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下駄箱に〇〇!?

 「おぉ……」

 なんというか、感嘆の声しか上がらない。女子中等部や女子大学もあるからか、本当に女子しかいないのだ。完璧な女の園だ。

 巴月に教えてもらって、深月の下駄箱を見つける。自分の高校が一足制で、上履きなんて久々なせいかちょっとだけテンションが上がる。女子高だけど、下駄箱にラブレターとかベタな展開があってもいいよな。っていうか深月ってまんまお姉さまって感じだし、知らないだけで告られてんじゃね……!?

 妄想を膨らませつつ、下駄箱の蓋を開ける。中には白い上履きと白い封筒。……封筒!?

 (手紙……!?)

 まさかの展開だ。待て待て、もし放課後にどこそこで待ってますとかあったらどうする!?っていうかこんなベタな手を使ってくる子とか付き合いたすぎるんだけど!あっでも今俺深月じゃん!ガチの百合じゃん!楽しいな!?

 ―――考えていたことは、封筒を持った時点で強制的に終了させられた。

 「っつ……!?」

 指に走った鋭い痛みに、手に取ろうとした封筒を取り落とす。

 ぱさ、という音を立てて落ちた封筒は、よくみると封をした部分に刃が付いていた。

 (……なるほどな)

 相手は、本気でこっちを嫌っているらしい。

 滲んできた血を舐める。花園に浮かれていた頭に水をぶっかけられた気分だ。ここがアウェイだって思い出させてくれた奴は返り討ちにしてやらねえと。

 反対側で上履きに履き替えたらしい巴月が、俺の足もとに落ちた封筒に気付いて「大丈夫!?」と言いながら駆けてきた。

 これをしかけたやつが見ている可能性も考えて、深月がしそうな「ちょっと痛いけど大丈夫」って感じの返事をしておく。

 巴月は本気で心配して、慌てて絆創膏を貼ってくれた。

 刃には触らないようにして封筒を拾い、中身を透かす。中には何も入っていなかった。速攻で捨てて、味方がほぼいない教室を目指す。

 静かに開けても絶対音がする教室の扉を開けて入った瞬間、嫌な感じに教室内が静まった。

 そして始まる陰口。潜める気があるのかわからない声で馬鹿にして嘲笑するグループや、全く気にしてませんって感じで無視するグループ。それと、いじめには加担しているつもりがない傍観者のグループ。

 俯いたままそっと観察しながら、巴月のあとを付いていく。

 窓際の1番後ろの席に座った子が、心配そうにこっちを見ていた。深月の友達だと言っていた子だ。写真で見た通り大人しそうな子で、友人がいじめられてても何もできなさそうなタイプ。名前は、一ノ瀬……。

 「み、深月ちゃん、巴月ちゃん、おはよ……深月ちゃん、久しぶりだね……」

 「伊紀いのりちゃん、おはよー」

 そうだ、伊紀だ。

 巴月のナイスアシストに感謝しつつ(多分本人は気付いていない)、「伊紀ちゃん、おはよう。やっと風邪が治ったの」と返す。

 席は伊紀の隣だった。

 深月の話では伊紀はとても口が堅いそうなので、どうにか俺が深月でないことを教え、協力を願いたいところだが……。

 果たしてこんなことを言って信じてもらえるだろうか。俺が元に戻る瞬間を見せれば、さすがに信じてくれるだろうか。しかし、戻ったところを他の奴に見られてはいけない上、戻ったら多分制服がやばい。

 キーンコーン……。

 「あっじゃあ私教室戻るねー!」

 始業5分前のチャイムが鳴り、巴月が慌てて駆け出していく。

 と、1人の女子が俺の目の前に立った。

 「おはよう、千歳ちとせさん。久しぶりね。もう風邪はいいのかしら?……あら、その指どうしたの?紙で切っちゃったのかしら」

 「……おはよう、長谷織さん。なんでもないの、気にしないで」

 いじめの主犯の、長谷織 叶恵かなえだった。そうそうお目にかかれないような美人だが、態度や口調に嘲りが混じっていて不快な気持ちの方が勝つ。こっちが座ってるということを抜きにしても、やたらと見下したような目付きだ。っていうか言い草からして封筒を仕掛けたのはこいつらしい。

 「そうだ、1時間目は数Ⅱでしょう?私、教科書忘れてきちゃったの。貸してくれない?」

 「……でも、私が見れないし……」

 「お隣の一ノ瀬さんに見せてもらえばいいじゃない。ほら、早く貸して」

 え、なにこいつ。あまりに舐めくさった言い様にびっくりしすぎて、思わず素直に渡してしまう。

 長谷織は、ふんと鼻を鳴らして自席に戻っていった。

 「……ごめん伊紀ちゃん、数Ⅱ始まったら教科書見せてもらっていいかな」

 「う、うん」

 そこで勢いよく教室の前の扉が開く。入ってきたのはなんかやたらとイケメンの若い教師だった。いや俺の方がイケメンだけど。

 「ホームルーム始めるぞー。いないやつ手ぇ挙げろー」

 「せんせー、いないと手はあげれませーん」

 「ナイス突っ込みだ。じゃあ出席確認するからなー」

 ノリが軽い奴だ。深月には担任の名前も聞かされて、ついでになんか色々と熱っぽく語られたが、男に興味なさすぎて一片たりとも覚えていない。まぁ担任は名前忘れてても大丈夫だろう。

 「次ー、千歳ー」

 「はい」

 「あ、お前昼休みに俺の部屋来いよ。次ー、」

 「……え?」

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