏み入れた頃、ダンクは何をしていたかというと……枝に絡まっていた。
「うぅ、まさか風が止んで降りれると思ったら木の枝に刺さるなんて……頭空っぽじゃなけりゃ酷い目にあってたから、まだ良いほうか」
ダンクは現在、人型ではなく包帯の姿で枝に絡まれていた。
何とか出ようと抵抗したら更に絡まり、今では枝に絡まった白い布切れ状態になっている。
「さて、どうしようか?
手も足も使えないし、魔術も木から流れる微量な魔力が邪魔して使えないし……ん?」
ぶつぶつと呟きながら対策を考えていると、何かが松明を持って近付いてくるのが見えた。
(人か?
助かった……と言いたいけど、この状態で話しかけても絶対逃げるよなぁ…)
先程『見えた』と表現したがダンクに目はない。
ただ、自身にかけた『視界情報伝達結界』の内側に入ったからダンクの魂内に情報が伝わったのだ。
そして肝心の情報は松明を持って近付いてくる…というよりは何かから一生懸命逃げているようだ。
「何だ?
何から逃げて…?」
ヴォオオオオオオオ!!!
ビリビリと大木が震える程の大声が森に響く。
それが何かが逃げる理由だと気付いたとき、それも悲鳴を上げ、ダンクが引っ掛かる大木の真下を通る。
…白い魔導服を着た女の子だ。
松明ではなく魔術で杖に灯りを点して森の中を走り抜けている。
「キャアアアア!」
そしてその少し後ろを、3メール(こちらの世界では3メートル)の巨大な熊が四つ足で走り抜ける。
「な、何だあのデカ熊!?」
ダンクが思わず叫んだのと大熊が大木に突撃したのは同時だった。 その一撃で大木がへし折られ、大木はあっさり横に倒れる。
その直ぐ前にはへたりと座り込んだ女の子が震えながら熊を見つめていた。
「あ、あわわ…」
熊は少女が逃げる意志を失ったと理解したのか、ゆっくりと歩いていく。
少女は震え思わず呟く。
「だ……誰か、助けて……」
女の子は死を覚悟した…その時。
目の前が白い光に包まれる。
女の子は思わず目を瞑った。
それとほぼ同時に、男性の声が女の子の耳に入る。
「失せな、熊公。
てめえじゃ俺には勝てねえよ」
(え?
今の声は一体…?)
女の子は恐る恐る目を開ける。
そこに熊の姿は無く、代わりに紫色のオーブを着た顔面包帯の男性が立っていた。
…いや、顔だけではなく手足も包帯で覆っている。まるで肌の代わりに包帯を使用しているような奇妙感を感じた。
そして同時に命が助かったという安堵感が自身の体に満ちていく。
「…逃げてくれた、か。
嬢ちゃん、もう大丈夫だ」
「あ……あ、な、た…は?」
「俺か?俺の名はダーーーー」
しかし、そこで安堵に満たされた少女の意識は途切れた。
だから、これから起きるダンクの物語に気付かなかった。




